海外就職のハードルの高さの一つに「語学力の壁」問題が存在します。日本国内の就職・転職は、日本語が話せれば応募できる職種がほとんどですが、例えばここドイツではその逆で、日本語だけできても応募できる職種というものはほとんどありません。

もっとも、
「日本語のみで応募可能」
あるいは「日本語ができると優遇される職種」といったものがドイツの求人の中にはいくつか存在します。

日本語のみで応募可能な求人

結論から言うと、ドイツで日本語のみで応募のできる職種の数は「極めて少ない」と言えるでしょう。接客にしろ、会社勤めにしろ、最低限の英語、またはドイツ語スキルが前提となってきます。

ただし中には、「日本語のみ」での応募が可能な職種や勤務形態も一部存在しています。

日本食レストランのアルバイト

日本語のみでも求人広告を出している職種の代表的なものが「日本食レストラン」です。ドイツ全土には約2000とも言われる日本食レストランが存在しており、基本的には現地人の顧客を相手にしていますが、中には一部の日本食レストランのように日本人を主な顧客にしたお店もあり、その場合日本語重視、英語・ドイツ語は最低限レベルでも応募可能といったものも散見されます。

とはいえ、当然日本語の話せない顧客を担当することもあるため、最低限の英語やドイツ語ができるに越したことはありません。

(C)Flicker_Tim Reckmann

リモートワーク

リモートワークの恩恵によって、人々は国境を越えてのビジネスが容易におこなえるようになりました。中には、ドイツに住みながら日本の企業から案件を受注するIT系フリーランサーなども存在しており、その場合顧客が日本のため、ドイツ語や英語を話す必要はないと言えます。

もっとも、その場合就労ビザの問題が生じることになり、自身の労働形態(法人化なのか、フリーランサーなのか)を明確にしたうえで、リモートワークのおこなえる環境なのか確認が必要です。

日本語を活かせる仕事

ドイツでは「日本語のみ」で応募可能な求人案件はごく少数ですが、「日本語を活かせる」職種となると話は別です。一般的なドイツ企業ではあまりアドバンテージのない「日本語スキル」ですが、特定の条件下ではこれが逆に必須となってきます。

日本語教師

ドイツの日本語学習者は公式な人数(語学学校に通っている人数)で約11,000人、ドイツにおける日本語教師の数は300~400人と言われています(出典:海外の日本語教育の現状2021)。

語学学校で日本語教師として働くには資格など必要ないケースもありますが、一般的には日本語教師としての経験や教員資格などが採用に有利に働きます。また日本語の知識が少ない生徒に教える場合は、英語やドイツ語の資格が必要とされます。

日本への輸出入を多くしている会社

日独間の貿易の歴史は古く、現代でもドイツは日本にとって欧州における主要貿易パートナーの一国です。それぞれ年間約2兆円の輸出を双方におこなっており、日本からドイツは機械類や自動車類、ドイツから日本は機械類や医薬品が主要製品となっています。

日系顧客を多く持つ会社や、日本市場に大々的に輸出している企業などでは、求人の優遇条件の一つに「日本語力」を記載している例が多数見受けられます。また「日本語」に限定せずとも、多国籍企業の中にはドイツ語+英語+アルファの言語を優遇条件に挙げている企業も少なくありません。

他にも、東アジア地域で「中国語」「韓国語」などの求人と一括りにされることが多く、日本語以外のアジア諸語のスキルは大きなプラスになります。

在独日系企業

ドイツにおいて最も「日本語スキル」を活用できる職種は、日系企業と言えるでしょう。在独日系企業とは、日本に本社のある企業がドイツに法人をおいて運営している形態のことで、多くの割合で本社との繋がりが強く、以下のような場面で日本語を必要とします。

在独日系企業における日本語使用の場面

  • 本社(日本側)との折衝やコミュニケーション、プレゼンテーション
  • 日本側への製品の発注や仕様変更の依頼
  • 現地日本人社員と現地マーケットでの折衝
  • 仕様書や日本語製品のローカライズ
  • 日本ブランドの現地へのブランディング

このように、日本語を用いる場面が多い在独日系企業ですが、上記の通り「日本」と「ドイツ」の橋渡しになる役回りが多く、日本語以外に英語(場合によってはドイツ語)が必要となってきます。

ドイツに進出している日系企業の数は約2000社で、イギリスがEUを脱退して以来特に強いプレゼンスを発揮しています。ドイツに移住した日本人や、留学後の日本人なども、自身のアドバンテージを活かすため現地日系企業に就職する例が非常に多く、ドイツにおける優秀な日本人の受け皿として機能しています。

欧州市場におけるダイナミックな業務に貢献できる在独日系企業への挑戦は、選択肢の一つとして考えてみるのもいいかもしれません。