ドイツ人は親日か?ドイツで現地就職して分かった意外な実情

日本と似た国民性として知られるドイツですが、実際に日本人への風当たりがどのようなものか、日本ではあまり知られていません。ドイツへの転職を考えている人にとって、ドイツ人の同僚と良好な関係を築けるか否か、日本に対してどのような感情を抱いているかは、一つの気になるポイントでしょう。

本日のコラムでは、ドイツ人の対日感情一般や現地のドイツ人従業員がどのように日本人に接するかを紹介していきます。

ドイツ人が日本人に抱く印象一般

新聞やインターネットニュースなど、メディアを通して見るドイツ像と、実際に住んでみての印象はかなり異なった点が多いと言われています。一般的に、ドイツに住むドイツ人にとって、日本とは極東の「遠いアジアの一国」なのです。そのため、メディアの言う「反日」「親日」といった用語は、ドイツで生活するにあたりあまり意味を持ちません。

経済的なつながりで言えば、すでに日本の立ち位置は中国よりも下に置かれているケースが少なくありません。多くのドイツ人にとって、やはり主要なマーケットや取引先はEU諸国、次いでアメリカや中国で、日本という国の優先順位はだいぶ下になります。

そのため、ドイツの日本に対する印象が良いか悪いかという質問の答えとしては、「そもそもあまり知らない・無関心」という回答が的を得ていることでしょう。

当然、ドイツ人の暮らしの中で、日本という国は一定のステータスをもって扱われることがあります。寿司(日本食)しかり、漫画やアニメしかり、プレイステーションしかり、日本の生んだ文化や製品がドイツ国内で受け入れられている事実はありますが、それはあくまで我々が日常生活で「Bosch」「Miele」「Benz」といったドイツの会社名を耳にする程度の感覚で、そこまで日本人に対して特別な感情を持っている、というわけではありません。

とはいえ、中にはコアな日本ファンのドイツ人もおり、例えば毎年夏にDüsseldorfで開催される「Japan Tag(日本デー)」というイベントには、毎年何十万もの日本ファンのドイツ人が押し寄せ、コスプレや日本食を楽しむイベントとして知られています。

一般的にドイツで日本はどのような見られ方をしているのか、という答えを求めると、「一般的なドイツ人はそこまで特別な思い入れはないものの、日本の文化自体は好印象にとらえられている。そして、熱烈な日本好きなドイツ人のファンは一部存在する」といった感じです。日本人のドイツに対する思いと似ていると言えないでしょうか?

ドイツでラーメンは人気料理の一つ

日系企業で働くドイツ人従業員の日本人の同僚への印象

続いて、ドイツの会社における日本人への印象について触れていきたいと思います。

そもそもドイツ人と日本人が共存する会社において、ドイツ人従業員は日本人の同僚に対してどのような印象を持っているのでしょうか。

前提条件として、このような日独共存の形となるほとんどのパターンは、「現地に進出した日系企業の駐在員・現地採用者と現地のドイツ人社員」という組み合わせです。

ルーマニアに進出するアメリカ企業のデータ分析を行ったある人事評論家の論文によれば、そもそも現地人が外資系企業で働く場合、その外資系企業の文化が好きで入社することが多く、スタート地点で既に日本に対して好印象を抱いているケースが少なくありません。

以下のような声は、日本人の同僚を持つドイツ人から聞かれます。

  • ルールや時間を守る
  • 仕事熱心
  • 礼儀正しい
  • 優しい

このように、現地の日系企業で働くドイツ人は、一緒に働く日本人を非常にポジティブにとらえ、リスペクトしています。ドイツ社会では、残業して報告書をまとめているマネージャーや隣で仕事が溜まり帰れないい人がいても、当たり前のように助けることはありません。それは、『各人がそれぞれ会社と個別の契約をしている』ことを大前提としているからです。

日本では、同僚は仲間と混同されやすく、「仲間が大変なら助けなければ」と仕事の一部を手伝うことも一般的ですが、ドイツでは契約が違うため、自分の仕事が終わったら帰るという行為も一切悪ではありません。日本人従業員は、人の仕事でも可能であれば助ける姿勢が比較的強く、働きやすいと感じられています。

某日系企業に勤めるレーマン氏(ドイツ人)は、日本人の同僚社員を次のように評価します。

日本人の同僚は本当に優しいし、話しやすい。礼儀正しく人に接することが重要だと再確認させられる

また、日系企業で働く多くのドイツ人は日本人に対して「さん」を付けて呼びます。社内外のメールのやり取りでも「Mr」.や「Ms.」ではなく「san(さん)」を使います。それについてレーマン氏は、「相手の文化を尊重することで、例え現場がドイツだとしても、歩み寄っている姿勢を見せたい。相手が慣れ親しんだ呼び方の方で少しでもホームだと感じてほしいという思い」と語っています。

