ドイツでの就職を考えてる人にとって気になるのは、面接の仕方です。日本語での面接でも不安や緊張が伴うのに、それを身近ではない環境で、さらにドイツ語でこなさなければならないとなると、難易度はさらに上がるでしょう。今回の記事では、ドイツで面接をするときの自己紹介の重要なポイントとドイツ語の例文を紹介します。入念に準備をして、内定獲得の可能性を高めましょう。

ドイツの一般的な面接の流れ

まずはドイツの面接の一般的な流れを見てみましょう。下の図をご覧ください。

面接時間は平均的に45分から60分です。上記は45分のケースですが、長くなる場合は質問の時間が相応して増えると想定しておきましょう。「締め」で話される内容は、次のステップの案内などです。結果や次の面接の日時がどのように案内されるか、質問をしたいときに誰に連絡すればいいかなどが知らされます。

挨拶(順番と握手)

舞台はドイツとなりますので、面接室にノックして入り、イスの横に立って名乗るという日本の典型的な面接シーンとは異なる状況を迎えることも想定しておきましょう。面接官が応募者の前にやってきて、面接室まで案内してくれることもありますので、最初の挨拶の時の重要なポイントを確認しておきます。

順番が大事
挨拶の順番に気を付けましょう。ドイツでも社会人の常識としてあるのが、「礼儀より階層優先(Hierarchie vor Höflichkeit)」という概念です。つまり、面接官が複数いる場合、最も役職が高い人を常に優先して挨拶します。レディーファーストが基本のドイツでも、面接では性別ではなく役職順にプライオリティーを置いて会話を進めます。以下の優先順位を参考にしてください。

  1. 最高役職
  2. 年功序列
  3. 女性

最も役職が高いであろう人が最優先で、その次に明らかに年齢が高い人、そして同世代の人が複数いる場合は、女性を優先します。

握手が大事
日本とは異なりドイツでは挨拶の時に握手をします(2020年9月現在、COVID-19の影響で握手を避ける場合もあり)。臆することなくしっかり握手をし、短く自己紹介しましょう。当たり前で簡単なことのようですが、海外経験が少ない方は意外とミスをしてしまいますので、念のため以下のチェック項目を参考にして下さい。

  • 握手の時に立ち上がる
  • フルネームを名乗る
  • 最高役職の人から握手する
  • 握手の際に相手の目を見る
  • 適度な強さでしっかり握る
  • 5秒未満に手を放す

また、握手の時の挨拶に使える例文を紹介します。

„Guten Tag Herr Müller, mein Name ist xxx yyy. Schön Sie persönlich kennenzulernen.”

相手の名前を言うことで、名前をしっかり聞き取れたか確認することができます。最初の段階できちんと確認しておく方が、後で聞き返すよりも好印象に繋がりやすいです。

自己紹介・自己PRの長さ

結論から述べると、3分以内にまとめるように心がけましょう。最長でも5分、それ以上の自己紹介を求められるのはレアケースです。もし少し長くなりそうであれば、次の質問を投げてみるのが得策です。

„Nun habe ich ein paar Punkte genannt. Gibt es ein Thema das Sie gerne vertiefen würden?“

このように質問することで、相手がフォーカスしたい内容が明確になり、お互いの時間短縮になります。

自己紹介・自己PRの内容

日本では「自己紹介をお願いします」「自己PRをお願いします」という質問をされますが、ドイツでも同様に「Erzählen Sie doch mal etwas über sich」と、面接の頭に必ず聞かれます。
この質問の回答としては、下記の順にコンパクトに自分PRをしましょう。日常の会話ではなく面接ですので、自分を称賛するのは自然です。企業側が、応募者を採用したいと納得する必要があるので、謙虚さを意識しすぎるより、しっかりとアピールすることを意識しなければなりません。

職業訓練はドイツ特有のAusbildungのことです。応募ポストと関係性のあるAusbildungの経験を持っている人はその経験を伝えましょう。また、この項目はあくまでスタンダードなもので、時間ないときは学歴・職歴の部分に重点を置き、趣味は省くのもよいでしょう。
それでは、実際にどのように自己PRが求められるか、ドイツ語の例文を紹介します。

  • Erzählen Sie doch bitte etwas über sich.
  • Jetzt würden wir Sie gerne kennenlernen. Warum sollten wir Sie einstellen? Bitte stellen Sie sich doch noch einmal kurz vor und erklären uns: Warum möchten Sie diesen Job?

面接官が聞きたいこと

自身の自己PRを準備する前に、ドイツ人面接官が自己PRで見極めたいポイントを把握しておきましょう。

  • 自己表現ができるかどうか
    経歴の中で大事なところと不要なところをロジカルに選別できるか否か
  • 履歴書の内容に矛盾や嘘偽りがないかの確認
  • 応募のポジションが適正かどうか
    ロジカルに考えた上でこのポジションに就きたい、貢献できると考えたのか
    数多く応募したうちの一社なのか
  • 会社・チームメンバーに溶け込めるかどうか

つまり、履歴書に書いてあることを順に説明するのではなく、ポイントを絞って話しましょう。自分が応募するポストと関係のあるところに焦点を当てます。なぜ自身がこのポストに最適な人物なのか、履歴書には書ききれない部分を追加します。

自己PRの全体構成

ドイツ流の 3-Schritte-Formel(3段式)を使うのが効果的です。3段式というのは、自己PRの内容を「Ich bin – ich kann – ich will」の3ステップに分けて構築することです。以下が参考例です。
Ich bin:名前、年齢、及び職歴等の紹介

