LINE社の調査によると、日本の高校生のなりたい職業ランキング1位は男女ともに「公務員」、コロナや海外の戦争など不安定な情勢を反映し、安心感が求められる形となりました(参照:LINE Research)。
そしてドイツでも同様、中高生のなりたい職業ベスト1位は「警察(公務員)」、2位は「ドイツ連邦軍(公務員)」という結果が出ており、日本と同じくドイツの中高生の安定感への関心の高まりがうかがえます。
今回の記事では、ドイツのシンクタンクであるTrendence Institut社によって実施されたドイツの中高生に人気の高い職業について、詳しく解説していきたいと思います。
ドイツの中高生のなりたい職種ランキングの概要
「ドイツの中高生のなりたい職種ランキング」は「Top-Unternehmen für Schüler」のコンセプトのもと、卒業を控えたドイツ全土の8~13年生(12歳~18歳程度)20000人を対象におこなわれています。
つまりこのアンケートには大学生や社会人を含んでおらず、そのため中高生特有の、身近な人への憧れや企業のブランドイメージによって選択されている側面も強いと言えます。ランキングにおいて、必ずしも応募倍率や給与の高さを反映しているわけではない点に注意が必要です。
同社によれば、ランキングには学生にとって「耳慣れた」企業かどうか、その評判や初任給といった要素が反映されやすいとして、ランキング上位には警察やドイツ連邦軍といった官公庁・公的機関、大手自動車メーカー、その他学生の多用するチェーン店(IKEA、マクドナルド、ドラッグストア)などが名を連ねています。
人気職種トップテン
ドイツの中高生に人気の高い就職先上位トップテンには、官公庁及び大手ドイツメーカーがひしめいています。特にドイツメーカーの中でも、給与・知名度・安定感ともに水準の高い自動車産業の人気は絶大です。
もっとも、ドイツ自動車メーカーの人気の高さは中高生だけでなく学生や社会人を対象としたアンケートでも同様で、ドイツ社会における自動車産業のプレゼンスの高さがうかがえます。
順位 | 名前 | 業界 | 国 |
1位 | 警察 | 官公庁 | ドイツ |
2位 | ドイツ連邦軍 | 官公庁 | ドイツ |
3位 | アディダス | 消費財メーカー | ドイツ |
4位 | BWL | 自動車メーカー | ドイツ |
5位 | ポルシェ | 自動車メーカー | ドイツ |
6位 | テスラ | 自動車メーカー | アメリカ |
7位 | アウディ | 自動車メーカー | ドイツ |
8位 | ダイムラー/ベンツ | 自動車メーカー | ドイツ |
9位 | 税関 | 官公庁 | ドイツ |
10位 | Microsoft | IT | アメリカ |
(「Top-Unternehmen für Schüler」を元に著者作成)
公務員・官公庁
実に23の公務員・官公庁/NGOがトップ100の人気の就職先にランクインしています。
上述の、トップテンにランクインしている警察(1位)、ドイツ連邦軍(2位)、税関(9位)以外では、ドイツ赤十字(Deutsches Rotes Kreuz)やドイツ保険組合(AOK)、チャリティーなどが上位にランクインしています。
公務員・官公庁への就職のメリットは、なんと言っても転職社会のドイツには珍しい「終身雇用」が維持される点にあります。企業と比べ倒産のリスクもなく、生涯年収が安定するため、ローンや保険の条件も良い特徴があります。
自動車メーカー
9社の自動車メーカーがトップ100の人気の就職先にランクインしています。
うち外資系でランクインしているのはテスラとフォードと2社のみで、他は全てドイツの国産自動車メーカーがランキングを独占しています。
世界4位の生産量を誇るドイツの自動車産業は、工業大国ドイツの中心に位置する産業の一つであると言え、それをとりまくかたちで自動車部品メーカー、運用業界、金融業界などによってドイツの経済が成り立っている状況です。理系にとっても文系にとってもドイツ自動車メーカーへの就職は魅力的であり、またドイツの自動車メーカーもトヨタやフォードといった世界の名だたるライバルに人材を奪われないように、あの手この手を使って囲い込みに努めています。
在学中から開始される長期的なインターンシッププロジェクトやタレントマネジメントシステムは、こうした囲い込みシステムの特徴と言えるでしょう。
電子メーカー
7社の電子メーカーがトップ100の人気の就職先に選ばれており、日本から唯一Sonyがランクインしています。
その他、シーメンス、ボッシュ、フィリップスなど我々も家電量販店で目にする会社がやはり上位に目立つ形です。もっとも、こうしたドイツの電子メーカーは最終消費者向けのBtoCセグメントだけでなく、鉄道インフラや発電所といった大型社会インフラも手掛けており、中高生の視点からと社会人の視点からとではまた違った印象があるかもしれません。
自動車メーカー同様、上位のドイツ電子メーカーはサムソンやソニーなどアジア系の電子メーカーとの人材獲得競争に力を入れており、高い給与や魅力的な労働条件での学生の囲い込みに余念がありません。
小売業界
小売業界からは31社が学生のトップ100就職先に選ばれています。
評価が高いのは本屋チェーンのThalia、化粧品チェーンのDouglas、H&MやNew Yorkerのような洋服チェーン、Rossmannやdmのようなドラッグストアチェーン、AldiやEDEKAのようなスーパーマーケットがランキングの上位に顔を出しています。
中高生の目線からは、こうした小売店業界が普段目にするものとして一番身近に映るかもしれません。
このように、ドイツ人の安定志向を反映する形で官公庁やドイツの大手メーカーが人気を博す中高生の就職希望先ランキングですが、社会人の志向やドイツに移住した日本人・外国人従業員の志向というと、また別な結果が返ってくる点に注意しなくてはいけません。
特に、母語がドイツ語ではない日本人現地採用社員にとっては、ドイツの大手メーカーなどよりも現地に進出している日系大手企業のほうが魅力的であるケースも多々あります(参考:ドイツで日本人男性に人気の職種とは?)。
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