その土地にはその土地の習慣やルールが必ず存在し、ドイツも例外ではありません。ドイツに来たばかりの日本人が、現地では当たり前の習慣や規則などを知らないのは当然のことです。
だからと言ってそういった習慣を無視していいというわけでは決してなく、ドイツ人の同僚とより良好な関係を築くためにも、郷に入れば郷に従えの教え通り少しでも彼らに合わせようという姿勢が好印象を与えます。
今回の記事では、日本人が知らないドイツの職場あるあるを8つ厳選して紹介します。
同僚間の問題は同僚間で解決する
日本では、例えば他部署の同僚に不満がある場合、本人に直接伝えるのではなく、自分の上司に不満を伝え、その上司から問題となる同僚の上司に共有してもらい、それから本人に改善を促してもらうのが一般的ですが、この方法はドイツでは逆に敬遠されます。
ドイツでは、“不満があれば直接言うべき”という概念があり、仮に上司を通そうとすると、その上司から「なぜ本人に直接言わないのか」と質問される可能性があります。業務で問題が発生したら、まずは当人と建設的に話し合うのが常套手段です。
当人同士ではどうしても解決できない、もしくは労働条件や法的規則によりどうしても解決できない、費用等が発生するといったレベルに達したとき、はじめて上司を巻き込むようにするのが良いとされています。
このように図にすると、明らかにプロセスが少ないことがわかり、全員にとって効率的というメリットがあります。一方のリスクとしては、当人同士の対話が失敗すると両者間の関係に傷が付く可能性があるという点が挙げられます。
飲み会は断ってよしはウソ
ドイツに限らず海外では仕事とプライベートを完全に分ける人が多く、飲み会の付き合いが悪いからといって裏で陰口を言われたり、キャリアップが望めなくなることがないと言われています。日本と比較するとドイツの傾向も確かにそのとおりです。
しかし、だからと言って全ての飲み会を断っても大丈夫というのは極端な考え方です。オーストリアのリクルート会社karriere.atの調査では、512人の被雇用者のうち合計42%の人が仕事後に同僚と飲みに行くことを「あり」と考えています。

ドイツとオーストリアは言語同じで文化も非常に類似しているため、ドイツでも同じような数字が出る可能性は高いです。ドイツの管理職向けの調査では、165人中76人(46%)が「会社のために行く」もしくは「突然の誘いもあり」と回答しています。

こういったデータから言えることは、ドイツ人も付き合いや同僚との関係のために仕事後も飲みに行くという文化や考え方があるということです。イギリスのスターリング大学の1万7千人を対象とした調査結果でも、同僚と定期的に飲み会に行く人の方が、そうでない人に比べて17%所得が高いことが明らかになっています。
世界各国で文化の差はあるものの、海外では飲み会は断っても大丈夫と言い切ってしまうのはよくないのかもしれません。

ドイツでも誘われた飲み会は断らない方がいいのでしょうか?

結局ドイツでも自分次第です。行きたくなければ行く必要はないですが、行くことで深まる仲があるのも事実ですし、ドイツ人も行く人は行くし、断る人は断るので自分のスタイルを持つことの方が大事なのかも
上司や先輩が奢る習慣がない
では、実際に同僚や後輩、もしくは上司と飲みに行ったとき、お勘定は誰がどのくらい払うのものなのでしょうか。実はドイツでは、上司・先輩が必ず奢るという習慣がないため、仮に自分が後輩の立場だとしても、自分の分は自分で払うのが大前提となります。
会計が完全に割り勘になるのか、自分の注文した分のみを払う形になるのかは状況次第です。