„Ich bin Hanako Yamada, 23 Jahre alt und werde in diesem Semester meinen Bachelor an der Universität Meiji erlangen. Das Thema meiner Bachelorarbeit lautet: —“
「私の名前は山田花子です。現在23歳で、今年明治大学を卒業します。私の卒論のテーマが・・・」

Ich kann:職業訓練・職歴・能力のアピール

„Als Key Account Manager war ich in den vergangenen drei Jahren dafür verantwortlich neue Kunden im Bereich der Japanischen Food Industrie zu finden und diese nachhaltig zu betreuen. Dabei konnte ich nicht nur die Umsätze um rund drei Millionen EUR steigern sondern auch einige Kontakten im Sinne des Kundenbeziehungsmanagement vertiefen, was Sie für die ausgeschriebenen Position auch interessieren dürften…“
「直近の3年間、キーアカウントマネージャーとして日本の食品業界で新規顧客開拓と既存顧客応対を担当しておりました。その際、年間売上高を300万ユーロ拡大できたほか、御社の応募ポストでも重視されるカスタマーサービスでも、いくつか改善することができました」

Ich will:まとめ(モチベーション+自身がもたらせる付加価値)

„… mit diesen Erfahrungen möchte ich nun gerne dazu beitragen, das Business weiterzuentwickeln. Meine Stärken passen gut zu Ihrer Marke und den Herausforderungen der Position, die ich gerne so und so einsetzen würde…“
「この経験を活かして事業拡大に貢献したいと存じています。私の強みは、御社のマーケットおよび求人ポストの課題において…のように適合していると考えます」

Ich-kannテクニック

上述した通り、自己PRは時間が限られているため、いかにロジカルに会社側が欲しい情報をまとめて話せるかが重要です。コンパクトさを意識しつつ、大事な情報をもらさないように、「Ich-kann」「Ich-will」の部分で更なるテクニックを使うことも効果的です。
功績の説明の仕方は „Die Google Formel” を使う
Die Google Formelとは、「ZをしたことでYと比較してXを達成(Ich habe X erreicht, gemessen an Y, indem ich Z getan habe)」という方程式にあてはめて構成を作ることです。

Ich war verantwortlich für die Vertragsverhandlungen mit dem größten Zulieferer.
(大口の下請け業者との契約交渉担当でした)

この文章を方程式にあてはめて書き換えると次のようになります。

Ich habe eine 15% Einsparung in den Vertragsverhandlungen mit dem größten Zulieferer erreicht, indem ich den Auftrag erneut ausgeschrieben und den gesamten Ausschreibungsprozess mit 8 Unternehmen eigenverantwortlich gemanaged habe.
計8社との契約書を見直し、自身で契約内容を修正したことで、大口の下請け業者との契約交渉で15%コスト削減を達しました。

Ich-willテクニック

自己PRの締めくくりとして、説明してきた自分の能力や経歴を活かして、どのように貢献したいか、具体的に伝える必要があります。以下に例文を用意しました。

Anhand der Stellenanzeige für die Position des Operation Managers erkenne ich, dass Sie auf der Suche nach einem Kandidaten sind, der die Top 5 Zulieferer betreut und Prozesse optimiert. Ich bringe mich bei Ihnen nicht nur mit meiner dreijährigen Berufserfahrung aus der Automobilbranche ein. Ich kenne viele Ihrer Herausforderungen im Umgang mit Zulieferern aus meiner letzten Position und weiß daher, wie sich diese lösen lassen. Ich bin sicher, dass ich auch in der Rolle des Operation Managers mit Ihren Top 5 Zulieferern signifikante Einsparpotenziale identifizieren und realisieren kann.
オペレーションマネージャーの求人にありましたが、プロセスを最適化できる5大下請け業者の担当者を探していると存じます。御社では自動車産業での3年間の経験を活かすだけでなく、前職の仕事内容からも下請け業者とのやり取りに際し生じる課題とその解決方法を活かし、逆にどうしてできないのかなどのファンダメンタル問題も理解しています。

NGワード集/タブー

最後に、日本人がつい発言してしまいガチなNGワードとタブーを紹介します。

  • Ich zeichne mich durch hohes Engagement / Teamgeist / Lernwillen aus. (高いコミットメント/チームプレー/学習意欲で違いを見せたい)
  • Mein Chef hat mein Talent nicht erkannt.(上司が自分の能力を理解してくれなかった)

上記のような抽象的な「頑張り」を強調するのではなく、具体的な事例を用いて企業への貢献できるところをアピールする必要があります。また、退職理由として上司や同僚を悪く言うのも避けるのが得策です。

続いて、避けた方がいい自分の言葉を守るために使う前置きの文句についてです。

  • „Ich möchte ja nicht unhöflich erscheinen, aber…“(失礼なことを言いたくはないのですが…)
  • „Ich will mich nicht beschweren, aber…“(不満を言いたいわけではないのですが…)
  • „Also, ich will ja nicht prahlen, aber…“(自慢をするつもりではないのですが…)

このように自分の口から発する言葉を予め守るようなフレーズを使うすぎると、面接後の賢さの印象が落ちるという研究データが、イースタンワシントン大学の心理学者により発表されています。ロジックとしては、「コーヒーのことを考えないでください」と言われて、コーヒーのことを一切想像しないのが不可能だということです。発言の内容が事実であれば、守りのフレーズを使う必要はないので、できるだけ省きましょう。

最後に

繰り返すようですが、ドイツの面接で重要なのは「ロジカル」な選択と説明です。時間の無駄も嫌われますので、自分の経歴の中でも厳しく取捨選択して、アピールしたいポイントに時間を割くようにしましょう。また、今回はドイツ語での例文を紹介しましたが、英語で面接をする場合もノウハウや構成で大事なところは同じですので、紹介したポイントを意識して面接に臨みましょう。