欧州随一の経済大国として知られるドイツは、ドイツ企業だけでなく、日系企業や各国の多国籍企業が欧州統括の拠点を構える人材開発の宝庫としても知られ、その求人・キャリア育成のチャンスは他国とは一線を画します。

今回のコラムでは、こうした各国の応募者にとって垂涎の的であるドイツにおいて、日本人が職を得ようと考えた時、特に日本人としての強みを活かして採用されやすいと考えられる求人についてまとめていきます。

日本人としての強みが最大限活かせる求人は?

企業は優秀な人材を採用しようと企業努力を続ける一方、各国の優秀な人材もドイツを目指して移住するという、人材育成における好循環が続いているドイツですが、その分就職市場における競争力は熾烈で、単に「ドイツ語が話せる」だけでは仕事を得られないのが現状です。

他国の応募者と差別化をするためには、他者には代替することのできない特別なスキルやノウハウを持っていることが重要となります。具体的には、弁護士資格や税理士資格といったドイツでの士業従事者(またはシステム開発、機械工学など専門知識を要する分野の仕事)がこれに該当しますが、当然これらの資格試験をパスするためには並々ならぬ努力が必要で、日本人としてこうした士業に携わる者はごく一部の人間に限られます。

こうした士業としての強みを除いてなお、日本人にとって共通一般の強みとなりうるのが「日本の企業との折衝が行える」という点です。これは、ドイツに集まる多くの国の人材の中でも、ことさら日本人(特に日本での仕事経験がある人材)が持つ強みで、この強みを活かせる領域での求職活動がアドバンテージを活かせます。

日本は、ドイツにとって14~15位の貿易相手国としてみなされているいわば「そこそこ重要ではあるが、最重要ではない」という位置づけの国のため、バブル期のようにどこもかしこも日本人人材を求めているというわけではなく、一部の業界に限られています。以下、ドイツで日本人が就職するときに強みを活かしやすい求人を5つ紹介していきたいと思います。

ドイツ日系企業の営業

ドイツ移住する日本人の中で一番人気となる職種と言えば、「在独日系企業における営業職」となります。ドイツに移住する日本人の約40%が元営業経験者で、そのうちの半数以上がドイツに来てもそのまま営業職としての業務を引き継ぎます。

ドイツでは、営業職は「Vertriebsmitarbeiter」「Außendienst」と呼ばれ、大学の専攻としては「商学部(BWL)」の延長線上に位置する分野です。給与水準は金融業や士業と比較すると見劣りしますが、自身の業績次第では1,000万円越えもすんなりと到達することが可能であるのと、色々な地域を飛び回れるのとで、ドイツ人にも人気の職種の一つです。
引用元:日本人営業社員の業務内容・応募要件を徹底解説します

この職が日本人にとって人気であることには、いくつか理由がありますが

  • ドイツに進出する日系企業の多くが欧州市場開拓の人材を探している
  • 日本本社との折衝が必要となるため、高度な日本文化と言語の理解が必要
  • 日本で営業経験のある日本人の人材が不足している
  • 欧州出張、他国の市場育成等ダイナミックな業務が可能

といったものが挙げられ、上記の記事の中でも触れられているように、ドイツに転職する日本人のうち4分の1はこの「海外営業」としてのポジションを得る形となっています。また、日本本国の営業とは異なり、基本的に折衝先の相手はドイツ人をはじめとするヨーロッパ人となることから、接待など仕事時間外の対応も少なく、純粋な仕事での交渉を通じて自身の異文化スキルを磨ける格好のキャリアとして知られています。

現在空きのある営業職のポジションに関しては、以下の求人を参照してください:

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ドイツ日系企業のアシスタント職

上述の営業職についで人気が高く、日本人(特に女性)にとって応募しやすいポジションとなるのが、この「営業アシスタント」の職種です。

Vertriebsmitarbeiter(営業職)との違いは、実際に売り上げの数字に責任を持たないことが多く、また出張を伴わないケースがほとんどです。ドイツでのCustomer Serviceの平均的な給料は3,000EUR~40,000EUR程度で、他の会社に移ってもつぶしが利くことから、配偶者に転勤が多い女性や地元の女性などにも人気です
引用元:女性採用が多い、営業アシスタントの業務内容・応募要件とは?

