貿易実務の世界にキャンセルやクレームはつきものですが、そのたびに返品を受け入れることは輸入側にとっても輸出側にとっても効率的ではありません。そんなときに欠かせない「クレジットノート」の概念を紹介します。
英語 Credit Note
日本語 クレジットノート
ドイツ語 Gutschrift (GS)
解説
ドイツ語での正式名称はGutschriftですが、略称のGSであったり、英語表記のCredit Noteを用いることもあります。貿易決済などで使用されることの多い用語で、一般的には「売り手」が「買い手」に対し、将来の返金を約束するための書類のことです。
買い手への返金の理由に関しては色々ありますが、身近な例ですと製品の不足、瑕疵、などが挙げられます。例えば、ドイツの家電メーカーN社が日本の輸入代理店C社に対し掃除機を100台出荷し、それに対する100台分の料金50,000€が既にN社に振り込まれていると仮定しましょう。C社は、港に到着した掃除機を検品したところ、一つ不足し、99台しかコンテナに積載されていない事実を確認し、N社に対し不服を申し立てました。
ドイツのN社(輸出元)と日本のC社(輸入元)の間で正当な売買契約が交わされ、N社に対し既に掃除機100台分の代金が支払われている以上、N社は契約履行の義務を負います。ここでN社が取れるアクションは以下の通りになります。
- 空輸便で即座に1台不足していた掃除機を送る
- 掃除機1台分の代金を返金する
- 掃除機1台分の代金に対し「Gutschrift(クレジットノート)」を発行し、将来の返金を約束する
このうち、実際の貿易実務の世界で最も取られやすい解法は「3. Gutschrift(クレジットノート)を発行する」です。不足分を送るには輸送費と時間と手間がかかり、買い手にとっても通関手続きの二度手間になります。代金の返済も、国境をまたいでいる以上手数料がかかります。それゆえ、経済的合理性の最も高いクレジットノートの発行がお互いに好まれやすいというわけです。
N社とC社が継続的に取引を続けている以上、近いうちにC社からN社に対してまた何らかの発注があることが予想されます。そのため、実際にはこの「返金のための権利」は「次回の発注の際にクレジットノート分値引きする」という形で解消されることが多いと言えるでしょう。
もっとも、クレジットノートの発行はあくまでお互いの信頼関係が成り立ち、かつ返金するほどでもない少量であった場合の解決策であり、瑕疵が膨大な量に上ったり、コンテナ一台出荷し直す、といった規模になるとまた別の解決方法が模索されるべきでしょう。