ドイツの日系企業に就職した日本人のうち、実に全体の25%に相当する数が「営業職」についており、ドイツに就職する日本人の中で最も高い割合の職種となっています。(Career Managementドイツ人材市場レポート

ドイツにおける日本人就職者の職種

今回は、特にドイツの日系企業で求人の出されることの多い人気職種「海外営業業務」について、具体的にどのような業務内容で、どのようなスキルが求められるのかなど、徹底解説をおこないます。

ドイツにおける営業職の立ち位置とは

ドイツでは、営業職は「Vertriebsmitarbeiter」「Außendienst」と呼ばれ、大学の専攻としては「商学部(BWL)」の延長線上に位置する分野です。給与水準は金融業や士業と比較すると見劣りしますが、自身の業績次第では1,000万円越えもすんなりと到達することが可能であるのと、色々な地域を飛び回れるのとで、ドイツ人にも人気の職種の一つです。

専門的な資格は必要とされませんが、その分広範な分野にわたっての知識が要求され、特に会社の花形とされる海外業務部にあっては、「会計」「語学」「異文化コミュニケーション」「Supply Chain Management」「Price Management」「International Trading」「Market Analysis」などを総動員させた、商学分野でのジェネラリストとしての働きが期待されています。

ドイツにおける日系企業にあっても求められる技能は似通った部分があり、日本国内での営業と違って、語学や異文化コミュニケーション能力、貿易の知識が必要とされてきます。

  • ドイツで海外営業部は花形ポジション
  • 商学の知識を隈なく活かした「ジェネラリスト」としての活躍が見込まれる

業務内容

具体的に、ドイツの日系企業に就職した営業職の業務内容はどのようなものになるのでしょうか。

基本的にドイツに進出している日系企業の場合、ドイツ国内、あるいはドイツ国外(他ヨーロッパ地域、ロシア、アラブなど)のどちらかのマーケット、顧客を担当することとなります。

特にドイツ国内単体で大きな売り上げが見込まれる市場の場合、ドイツ市場にのみ専念することとなります。この場合、大きな割合で「ドイツ語」のスキルが求められることとなります。一方、ドイツに在庫を持って欧州統括機能を構え、そこから他のEU諸国やロシア、アラブ諸国などに販売するケースもあります。

具体的な顧客は業種によってまちまちで、自動車部品メーカーであれば自動車工場、自動車メーカー、インテリア系の製品群であれば小売店やディストリビューターなどがメインターゲットになります。中には、ドイツに進出している日系企業がターゲットという営業職もあり、その場合日本語での優れた対人交渉能力が重要視されます。

こうした顧客(代理店、小売店、直接の顧客)の売上管理をおこない、日本の本社とのパイプ役となるのが、ドイツにおける日本人営業として求められる仕事内容となります。

特に、ドイツの営業で数字の管理が必要になってくる理由が、日本やそれ以外の生産拠点からドイツに製品を運ぶ、Lead Time(納期)の存在です。顧客とのコミュニケーションを密にとって在庫の管理を行わなくては、顧客から発注が来てもすぐに販売できないという事態に陥ります。

そのため、可能な限り対面でドイツ国内外の顧客を訪れたり、できるだけ頻繁にオンライン会議を実施して情報収集をすることが、日々の業務として求められてきます。場合によっては、ドイツ、フランス、イギリス等での展示会への参加、その準備もおこないます。

また、既存顧客への新製品の説明・プレゼン、クレームの対応、在庫管理、場合によっては売掛金の管理も営業の仕事となり、国境を越えたダイナミックな業務が期待されています。

  • ドイツ国内外への出張が多い
  • 発注を受け、営業アシスタントにオーダーを投げる
  • 在庫の管理には特に注意をしなくてはいけない
  • 英語やドイツ語での高い対人・プレゼン能力が要求される
  • 新規開拓よりも、すでにある既存顧客の対応がメインのケースが多い

