日本人がドイツで働くうえでのネックの一つが、住居探しです。ドイツに正式な住居・アドレスが無いと、銀行も開けず、ビザも申請できません。

日本の会社のように、借り上げ住宅や独身寮を手配してくれたり、という配慮はドイツの会社にはほとんどなく、仕事のオファーが決まったら、住居は自力で確保しなくてはいけません。

とはいえ、ドイツの住宅事情に知見の無い状態での家探しは困難を極めますし、詐欺にあうといった事例も少なくありません。今回は、仕事のオファーが決まってからの、ドイツでの正しい家探しについて解説していきたいと思います。

ドイツ住宅事情

ドイツでは昨今、難民の増加などもあって、慢性的な賃貸物件の需要多寡状況に陥っています。ドイツ人でさえも、新しい町に引っ越す際には物件を探すのには苦労する状況で、ましてや日本人である我々は、コツを知らなければ1ヶ月経っても家が見つからない、ということさえあり得ます。

今回の記事には、ドイツの住宅形態事情、探し方、効率的に家を探すコツ、の3つのテーマを盛り込んでいきたいと思います。

ドイツの住居形態

ドイツでオーソドックスな住居形態は以下の三つです。

WG-Zimmer(フラットシェア)

WGとは、ドイツのフラットシェアリングのような形式で、ドイツの学生や若者間ではもっともポピュラーな居住スタイルです。一人暮らしと違い、以下のような利点があります。

メリット:

  • ドイツ語/英語が習得できる
  • フラットメイトと仲良くなれる
  • 他の居住形態と比較して、コストが抑えられる(家賃300~500€)
  • インターネット、ガス・電気代なども自分でアレンジする必要がない

一方で、以下のようなデメリットも存在します。

デメリット:

  • 一人の時間が持てないこともある
  • フラットメイト同士のトラブルも多々発生する
  • フラットを探すのが簡単ではない(応募形式)

フラットシェアは、大抵フラットの同居人の中の一人が正式な賃貸契約をオーナーと結び、そのフラットに誰を招き入れるか、の権限はフラットメイト達が持っているパターンがほとんどです。

同じ屋根の下で生活し、トラブルなども発生しやすいことから、このフラット形式の住居では入居前に、同居人たちによる「審査(インタビュー)」がおこなわれます。そこで「あ、こいつとはうまくやっていけないな」と向こうが判断した場合、あっさり落とされてしまいます。

また、フラットメイト=似たような性質の者同士で固まる傾向が強く、「学生のみ受け入れ可能」「女性のみ受け入れ可能」「30歳以上限定」といった、条件付けが厳しいのがフラットの特徴です。

フラットの探し方については後述します。

1-Zimmer-Wohnung(一人部屋)

ワンルームアパートメントのようなもので、日本でいうところのレオパレスのように、一部屋+キッチンとシャワーが独立してついているような個室形態です。上述のWGのように、キッチンやシャワーを同居人とシェアする必要がないので、一人暮らしに近い形式です。ただ、その分家賃も多少高く、家賃は400~600€くらいが相場です。

大学などが提供している寮も、基本的にはこの形式です。ただ、大学寮の場合、値段がぐっと抑えられて、300€前後でシャワー、キッチン付きの部屋が借りられたりもしますが、運がよくないと部屋を確保できないことが多く、半年待ちというケースもざらにあります。

会社勤めの社会人の場合、大学寮への入居はできないため、基本的には賃貸オーナーとの独自の交渉で一人部屋の契約を行う必要があります。値段的にも安く、かつプライベートが保てるため、若い独り身の社会人の間では人気の賃貸形態の一つです。

Wohnung

アパートなどの一室を全て借り切る形式です。具体的には、日本でいうところの3LDKだとか、2LDKだとかに相当します。なので、当然値段的にも、上述のフラットや一人部屋の2~3倍はすることになりますので、700ユーロ以上が相場です。

一人で借り切るには大きいので、基本的には、パートナーと一緒に住んだり、同居人を募集して、家賃や光熱費をみんなで割ったりする形になります。

また、水道、電気、インターネットなどの手続きを全て一人で行う必要が出てくるため、ドイツの生活形式に慣れていないとかなりハードルが高い住居形態の一つです。

期間

基本的にはbefristetとunbefristetの二種類が、賃貸物件の場合用意されています。befristetというのは、期限付き賃貸のことで、例えばオーナーが半年くらい海外に駐在に出かけるから、その間だけ部屋を貸すよ、とか、来期は海外留学に行くから、来セメスター丸々借りていていいよ、という、期間貸しのことです。

このように、本来は固有の契約者がいて、さらにその人のいない間に部屋を借りることを「Zwischenmiete」と言います。利点としては、基本的に持ち主の家具がそっくりそのまま残されるため、新しいものを買わずに済むこと、デメリットとしては、その期間が過ぎたら出ていかなくてはいけないことです。

unbefristetとは逆に制限を設けない契約形式のことです。この場合、一般的に退去の3ヵ月前にはオーナーに報告する必要があります。

探し方

以下、ドイツでの住居探しの方法をまとめていきます。

WG-Gesucht.de

ドイツのフラット、アパート探しと検索すると真っ先にこのサイトが登場します(個人での物件探しに関しては、このサイトが寡占している状況で、他のサイトに行ってもあまりいい物件がありません)。

このサイトを使って物件を探すやり方は二種類あり、一つは、能動的にどんどん応募しまくる方式、二つ目は、「こういう物件探してますよ」と自分の顔写真付きのWeb広告を出し、貸主側からの連絡を待つ方式です。