基本的には日本の企業における「エリア職」の延長線上にあるものですが、既存顧客の管理に加え、以下のような要素が多国籍企業として盛り込まれる形になります。

  • 貿易関連のサポート(フォワーダーとの折衝など)
  • 英語、ドイツ語等での対外コミュニケーション
  • その他インボイスの発行など、会計事務手続き

営業職のように最前線で顧客との折衝を行うわけではありませんが、一定レベルの言語能力が要求されます。以下の表のように、基本的に英語は必須で、ドイツ語に関しては「できたらよい」レベルにとどまっているパターンが多いため、ドイツに渡航して間もない日本人にとっても応募しやすい職種として知られます。

応募要件 ドイツ企業 在独日系企業
(総合職)
在独日系企業
(アシスタント職)
英語力 B2~C1 B2~C1 B1~C1
ドイツ語力 B2~C1 B2~C1(マストではないケースもあり) マストではないケースが多い
大学時代の成績 勘案される(GPAで3.0以上が魅力的) やや勘案される あまり勘案されない
大学時代の専攻科目 勘案される あまり勘案されない あまり勘案されない
過去の職務経験 重要 やや重要 あまり重要ではない

参照: ドイツでの日本人の仕事の探し方とは?

現在空きのある営業アシスタント職のポジションに関しては、以下の求人を参照してください:

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ドイツ日系企業の営業推進

ドイツに拠点を持つ日系企業は少なからず欧州統括(HQ)としての立ち位置を持つため、ドイツのみならずその他欧州地域の管理を任されています。そうした、現地化が進んでいる日系企業と本社の橋渡し役として、日本の企業文化を知悉した人材が求められることとなります。

どちらかと言えば在独の日系企業の中でも欧州各国に販売拠点を持つような大規模な会社でこうした役割が求められることが多く、現地社員というよりも比較的駐在員のような、現地人材と本社の橋渡し的な立ち位置での活躍が求められます。
引用元: 営業推進・営業企画部の業務内容・応募要件を徹底解説します

上述の営業職との違いは、営業職は前線で顧客との折衝に当たる一方で、営業推進の業務はどちらかというとそれら数値の管理や、今後の方向性の戦略的な見通しを立てることで、マネジメントの素養を必要とします。

  • 営業社員の管理、育成、数字の把握と本社への報告が業務
  • 営業社員に比べると、出張の回数は少ない
  • 英語やドイツ語での高い対人・プレゼン能力が要求される

営業職、営業アシスタント職と合わせ、日本人にとって最も自身のスキルを活用できる場として人気のポジションです。この3つの職種が、ドイツに進出している日系企業でのポジションの中での転職率の過半数を占め、またCareer Managementが得意とする求人の一つでもあります。

現在空きのある営業推進職のポジションに関しては、以下の求人を参照してください:

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ドイツ企業のアジア市場担当

生粋のドイツ企業の中にも、日本語人材を求める企業は一定数存在します。ただしその場合、上述のように欧州マーケットをターゲットとする日系企業とは真逆で、「ドイツの財・サービスを日本やアジア地域に売りたい」ドイツ企業が対象となり、その全体の母数はそこまで多くありません。

  • アジア地域(特に日本)との関連が深いドイツ企業
  • 特にBusiness Developmentの要素を強く持つ
  • ドイツ語・英語の高度なスキルが必要

ドイツの大学・大学院を卒業した日本人の中で、英語・ドイツ語に自信のある人材は、こうした現地企業の日本デスクとして働くこともあります。特に、日本だけでなく中国や韓国などの市場開拓もセットで任されることが多く、こうしたアジア他言語の素養や文化的知識があると重宝されがちです。

理系専門職(ドイツ・日系企業問わず)

最後に、日本で理系職として働いた経験のある人材は、日本人としての強みを活かすというより、その理系知識を活かす意味で、日系企業・ドイツ企業双方での受け皿が用意されています。

  • IT Engineering
  • Machine Engineering
  • Software Developer

日系企業での働き方と異なる点は、いずれにせよ英語・ドイツ語の知識が必要となってくる点で、日本での仕事経験だけでは転職に必ずしも対応しきれないというところです。そのため、こうした分野での現地就職を目指す場合、一度ドイツの大学院に入りなおして言語を習得するか、ドイツ語を必要としない在独日系企業のポジションを得るようなケースが少なくありません。