応募の要件

このように、商学に関する広範な知識が要される「在独日系企業の営業」のポジションですが、具体的にはどのような応募の要件となるのでしょうか。

語学に関しては、英語はB2レベル以上、ドイツ語はマストではない(ドイツ市場に専念する場合、あったほうが良い)、というのが一般的な在独日系企業の営業ポジションに対する応募要件です。例えば、以下はドイツの日系企業に就職した日本人の語学レベルです。

職歴に関しては、3年以上の営業歴(特に日本の会社で)があれば望ましいとされていますが、場合によっては営業未経験者の採用も行われています。ただし、日本の企業で働いたことが全くなければ日本のビジネス習慣や作法を知らないため、本社や同僚との折衝が困難だと思われることが少なくありません。

その他、パワポやエクセル、ワードといった必要最低限のオフィスアプリケーションの実務能力も必須となります。

  • 英語は最低B2レベル
  • ドイツ語はあれば高評価
  • パワポ、エクセル、ワード
  • 日系企業での就職経験は非常に有利
  • 対欧米人に対する高いコミュニケーション能力が求められる

どんな技能が重宝される?

上述した応募要件以外に、どういった技能があれば重宝されるのでしょうか?欧州統括としての機能を持つ場合、ドイツ国外への営業が頻繁に行われるため、英語以外のもう一つの欧州言語(スペイン語、フランス語、ロシア語等)に対する素養があると非常に有利です。

また、製造拠点が中国や台湾の場合、そうしたサプライヤーとの購買に関する交渉も行うことがあるため、中国語の素養もあると便利ですが、営業業務であればそこまで大きく求められることはありません。

その他、ドイツ国外の顧客を担当する場合、その国へのドイツからの輸出が必要となるため、貿易に関する知識もあるとプラスの要因になります。その国々の商法などに精通していればなおよいのですが、実際にそこまで求められるケースは稀です。

加えて、新規市場の開拓の場合、市場調査やPrice Managementを要することもあるため、統計的な知識やリサーチ能力もあると重宝されます。そうした新興市場では、自分で一からマーケティングも行う必要があるため、マーケティング、ブランディングの能力もあると評価されます。

  • 欧州他言語の素養
  • 貿易知識
  • マーケットリサーチ能力
  • マーケティング能力

どんな性格の人が向いている?

性格に関して言うと、やはり欧州中を、場合によってはアフリカやアラブ諸国まで足を延ばすことも出てくるため、出張が苦ではない性格の持ち主が適していると言えます。海外旅行を年の半分行っていても楽しいと思えるような性格であれば、まさに海外営業に適していると言えるでしょう。

日本人就職者の、海外滞在経験の有無

また、ドイツでこそ稀ですが、各国のバイヤーなどとの食事、飲み会なども起こり得るため、やはり対人でのビジネスを楽しめる人間が良いとされています。留学経験などがあり、各国の友人と仲良くなった経験がある人であれば、まさに適任です。

ただし、どんなに海外の素養が求められていても、やはり扱うものが日本の企業の製品である以上、自国の文化や製品に誇りを持ち、日本の文化に則って仕事のできる人間を企業側は求めます。

  • 旅行好き
  • 異文化コミュニケーションが得意
  • 日本の文化に誇りを持っている

どんなスキルが身につくのか

最後に、こうした環境に身を置いて仕事をした場合、どのようなスキルが身につくのでしょうか。

まず、四六時中欧州のバイヤーを相手に仕事をするので、語学能力は否が応でも身に付きます。それは、語学学校や大学の授業のような机上の英語ではなく、ビジネスに適した、活きた言語能力として、生涯の糧となります。

また、ドイツ人の同僚や海外の取引先との交渉は、自身の異文化への対応能力を認知レベル(Cognitive Level)で高めることが証明されており、将来別の会社に移っても、やはり海外営業部として活躍できる土壌が形成されます。

新興市場を一から開拓するのであれば、その国の商慣習、Price Researchを行う必要が出てくるため、将来的に営業推進、製品開発部として別のポジションにつく道も用意されています。

  • 優れた語学能力が身につく
  • 異文化対応能力が磨かれる
  • その他、欧州の「商学」に関わる業務知識全般が身につく

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