ドイツ人から見た日本人のネガティブな印象

日系企業で働くドイツ人は、基本的には、日本人に対してそこまでネガティブな印象を持ちません。とは言え、一緒に働く中でドイツ人がよく困るケースを見ていきましょう。

  • 会話中はたくさん頷くのに、最後に反対される
  • 英語やドイツ語の日本語アクセントが強い
  • ドイツ語を勉強してくれない人が多い

日本人は「相手の話を聞いていますよ」という意味で、相手の話中に「うんうん」と縦に頷く習慣があります。これをドイツ人は賛成されていると捉えてしまい、話し終わった後や後日のメールで反対意見を言われて驚くという事が起こります。

ドイツ人にとって「頷く」というのはYes, I agree with youの所信表明であり、日本人にとって「頷く」はYes, I am listening to youの婉曲表現であることから生じた、日独間の仕事文化上の軋轢と言えるでしょう。
引用元:ドイツ人が嫌う日本企業の仕事文化ワースト5とは?

また、日本語アクセントの聞き取りが難しいという悩みもドイツ人は抱えているようです。日本人でも、例えばフランス語やスペイン語、アフリカ系アクセントがある英語が聞き取りづらいという経験をしたことがあるでしょう。それと同じで、日本語アクセントは一般的にドイツ人にとっては意外と不慣れなものです。

ドイツ語は英語よりも文法のルールが多く、3つある名詞の性によって冠詞も複雑に変化し、日本人にとって非常に学習が難しい言語です。これは悩みというより希望に近いですが、長くドイツに住むのであれば、ドイツ語を勉強してほしいと考えるドイツ人は少なくありません。

ネガティブな印象は実は問題ない

ただこういったことは基本的に、ドイツにある日系企業の場合、ドイツ人側が慣れてくれて問題とならないケースがほとんどです。そもそも日本と比べて外国の血が圧倒的に多く入り乱れているので、多様性を受け入れなければならないのは日常茶飯事です。

某日系企業に勤めるフォルカートさん(ドイツ人)は、以下のように体験談を語っています。

日本人の同僚と営業に行った際、彼が客先で話を聞きながら頷いていたため契約成立の方向へ進むかと思ったが、帰社してからNOのメールを書いていて驚きました。しかし、もう数年日本人と一緒に働く中で、彼らは客先で無礼のないようにという意図で頷いて話を聞くということが分かり、今ではそのような誤解なく理解し合えています。日本人にとっても理解しがたいドイツの文化があるはずだし、彼らの文化を理解しようとするのは当然です

また、外国から移住してきた人の他にも、親がトルコや中央・東ヨーロッパから移住し、ドイツ育ちだが外国人の両親を持つドイツ人も、実はよく強いアクセントを話します。

引用元:Statistisches Bundesamt (Destatis), 2019

例えば、トルコ系ドイツ人のコミュニティーでは、きちんとしたドイツ語、つまりトルコ語アクセントがないドイツ語を話すトルコ系ドイツ人を軽蔑する人たちすら存在します。その人たちの言い分は、「トルコに誇りを持て」です。

このように様々な背景の人たちが常日頃から入り乱れているドイツでは、多様性や強いアクセントへの理解力も高いのです。ドイツの企業でマネージャーを務めるルッツ氏は、「最初は日本人の同僚の言葉が理解できなかったが、結局は慣れの問題。少しすれば彼の話す言葉もわかるようになったし、最終的に国籍は関係ないですよ。バイエルン州のドイツ人の言葉も(方言が強くて)理解できませんしね(笑)」とアクセントにも理解を示しています。

ドイツ人は現実、ドイツ語での会話を好みます。客との商談や社内の会議も、可能であればドイツ語で行いたいと感じている人が多いですが、一方で英語能力が高いのも事実です。「長期滞在する日本人がドイツ語を勉強してくれた嬉しい」というのはあくまで気持ちの問題であり、仕事で要求することは多くありません。

「自分たちにとってもドイツ語は難しい言語だと思う。ドイツ語を勉強した方がこっちでの生活がより豊かになるとは思うが、仕事中は英語で十分」

とルッツ氏。

まとめると、ドイツ人は非常に親日で、日本人の働き方をリスペクトしています。文化や言語の違いで勘違いが生じてしまうこともありますが、ドイツ人側からも歩み寄る姿勢が強く、一緒に解決していけるでしょう。欧州の中では最も規律を重視すると言われるドイツ人。日本人にとっては非常に溶け込みやすく、働きやすい国と言えるでしょう。

Chihiro Takahata
Career Consultant

上智大学卒。Düsseldorf担当。ドイツの就職に役立つ本ブログの筆者。

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