2024年現在ドイツの欠員率は4.1%とヨーロッパの中でも高い傾向にあり、人手不足が続いています。ドイツの各企業はこうした人手不足に対処するために、転職エージェントや採用ポータルを駆使し、海外の優秀な人材を採用するなどの対処に追われています。
今回の記事では、在独リクルーター歴10年の著者が、 「日本からドイツ転職を目指す応募者」のために、ドイツ企業の求める応募条件から応募方法、面接、採用後の手続きなどに関してのコツを解説したいと思います。
・ドイツに転職する日本人の平均的な年齢や必要となる語学力
・転職後の有給日数や賃金水準など
・日本人がドイツで仕事を見つける方法
ドイツ転職の基礎知識
初めに、そもそも「ドイツ転職」を考える際に日本人社会人のキャリアにどのような影響を与えるのか、またどのような応募条件が必要になってくるのかを、過去の転職成功者のデータを基に解説していきたいと思います。
当社の独自資料である「日本人のドイツ就職市場レポート(2020)」を出典として使用しました
今回のデータで使用されているのはあくまで「平均値」なので、あくまで目安の一つとして考えてね
応募条件に関する基礎知識
ドイツ転職を考えるとき、基本的には「年齢」「職歴」「学歴」「語学レベル」「海外経験」などが転職に成功するかどうかのファクターとなります。それぞれの条件に関する過去の転職成功者のデータは以下の通りとなります。
項目 | ドイツ転職成功者のデータ(平均値) |
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日本からドイツに転職した日本人の平均年齢 | 30.7歳 |
日本での平均勤続年数 | 3.8年 |
日本の大学を卒業した人の割合 | 77.5% |
英語がビジネスレベルに達していた割合 | 43% |
ドイツ語がビジネスレベルに達していた割合 | 36% |
前職およびドイツ転職後の職種(最多) | 営業関連 |
海外への長期滞在経験をもつ人の割合 | 92.3% |
これは平均値であるため、実際には40歳を過ぎて転職した人もいれば、海外経験が全くない状態で転職成功した人もいます。データ的には、ドイツ転職に成功しやすい人のペルソナは「過去にはワーホリや留学などで半年以上の海外在住経験をもち、大卒後、日本で4年程度仕事経験を積み、30歳ごろまでに転職活動を行った者」となると言えるでしょう。
ドイツ語よりも英語ビジネスレベルのほうが割合が多いのが面白いね。年齢に関しては、日本の転職市場平均の32歳よりも少し若いのかな
30歳というのが一つの目安としてなるのは、この年齢を過ぎると白紙状態から新しい土地で新しい生活を始めるのが難しいからね。結婚し、子供もいるような立場であればなおさらで、やはりフットワークの軽い20代後半までに渡独する転職者層が目立つわね
転職後の待遇に関する基礎知識
続いて、ドイツ転職後に仕事の待遇面でどのような部分に変化が生じるのかについて解説していきます。日本→ドイツに転職した際の具体的な待遇面の変化は以下のとおりです。
項目 | ドイツ転職後の待遇の変化 |
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ドイツ転職後の給与水準 | +121.1% |
有給の増加数 | +13.29日/年 |
転職前に比べて同等・同等以上のやりがいを感じる割合 | 97% |
ワークライフバランスで常に上位に顔を出すドイツの職場環境は、ワースト5位の常連である日本と比較すると良いものとされ、給与面でも転職後に平均して121.1%の増加が見られます。
有給休暇もお給料も増えるなんて、ドイツ転職していいことばかりだね!
