ドイツの求人を見渡すと、ほとんどの案件が「ドイツ語必須」となっていることに気がつき、またドイツ就職を諦めることもあるかもしれません。実際のところ、中には少なからず「ドイツ語不問」つまりドイツ語が話せない人でも応募可能な求人が隠れていて、これらは英語さえ話せればポジションを得られるチャンスを秘めています。

ドイツ語が話せない状態で日本人がドイツ就職活動を行う際、どういった求人が応募可能か、またどういった求人で特に日本人としてのアドバンテージが活かせるのかについて一覧をまとめていきます。

📘 本稿の内容
・ドイツで ドイツ語なし で応募できる職種とは?
・それらの職種で必要となる スキルや実績 は何か?

ドイツ語を必要としないドイツ企業

ドイツでの仕事の受け皿の95%を占めるドイツ企業の求人に関してですが、基本的な要件として「ドイツ語」が必須になる会社がほとんどである一方、5%程度「ドイツ語不問」の会社やポジションも存在します。特に、ベルリンやフランクフルトのような大都市では企業のグローバル化も顕著であり、おのずと社内の公用語もドイツ語・英語を使い分けたり、英語のみで行われているケースも存在します。

こうした英語のみで就職可能なドイツ企業での求人を探す場合、以下のような企業が対象となることが多いでしょう。またこれとは逆に、田舎であったり、事業形態が国内市場に依存しているような会社であると、社内の公用語としてドイツ語のみを用いていたり、そもそもドイツマーケットを対象にする以上ドイツ語の話せない人材が不必要であったりします。

🌐 ドイツ語不問の求人が多い企業
🔸 大都市に拠点を持つ企業(ベルリン、ミュンヘンなど)
🔸 比較的新しい会社(スタートアップ、ベンチャーなど)
🔸 IT・テック系企業(エンジニア職やプロジェクト職)
🔸 国際展開している企業(社内言語が英語主体)
ドイツ語必須の求人が多い企業タイプ
🔹 小さな町〜中堅都市に拠点を置く企業
🔹 古くからある伝統的なドイツ企業(家族経営含む)
🔹 製造業・金融・通信などローカル密着型の業種
🔹 ドイツ国内市場を主軸とする企業

また、こうした企業特性に加え、職種によってもドイツ語が必要かどうかの判断がなされます。

🌐 ドイツ語不問の求人が多い職種
✅ IT Developer(開発系エンジニア)
✅ System Engineer(インフラ/ネットワーク)
✅ Recruiter(海外人材向けポジション)
✅ Sales(ドイツ以外の海外市場担当)
✅ Customer Service(多言語サポート・海外顧客対応)
ドイツ語必須の求人が多い職種
🔴 Accountant(会計)
🔴 Production Manager(製造管理)
🔴 Marketing(広告・販促)
🔴 Sales(ドイツ国内市場向け)
🔴 Customer Service(ドイツ国内顧客対応)

こうしたドイツ語不問の求人案件に共通するのは、概して「ドイツ人顧客との直接対応がない」、「海外顧客・市場とのコミュニケーションに重点が置かれる」「社内の公用語に英語が採用されている」といった点です。社内でどれくらいドイツ語が求められるかは会社の規模や産業により異なりますが、上述の通り大企業であれば社内文書も英語化されており、日々のレポートや契約書が英語表記されていて、コミュニケーションに不具合を生じることは少ない傾向にあります。

ただし、こうした案件はあくまでも「ドイツ語不問」の応募資格があるというだけで、日本人が必ずしもこの分野でアドバンテージを活かせるか、仕事が得られるかどうかはまた別問題となってきます。

ドイツにとって貿易相手国世界15位の日本という国は、中国に比べ5分の1程度の貿易額しかなく(Quote: Facts about German foreign trade)、必然、日本語を話せる人材の必要性というものは乏しくなってきます。仮に日本人の「日本語が話せる」というアドバンテージを取り外すと、欧州内で労働許可の下りやすい欧州人や、英語を母国語として話す米英人と比べ、どうしてもドイツ企業が「わざわざ日本人を雇う」必要性が見当たらなくなります。

こうした状況を鑑みるに、日本人にとってドイツ語不問のドイツ企業での就職は応募こそ可能であっても、現実問題でポジションを勝ち取ることができるかは別問題になってきます。

在独日系企業

ドイツ語が話せない日本人の就職可能性が高く、日本人であることのアドバンテージが活かせるのが「在ドイツの日系企業」です。

ドイツに拠点を構える日系企業は、ドイツ語を話せない日本人にとって格好の受け皿となります。実際にCareer Management調べによると、ドイツの日系企業に就職した日本人のうち、ドイツ語がビジネスレベルに達していない、あるいはまったくの初心者であった割合は全体の半数以上に達します。