ドイツのフラットは売り手市場なので、Web上に掲載されてから1~2時間以内にコンタクトしないと、応募が殺到します。また、基本的に日本人を含めた外国人は不利です(貸主はドイツ人と契約したがるので)、加えて、男性はさらに不利です(女性のほうがキレイ好きなので)。

なので、テンプレートを用意して、数うちゃ当たる戦法で、ひたすら応募しまくるしかありません。返信率を高めるためにしなくてはいけないのは「いついつの期間に入居できる」「自分は安定した収入のあるサラリーマンである」「共同生活の経験がある」「ドイツ語・英語が話せる」あたりの情報を盛り込むことです。

応募をすると、WGまたはアパートのオーナーなどから、実際に会って話しましょうと言われます(名目上は部屋のチェック、本質的には借主の人となりを見極めるための査定)。貸主側も、複数の応募者を見ているため、そこでふるいにかけられるわけです。

また、(日本など)遠方にいて、どうしても部屋の視察に行けない場合、Skypeなどでも受け付けてくれるところがあります。

また、上述の通り、能動的にメッセージを送りまくる以外にも、同上のサイトからWeb宣伝を出して、蜘蛛のように相手からの連絡を待つこともできます。

ただし、その場合、あまり借り手のいないような怪しい物件や、詐欺オファーが来ることも多いため、注意しなくてはいけません。もしくは「急に引っ越すことになった、即座に借り手が必要だ」みたいな、物件的には優良ですが、持ち主側の都合ですぐに借り手を探している、みたいなケースの相手からも連絡が来るようになります。

注意しなくてはいけないのは、インターネット経由で物件を探すと、詐欺被害にあう可能性がある、ということです。以下、一例;

大体、詐欺の連絡は似たようなテンプレが用いられ、「親が海外にいて、名義は別だが自分が契約している」「私は若い女性で、一緒に暮らすことになったら仲良くしようね」など言ってきます。で、敷金を払ったり、こちらの個人情報を漏らすと、それっきりになってしまう仕様です。

張り紙

大学生、大学院生、語学学校生などの場合、構内の掲示板に張り紙がされているので、それにコンタクトすることで物件を探すことも可能です。ただ、張り紙という特性上、いつ告知がなされたのか分かりませんし、いい物件はすぐに誰かの目についてなくなってしまいます。なので、あまりお勧めできるやり方ではありません。

エージェント

不動産物件を仲介するエージェントを介することも一つの手段です。以下の会社のように大手であれば、詐欺被害にあうようなことはありませんが、注意点として、礼金が発生します。相場としては、大体家賃×2倍なので、10万円くらい支払うことになります。

また、中には悪質なエージェントもおり、相場の2倍近い物件をつかませたり、水道が壊れても修理してくれなかったり、とあるので、必ずコンタクト前にインターネットでの評判を確認しておきましょう。

住居探しのコツ

最後に、具体的にドイツでの住居探しを成功させるためのコツをいくつか紹介します。

迅速に行動

まず、一番いいやり方は、インターネットに終日張り付いて、広告が出た瞬間にコンタクトする方法です。相手が電話番号を開示している場合、電話してしまうやり方が理想的です。

ドイツに住んでいる場合は、すぐに訪問したい旨を伝えましょう。場所が遠いと、一々物件を見に行くのに旅費を払うのは馬鹿らしく思えるかも知れませんが、貸し手側としても、こちらがわざわざ遠方から出向くのであれば真剣さが伝わります。向こうも、時間の無駄ですので、何十人もの借り手を案内したくはありませんし、アポさえ取れれば、かなり高確率で契約までこぎつけられます。

ドイツ人の「探し手」の常とう手段は、いくつかの物件を見比べ、一番ベストなものを選択する、というものです。我々は日本人で、ネイティブのドイツ人に比べて色々な面で不利なので、そういった多くの物件を比較する戦法よりも、あらかじめ妥協できない点を設けておいて(ロケーション、広さ、値段など)、それさえクリアしていれば部屋の下見に行った瞬間に契約を締結する、くらいの気構えで行きましょう。

敷金を持っていって、下見の時点ですぐに契約できる、という姿勢を示すことは、パフォーマンスとして有効に通用します。貸主としてもさっさと契約者を見つけたいので、下見の段階で決まってしまえば両者にとってプラスです。

繋ぎの短期契約を利用する

現在日本に住んでいて、どうしても下見に行けない、などの特殊な事情場合、「短期契約」もしくは「Zwischenmiete」と呼ばれる、居住者が1~2ヵ月家を空けている期間だけ住ませてもらう形態を選ぶのも一つの方法です。

この短期契約は、長期契約に比べて、貸し手側には時間的余裕がない場合が多いので、割と審査がザルになります。また、こちらとしても、万が一最悪な物件だったとしても、1~2ヵ月の契約ならすぐに引っ越せるので、リスクは少ないです。

とりあえず、一度ドイツに体を置かないことには、物件探しはかなり難しいため、一度短期契約でもいいので住居を確保しておき、その期間の間に本腰を入れて住居を探す、というのもアプローチの一つとして有効です。

始期は若干譲歩すべき

例えば、自分が3月1日から入居したいとすると、かなり借主側の競争率が高いです。

なぜなら、恐らく他の住居探しをおこなっている人々も、みんな2月の終わりまでの現行契約をもっており、3月1日ぴったりから始まる契約物件を探すからです。

なので、お勧めは、多少数日分余計に家賃を払うようになっても、始期の2週間くらい前からの契約を探すことです。例えば、3月1日に引っ越したいのなら、2月15日から入れますよ、2月20日から入れますよ、みたいに、ちょっと始期をずらして相手に説明するのです。

そうすると、貸し手としても、2週間分余分に家賃が入ってくるので、割とすんなり入れてくれます。