ワークライフバランスや職場環境といったコンセプトは、今まで以上に採用活動に影響を与えるようになってきています。企業発信の情報だけでなく、過去の従業員や現職のもたらす「原体験」としてのレビューが注目を浴びており、転職・就職市場でも多くの応募者が参考にする傾向が高まっています。

さて、転職文化の進んでいるドイツの中でもこの傾向は同じで、求職者達はWebサイト等を参照に「自身の転職先」の評判や口コミを先立って調べる文化が定着しつつあります。今回は、そうした転職先の情報を仕入れるのに役立つサイトを5つ紹介します。

Kununu

ドイツにおける就職先レビューサイトの先駆けともいえる存在で、元はオーストリア(ウィーン)に拠点を持つ会社です。2013年に、ドイツハンブルグに拠点を持つ大手SNS系就職サイトのXingに買収されました。そういった経緯もあり、ドイツ語圏における企業の格付けといった点で強いプレゼンスを誇っています。

Kununuの企業レビューは「キャリアと給与」「社風」「職場環境」「多様性」の4つの観点から5点満点で採点されており、企業全体の60%近くが総合スコア「4点以上」、40%近くが「3~4点の間」となっています。1~3点の点数のついた企業数はごく少数と言えるでしょう。

Website: Kununu

Indeed

Indeed内の「企業口コミ」欄も企業のレビュー機能として参照されることが多いと言えるでしょう。Indeedは元々アメリカに拠点を持つ求職ポータルサイトで、日本やドイツを含む世界60ヵ国で運用されている実績を持ちます。2012年に日本のリクルートグループに買収され、子会社となりました。

各国言語で求人を出していることが特徴的で、ドイツにおいても大小多くの企業がIndeedを活用した採用活動をおこなっています。Indeedのレビューの特徴として、大企業になるとレビューの採点が厳しくなる(恐らく、アルバイトや短期雇用者などがレビューに含まれるため)傾向にあります。

Website: Indeed

Glassdoor

GlassdoorもIndeed同様に、元はアメリカにおける求人レビューサイトでしたが、2018年に日本のリクルートに買収され子会社化しました。元従業員による企業レビュー・給与の共有がおこなえるのが特徴で、他社のレビューを見るためにはまず自身の前職、または現職のレビューを載せる必要があります。

Indeedは求人ポータルとしての側面が強いのに対し、Glassdoorはレビューとその信ぴょう性に重きを置いている点が特徴的です。ドイツにおける月間閲覧者は200~300万人と言われており、上述のその他企業口コミサイトと並んで参照度が高いと言えます。Indeedよりも全体的に甘めの採点となっています。

Website: Glassdoor

Comparably

総合評価、ダイバーシティ、CEOの評価、幸福度、チームワーク、など13の指標で企業の組織としての健全度を測るWebサイトです。上記の口コミ系サイトに比べて個々の項目のレビューが見やすく、レイアウトにもこだわっています。一方で、大企業のデータが多く、ドイツの中小企業などのレビューは少ない傾向にあります。

Website: Comparably

Stepstone

独自の給与レポートやAIを用いた採用の最適化など、独自の路線で発展を遂げているドイツの大手求職ポータルStepstone社も、自社の求人サイトの中に「レビュー」機能を設けています。場所、社風、キャリアなど6つの軸で企業を評価しており、他のレビュー会社と同様5点満点です。

Website: Stepstone

会社レビューはどこまであてになるのか?

上述のような会社のレビューサイトは就職・転職時にある程度の参考指標となるのですが、そこの情報だけを鵜呑みにするには注意が必要です。

まず、従業員の評価は「部署」や「役職」などによって大きな影響を受ける点を意識しなくてはいけません。

例えば、一般的に社内の「製造」「研究」といった、社員にとっては転職先が探しづらく、会社にとっては代替を探しづらい部署の人材は、お互いのニーズがマッチしているので勤続年数が長く、給与が高くなりやすい傾向にあります。

逆に、営業や営業アシスタントなど、比較的多くの会社でつぶしがききやすい職種の人材はすぐに会社を離れることも少なくなく、勤続年数や給与といった値に少なからず影響をもたらします。

また、大手小売店(REWEやRossmann等)や飲食店などではレビューの中に「短期」「アルバイト」などの声が加わっており、こうしたレビューは「正社員」「基幹職」とは切り分けて考えるべきでしょう。そのため、上記のようなレビューサイトではリテール系の大企業の総合評価は低く見積もられる傾向にあります。

社風のような、従業員の主観や性格にひきづられやすい採点も注意が必要です。例えば、ドイツに進出している日系企業のレビューなどは「社風」や「仕事環境」の点で悪いレビューがつけられることがありますが、これはドイツ人の目から「自分の文化と違う」と見なされることに起因しています。

ドイツ人にとってマイナスと映る企業文化であっても、日本人の視点からはプラス(成果主義vsプロセス主義、等)といった側面もあるので、自分の働きたいと思った企業のレビューが悪かったからと言って自分にとって居心地が悪い会社、レビューが良かったからと言って良い会社、とまでは言えない側面があります。