ドイツ転職者のドイツ語レベル
(ドイツ日系企業への日本人転職者を対象)
C1以上 38% B1〜B2 14% A1〜A2 3% 知識なし 45%
出典: Career Management調べ
(在独日系企業への就職者対象)
レベル 主なできること
C1以上
  • 複雑・抽象的な話題について自然かつ流暢に議論できる
  • 専門的・学術的な文章を正確に理解・要約できる
  • 説得力のあるレポートや詳細な文書を書ける
B1~B2
  • 日常的な話題や業務上のやり取りを安定して行える
  • 自分の意見や計画を比較的詳細に説明できる
  • 新聞・一般的な記事を大まかに読み解ける
A1~A2
  • 簡単な自己紹介や挨拶、買い物・道案内など基礎的会話ができる
  • 短い標識や案内文、簡単な広告などを理解できる
  • 定型的・繰り返しの多い表現を使ってコミュニケーションが取れる

この理由の一つが、ドイツに拠点を構える日系企業の対象が必ずしもドイツマーケットではなく、他の欧州市場(フランス、ロシア、北欧など)でもあり、それらの国の開拓、マーケットリサーチに従事することも多いからです。もう一つの理由として、基本的に日本からドイツに駐在する日本人駐在員はドイツ語を話さず、社内の公用語が英語であることが多く、社内のドイツ人とのコミュニケーションも英語で事足りるケースが挙げられます。

具体的に以下のようなポジションでは、特にドイツ語が必要とされず、英語だけで業務に携わることが多くなります。

💼 営業職(例) 募集要項
📌 業務内容
・新規顧客の開拓と営業活動の実施
・既存顧客との関係構築と維持
・製品やサービスのプレゼンテーションと説明
・営業目標の設定と戦略立案・実行
・営業成績のレポート作成と分析
📋 募集要件
・大学または専門学校を卒業した方
・営業職実務経験がある方歓迎
・英語での業務経験
・運転免許必須
🧾 営業アシスタント(例) 募集要項
📌 業務内容
・受発注管理業務
・見積もり作成業務
・請求書発行及び入金確認業務
・在庫管理業務
・顧客窓口業務全般
📋 募集要件
・大学/専門卒、または社会人経験のある方
・英語必須
・受発注管理システム操作経験
・PCスキル(Word/Excel/PowerPointなど)

ただし、ドイツ語が不問かと言われるとそうではなく、業務では勿論、日常生活でもドイツ語はいたる所で使用されます。そのため、ドイツ語が話せずにドイツ就職した者でも、就職後に語学学校に通ったりオンラインのレッスンを受けてドイツ語の勉強を行う者が少なくありません。

また一緒に働くドイツ人の心情としても、難しいドイツ語をビジネスで活用できるかどうかはともかく、挨拶や、少なくともドイツの文化に適応するような姿勢を見せてほしい、という声も聞かれます。

在独多国籍企業

最後に、在独日系企業と似たような立ち位置で「在独の多国籍企業」というものもドイツ語不問の求人を得られやすい選択肢となります。理由としては、在独日系企業と同様で、社内の公用語が英語であること、欧州域内での仕事が多く、必ずしもドイツ市場だけに注力しているわけではないこと等が挙げられます。

ただし、この「在独多国籍企業」のポジションを日本人が得られるかというのも、ドイツ語不問のドイツ企業と同様「日本人を採用するメリットがあるのか」という問題に帰着します。

例えば中国企業や韓国企業であれば、ドイツ語の話せない日本人とドイツ語の話せない自国人が面接に来た場合、コミュニケーションの容易さから後者を採用するでしょうし、特にドイツ国内における中国人留学生の数は、日本人のそれをはるかに上回っています。参考までに、年間40万人のドイツにおける外国人正規留学生のうちの40,000人が中国人で、6,000人が韓国人、日本人はその20位の表のランク外です。

アメリカ企業やイギリス企業であれば、英語さえ話せれば国籍を問うことは多少減りますが、求められる英語の技量は最低でもC1レベル(TOEIC満点に近いレベル)で、ドイツ市場を見渡すとそれくらいの英語力を身につけた人材というのはゴロゴロいるため、ここで日本人が自身のアドバンテージを活かせるかについては疑問符がつきます。

こうして、ドイツ企業、在独日系企業、在独多国籍企業と三つの「ドイツ語不問」の選択肢を見比べてみると、最終的に日本人として最も活躍できる場は「在独の日系企業」ということになることが多く、企業側もまたそれに対して相応のポジションを用意している場合が多いです。