自分が上司の立場でもご馳走する必要がないということか…

奢らなければならないというルールはないですよ。もちろん最初の一杯は僕が奢る!といった気前の良さを発揮するのは自由です
Job Descriptionの範囲内の仕事を振る
日本の会社ではジョブローテーションなどを通じてジェネラリストを育成する文化がありますが、ドイツではスペシャリストを育成するのが一般的です。日本では本来の業務の範囲外のタスクを振られても、「自分の成長に繋がる」、 「他の人に迷惑がかけたくない」といった理由からできるだけ振られた仕事は引き受けるという姿勢が評価されますが、ドイツでは就職時の自分の Job Description の内容に固執し、それを突き詰めるという文化です。
ですから、暇そうな人に日本の感覚で様々な種類の仕事を振っても「これは私の仕事ではない」とあっさり断れるなんてことも頻発します。彼らの専門外の仕事を振ることがタブー視されているというわけではありませんが、きっぱり断られる覚悟を持っておいた方が、同僚や部下への不満を軽減できるようになるかもしれません。
残業がマイナス評価に直結
日本では残業をすることが「真面目」や「頑張っている」と評価されることもありますが、ドイツでは真逆の評価となるため注意が必要です。自分のタスクは本来、勤務時間内に終るべき量であるはずで、それが終わらないということは自分の能力が低い、もしくは非効率的な働き方をしていると解釈されます。
残業しなければ終わらないタスク量であれば、早めに上司に相談するなどして、マイナス評価されないように対策が必要になります。
休暇後のお土産は原則不要
有給休暇の日数が豊富で、さらにその有給を余すことなく使うことで有名なドイツですが、休暇中に旅行をしたとしても会社の同僚にお土産を渡す必要はありません。もちろん買っていくことが禁止されているわけではないのですが、「休暇を取って同僚に迷惑をかけたから」という気遣いは不要です。
ドイツ人の考え方としては、自分が休暇を取るときは迷惑をかけるけど、同僚が休暇を取るときは自分が負担するというギブアンドテイク精神が根底にあります。したがって休暇を取って自分だけ旅行を楽しんだからその分のお土産を買うという習慣はないので、責務の念に駆られてお土産を大量に買う必要はありません。

ただし、出張や休暇のたびにお土産を交換し合うような職場もあるわね。一度始めてしまうと延々と続けることになるけど
4日以上の病欠時は医者の確認書を会社に提出する
ドイツでは、被雇用者が4日以上会社を病欠する場合、医者から確認証(Arbeitsunfähigkeitsbescheinigung、労働不能証明書の意)をもらい、会社と健康保険会社に1枚ずつ提出する義務があります。3日までの休みであれば医者の確認証は必要なく、会社への連絡で事は済みます。4日目からは病気で仕事ができない状態であることを公に証明することが求められるので、医者の診察を受け、確認証をもらう必要性が出てくるのです。
もしこの確認証を提出せずに風邪などで4日以上欠席すると、上司から注意を受けたり、最悪のケースでは会社から警告書が突き付けられます。複数回警告を受けても改善されない社員は解雇の対象となり、法的にも解雇するに十分な理由と見なされます。
それだけ上司や会社からの警告というのは重く、病欠確認証の未提出による警告は極力避けたいです。

ちなみに、医師からの確認証は黄色い書類なので「Gelber Schein(黄色い紙)」という愛称で呼ばれることもたまにあります
自分のお祝い事は自分で主催する
日本ではあまり想像がつかないですが、ドイツでは自分のお祝い事は自分で主催し、自分が周囲をもてなします。それは会社でも同じで、誕生日、研修期間の終了、勤務10周年、赤ちゃんが生まれるなどのお祝いごとの際は、自分でケーキを用意して同僚に振る舞うことを心がけると、ドイツの習慣が分かっている人だと一目置かれるでしょう。
もちろん会社の同僚との関係性によってどの程度もてなすかは変わってきます。スーパーで買えるようなお菓子を持っていくだけでも好感は持たれますし、パン屋さんで比較的安価なホールケーキを買っていくのも良しです。
絶対に従わなければならない習慣ではないですが、もしドイツ人の同僚が持ってきたケーキを過去にいただいた記憶があれば、自分の番が来た際も同様に振る舞った方が、自責の念に駆られることもなくなるかもしれません。

これは知らないと見逃してしまいそう…

ケーキやお菓子はキッチンなどの共同スペースに置いて置いて、”Please enjoy! From XXといったメッセージを残しとくと、同僚が一言お祝いを伝えに来てくれます。ただ、中にはサプライズで同僚がお祝いしてくれるようなところもあり、そういった行為は同僚との心の距離をぐっと縮めるのに役立つわね。詳細は職場でドイツ人との距離をぐっと縮める粋な心遣いの記事を参照してね