注意しなくてはいけないのが、ここで言われているのはあくまで「額面」の給与で、手取りとなると話は別よ。日本よりも税金が高く、住宅補助などの福利厚生も薄いドイツでは、手元に残るお金はそんなに変わらないという事実もあるわ。詳しくはBrutto&Nettoの記事を参照してね
ドイツ転職と応募
ドイツ転職の基本的な情報収集が完了したら、次は具体的な応募プロセスを見ていきましょう。応募自体は基本的にオンラインで無料でできるため、後述するように日本にいながらでもできますし、熱意を見せたければドイツに渡って転職活動を始めてしまうという手もあります。
いずれにせよ、転職活動に必要な書類はだいたい決まっており、以下のような書類や資格を準備しておく必要があります。赤字で記したものは必須で、その他の書類は「あれば良い」程度にとらえてください。
ドイツ転職時に必要となる書類 |
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・履歴書(英語またはドイツ語) ・大学の成績証明書(英語) ・語学の証明書(英語とドイツ語) ・推薦状 ・ドイツでの運転免許証 |
基本的に必要となるのは履歴書、成績証明書、語学証明書の3点だね
注意しなくてはいけないのが、語学と言ってもTOEICのようにスピーキングの技能が判定できない英語試験は無価値とみなされることが多いわ。基本的にはTOEFLやIELTSなど、詳細はドイツ就職で求められる語学力(ドイツ語・英語)についての記事を参照してね
続いて、日本から応募するパターンと、ドイツに渡ってから応募するパターンの違いを解説します。
日本から応募する方法
日本で現職を続けながらドイツでの転職チャンスを探るというのは、日本での転職活動同様、リスクを最低限に抑えられるやり方でもあります。一度ドイツに行ってしまうと、ビザのカウントが始まり、かつ生活費や保険料の負担も大きいことから、 ドイツでツテがない場合はこの「日本にいながら応募する」方法を推奨します。
日本にいながらの応募となると、基本的に転職活動はインターネットを通じてのものとなり、具体的には以下のような方法が見受けられます。
ドイツ転職時の具体的な応募方法(日本から申し込む場合) |
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・リクルーターを活用する ・転職サイト(LinkedIn、Xing、Indeed等)を活用する ・会社個別のサイトから申し込む |
それぞれに長所、短所があり、一概にどの方法がベストかを断定することはできません。リクルーターを活用することは、人材募集の案件にスピーディにアクセスし、自身に適した職をマッチさせてくれるため、ドイツの転職事情が分からない場合に最も適しています。リクルーターへの人材登録自体は無料なため、登録しておく傍ら他の方法で採用を探るような手も可能です。
既にドイツに就労ビザ取得などの知見があったり、働きたい企業がピンポイントで決まっている場合などは、転職サイトを活用したり、それぞれの会社の個別採用ページから応募を受けるようなやり方も王道です。
ドイツ現地に渡ってから応募する方法
日本で仕事を続けながらではなく、覚悟を決めてドイツに渡ってしまい、そこから転職活動を行うという方法も可能です。この場合、仕事が得られなかった際のリスクや生活費の負担などは増える一方で、面接に呼ばれたときにスムーズに顔を出せたり、採用メッセのようなところで情報収集ができるようになる、という利点もあります。
ドイツ転職時の具体的な応募方法(ドイツに渡ってから申し込む場合) |
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・リクルーター ・転職サイト(LinkedIn、Xing、Indeed等) ・会社個別のサイトから申し込む ・就活メッセに顔を出す |
特にドイツ企業は世界各国からの応募を相手にするため、日本にいながらの応募者を冷やかしととらえてあまり真剣に相手にしない傾向にあります。また、リモート化が定着したとはいえ、まだ企業面接はオンラインではなく対面でのものを好む企業が多く、その意味では多少リスクを負ってでも渡独してしまうというのも、熱意を見せる上で良い手段となるでしょう。
背水の陣の覚悟ってやつね
ただし、日本人の観光ビザは3ヶ月で切れてしまうので、その間に仕事が見つからないとゲームオーバーになることも。過去の統計的に日本人応募者の約半数強は、ワーホリや語学留学後などでドイツで仕事が見つからず、帰国することになっているわ
ドイツ転職時の面接
応募して企業側から興味を持たれたら、次のステップは「面接」となります(筆記などを課す会社も一部あります)。面接ではドイツ企業は対面方式を好みますが、遠方に住んでいる等特殊な条件下では、お互いのリスクと手間を軽減するためにオンラインで面接を行うケースも多々見受けられます。
面接で聞かれることはある程度事前に予測可能で、以下のような問いがオーソドックスでしょう。
聞かれること |
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特に自身の専門性に関しては、ドイツ社会全体が「専門性」を重視する風潮にあるため、大学から就職まで一貫した自身のスキル・専門性をアピールできると良いでしょう。また、これらの質問を通じて会社側は以下のようなことを判断しようと試みます。
企業側が知りたいこと |
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色々な質問が投げかけられますが、畢竟、人事側が知りたいのは「採用したらオファーを受けるのか」「自社で活躍できるのか」「自社に長く残るのか」の3点で、よほど人間性に問題がない限り、その他のソフト面での特徴などはあまり関心を示しません。
