日本人から見ると、ドイツもアメリカもイギリスも同じ「欧米文化」として十把一絡げにされることが少なくありませんが、実際にはそれぞれ異なった文化を持っており、それは人事制度や就職文化においても同様です。
終身雇用制度が疑問視され始めた日本でも、欧米の転職文化に期待を抱く声が散見されますが、本当に我々は彼らの転職文化を理解しているのでしょうか。ドイツ転職文化について実情を交え解説していきたいと思います。
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ドイツ転職事情
統計的に見て、日本と比較するとドイツは転職にポジティブな考え方ではあるものの、世界の中でとりわけ転職が多い国というわけでもありません。確かに若年層ではキャリア志向が多く、高賃金やステップアップのためにどんどん転職をすすめるような印象ではありますが、実情会社側もこうした従業員の声にこたえることが多く、離職にまで至るケースは実は我々が思うより多くはありません。
例えば、各国の同一雇用主における平均勤続年数を見ると、日本の平均勤続年数は12.1年であるのに対しドイツは10.5年と、1.6年しか違いません。生涯の労働年数が40年だとすると、日本、ドイツの生涯平均転職回数は平均して日本3.3回、ドイツ3.8回となります。
同表からはアメリカ、韓国は平均勤続年数が5年前後とその他OECD諸国に比べ顕著に短いものの、むしろイタリア等は日本よりも平均勤続年数が長く、必ずしも「欧米諸国は転職回数が多い」とは言えないことが読み取れます。
ドイツ人の転職回数の中でマジョリティを占めるのはやはり生涯転職回数「1~5回」という層で、6回以上の転職を経験した人の割合は10%に満たないということが分かります。
ドイツ人の平均的な生涯転職回数は3.8回!10回以上余裕で転職するのかと思っていたので、これは意外
周りを見渡しても、多くて転職回数3回~4回くらいに落ち着く印象ね。ドイツ人は見切りをつけるときはスパッと早いけど、なんだかんだ文句を言いながらも同じ会社に長く居続けるわ
面白いことに日本・韓国はドイツに比べ転職志向の若年層が多い結果を示していることが分かります。「才能を活かすために積極的に転職したい」という層はドイツでわずか5.1%なのに対し、日本では10.1%と二倍近く多い結果となり、転職市場の実情と若年層の希望との乖離を示しています。
これも意外な結果。日本人はもっと終身雇用寄りの考え方で、ドイツ人はもっと転職寄りの考えかと思ってたけど
諸説あるけど、やはりドイツでは労働者の権利が強いというのが影響しているかもね。一度無期限労働契約書を結ぶと会社は簡単には労働者をクビにできないし、職場の不満や賃金の低さを堂々と交渉できる立場になれるわ。そうなるとわざわざリスクを冒して会社を辞める理由もなくなるかもね
転職の理由
転職頻度や勤続年数では日本とドイツとではあまり違いが見られませんでしたが、実際に転職した人の動機・理由を読み解くと、日本・ドイツ間の転職価値観の相違が見受けられます。
日本人にとって転職に至る最大の理由は「上司との軋轢」と、職場の人間関係を引き合いに出すケースが最も多い結果となっています。次いで、「キャリアアップ」「良い給与水準を求めて」「仕事のつまらなさ」などが続く形で、「自己評価の低さ」はあまり転職の理由として数えられていませんでした。
対してドイツ人の場合、転職理由の一位は「良い給与水準を求めて」で、二位には日本人にとってはあまり重要な理由ではなかった「自己評価の低さ」がランクインする形となり、上司との軋轢に至っては全体の9位と、ドイツ人にとってそこまで重要なファクターでないことが読み取れます。
ここから、現実問題で転職に行動を移すドイツ人の数はそこまで多くないものの、いざ移すとなったら「会社からの評価」「賃金アップ」という、自分のスキルを気にした転職活動を行う割合が多いのがドイツ人であることが分かります。
こうした「給与への不満」といった即物的な転職理由は、周囲との調和を重んじる日本人にとってはあまり耳慣れないものなのではないでしょうか。ドイツでは「会社からの評価」=「賃金水準」に反映されるケースが多く、特に自身のスキルに自信のあるドイツ人にとって、市場平均よりも安い賃金であるなどは耐え難い事実として転職行動に駆り立てます。
確かに日本の就職面接で「賃金をもっと欲しいので転職しました」とは言いにくいもんね
給与水準は、会社からの評価を客観的に図るうえでの重要な指標とも言えるわね。これに満足いっていない、というのはドイツ人にとって立派な転職理由の一つよ。ちなみに、ドイツで就職した日本人がどういう理由で転職しがちなのかは過去記事の「なぜ日本人はドイツ企業を離職しやすいのか?」を参照してね