企業によっては3~4回複数の面接を設けるところもあれば、1~2回で面接が終えられる企業もあります。また、年収に関しても面接の場でざっくりとした数値を確認することが多いですが、実際にいくらでフィックスるかは契約書に署名するまで決まりません。
面接後・内定について
さて、こうした「応募」「面接」のプロセスを経て晴れて人事側が認めれば、見事に「内定獲得」となります。ここからの行動は、自身の居住地や仕事形態などにもよりますが、具体的には以下のような手続きが残っています。
内定後の手続き: |
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現職の退職手続き(まだの場合) |
既にドイツに住所がある場合はともかく、先ほど紹介したうちの「日本で働きながら転職活動をする」を選択していた場合、ここから就職の日までは様々な書類手続きに追われることとなります。
特に、労働ビザ関連に関してはドイツに住所を得てからでないと正式に申し込めないことが多く、こうした負担を軽減するために最初からリクルーターを用いた転職活動が推奨されます。当社はビザのサポート以外にも、労働契約書の正当性の確認や、業界で正当な賃金のアドバイスなども可能で、ドイツでの知見がない場合の転職案件でも安心してお使いいただけます。
海外就職で一番の難関なのが、実は内定をもらった後の手続き。こうした事務的な部分も含めると、当社のようなリクルーターにお任せいただけると万全の態勢でドイツ転職に臨めるわ。
口約束での「内定」はまだ効力を持たず、最終的に法的な効力を持つのは労働契約書にサインした瞬間からです。世界の中でも指折りの「契約書文化」で知られるドイツでは、今後もこの契約書によって決定がなされる場面が多いので、注意しましょう。
ドイツ就職後の生活について
内定獲得後、実際にドイツでの仕事生活が始まります。その土地に実際に長期間滞在することになるため、単なる短期旅行のようにはいきません。ドイツで職を得た後の生活について紹介をしていきたいと思います。
労働環境に関して
冒頭で説明した通り、ドイツの仕事環境・ワークライフバランスは世界でもトップクラスです。一般的な企業では20~30日の有給休暇が定められており、残業も日本の一般的な社会人と比較すると少ない傾向にあります。
日本からドイツに転職した場合では、過去の職場との比較で 有給休暇は年平均+13.29日増で、この休暇日数を駆使して欧州国内外への旅行や家族サービスなどに時間を費やすことが可能となります。Statistaのデータによると、有給消費中のドイツ人の7割が海外旅行に出かけているというデータもあります。
注意しなくてはいけないのが、ドイツの国民の祝日は日本よりも年10日前後少ないので、祝日と有給を足した合計の休日数はそんなに変わらないかもという事実
ドイツの労働環境の一部だけを切り取って「ドイツは労働者にとって天国」と言われることもあるけど、もちろん悪い部分もあるわね。詳しくは「ドイツの有給休暇は年間何日?労働先進国ドイツに見るワークライフバランス」などの記事を参照してね
食事に関して
元々食料不毛地帯で知られたドイツでは、主食はジャガイモや保存食(ソーセージやハム)、揚げ物などで、新鮮な魚や野菜が食卓に並ぶようになったのは戦後になってからです。戦後間もない世代のドイツ人女性は「ジャガイモを料理できないとお嫁にいけない」と言われていたほどです。今でも、米の代わりに食卓には「フライドポテト」「マッシュドポテト」「茹でたジャガイモ」などが並びます。
こうした「保存食向き」の歴史的背景もあることから、ドイツの食事は脂っこく高カロリーであることが言えます。このことは、胃腸炎、メタボリックシンドローム、糖尿病などの生活習慣病などを引き起こすリスクがあり、外務省の公式HPでも注意が喚起されているほどです。
日本食に関しては大都市のアジアショップやオンラインショップを経由して購入することとなり、日本よりも1.5~2倍ほど割高となりますが、その他野菜・果物などに関しては日本よりも安い傾向にあります。
ドイツに移住した日本人からは、食事はあまり期待しないほうがいい、という声をよく聞くね
実際はおいしいドイツ料理もあるし、近年では各国のおいしいレストランが店を構えているからね、昔よりも食事のレパートリーは豊富よ。詳しくは「ドイツの食費はどのくらい?スーパーと外食の平均価格を紹介」の記事を参照してね
家賃・生活費に関して
ドイツ全体の家賃・生活費の水準に関してはいろいろな見方ができますが、例えばStudying in Germanyによれば平均生活費という切り口で見れば、一ヶ月に最低限必要な生活費は家賃を含めて「861€」と言われています。対して総務省の家計調査によると、日本の平均的な一ヶ月の生活費は「150,506円」で、ユーロ換算すると「1153€」となり、ドイツよりも高い計算となります。
別の切り口で見てみましょう。GoBankingRates社の公表する生活費指数と購買力指数を参考にすると、ニューヨーク市をベンチマークの100としたとき「生活費:74.35」「購買力:125.01」で表されます。日本の値が「生活費:86.58」「購買力:107.35」ですので、ドイツの生活費に関しては日本よりも低い傾向にあり、購買力に関しては日本よりも高く、給与水準以上に豊かな生活が享受できる形になります。
生活費の安い理由には、家賃水準が日本よりも安いこと、EU各国から陸路で輸送される穀物・野菜・果物などの生活必需品の値段が日本よりも安い(かつ、生活必需品の税金が安い)ことなどが挙げられます。
ただし、最終的にどのくらいの生活費・家賃が必要になるのかはどの都市に住むのかで大きく変わってくる傾向にあり、例えば同じ大都市でも、デュッセルドルフの家賃相場は㎡辺り13~14€で、ミュンヘンは18~19€となります。
え、ドイツの物価って日本よりも安いんだ??
ものにもよるけど、例えば野菜や果物、乳製品や肉製品は日本よりも安い傾向にあるわね。逆に、ドイツから日本に留学したドイツ人が、果物のあまりの高さに仰天した、という話もよく聞くわ