日本とは異なる就活文化ゆえか、せっかくドイツでの就職を志して応募を繰り返しても、企業からなかなか内定がもらえないというパターンが少なくありません。

多くの場合、以下のような根本的な過ちをおかしている可能性があります。今回は、日本人がおかしがちなドイツ就職活動失敗の原因をまとめていきます。

ドイツでの就職活動が上手くいかない原因を探る

日本人のドイツでの就職活動が上手くいかない場合、大きく分けて以下の2つのパターンが想定されます。

  1. 応募に対するレスポンスがない(書類選考による不合格)
  2. 面接まではいくものの、面接で不合格となる

「応募に対するレスポンスがない」場合、そもそも応募要件を満たしていないケースが考えられます。具体的には、以下に挙げるように、語学要件あるいは過去の職歴などです。特に応募先が大企業の場合、採用担当者のもとには多くの応募者の履歴書が届くため、それらをある程度機械的に篩い分けていく傾向にあり、そもそも要件を満たしていない場合には歯牙にもかけられないパターンが少なくありません。

転職ペンギン

申し込んで1~2日でお断りのメールが来ることもあったけど、この場合は99%、人事まで履歴書が届かず、機械的に排除されたパターンだね。通常、人事からは応募後平均20日前後で返答がくるとのこと

フェリ

Karrierebibelによれば、応募後に人事部からなしのつぶてに終わる可能性が23.5%だとか。なにかしらリアクションはしてほしいところよね。ちなみに、企業が機械的に足切りを行う際の条件には以下のようなものがあるわ

  • ドイツ語のレベル
  • 英語のレベル
  • 最終学歴
  • ドイツで就労ビザを持っているか
  • 過去の同一業種での勤続年数
  • 過去の社会人としての勤続年数
  • カバーレターが添付されていない
  • 希望仕事開始日が遅すぎる
  • 年齢(ただし、表立って年齢を理由にするところは少ない)

それとは逆に、「面接まではいくものの、面接で落とされる」場合、面接自体に不慣れであったり、受け答え(特に他言語による)に問題があると考えられます。逆に言えば、人事担当者が時間を割いて是非候補者に会いたいという意図で行うのが面接であり、ここまでこぎつけた時点で採用のチャンスは少なからずあるはずで、今後面接での受け答えをしっかりと身に着ければ改善の余地が大いにあります。

応募に対するレスポンスがないケース

上述の通り、応募に対するレスポンスがない場合、あるいは応募の時点でお断りの連絡を受けることが多い場合、そもそもドイツ市場で求められる応募条件を満たしていない可能性が高いです。特に、リクルーターなどを通さず、サイト上などから応募する場合、企業は膨大な量の応募者をさばくために、数値的な足切りラインや条件を設け、それに達していない応募者を機械的に切り落としていきます。

特に日本人が引っ掛かりやすい足切り要件に関して、以下に紹介していきます。

語学要件を満たしていない

日本人がドイツでの就職活動に失敗する理由の最たるものの一つに、語学要件を満たしていないことが挙げられます。以前のコラム(ドイツ就職で必要な語学要件)でも紹介しているように、ドイツでの就職を目指すのであれば、最低でも英語&ドイツ語ともにB2レベル、願わくばC1レベル(ビジネスレベル)水準に達していることが理想的です。

例えば以下のグラフは、日本からドイツに転職した応募者が転職時にどの程度の語学力を満たしていたかを示しています。

出典:Career Management ドイツ転職レポート 2020

グラフが示す通り、英語に関しては応募者の8割が、ドイツ語に関しては応募者の約半数が、日常会話レベル以上でのコミュニケーションが可能なレベルに達しています。

逆に、この水準を満たしていない場合、書類選考に漏れる大きな原因の一つになってきます。また書類選考だけでなく、面接時の受け答えの際には流暢な英語・ドイツ語力が直に評価されるため、資格を持っているだけでは安心できません。

転職ペンギン

ドイツ企業であれば、基本「ドイツ語C1」「英語C1」レベルはないと厳しいってきいたけど

フェリ

ドイツ企業はネイティブ並みの英語・ドイツ語力が求められることが多いわね。対して、ドイツに拠点を持つ日系企業などでは、英語はB2以上、ドイツ語に関してはマストではない、という条件を設けている企業が多いので、語学で引っかかるようであればこちらがおススメよ

【対策】
講じられる対策としては、地道に自身の語学力を身に着け、Goetheなどの公的な機関の発行する証明書を手に入れるほかにありません。また、ドイツに展開している外資系企業(例:在独日系企業)等、応募の際の語学の要件が現地企業と比べて比較的緩い会社にアプローチしてみるのも効果的です。

職歴・専門スキルが不足している

ドイツの仕事社会では専門知識によってキャリアが構築されていくため、特定の分野におけるスキルや実績がないと、書類選考の時点で弾かれてしまうことが少なくありません(逆に言えば、スキルと経験さえあれば、年齢にはあまり関係なく採用される可能性が高い)。

日本からドイツに転職する応募者の、日本における平均勤続年数は3.8年で、これを下回ると中々職歴ありと見なされないケースがあります。

出典:Career Management ドイツ転職レポート 2020

また過去に実績やスキルがある場合でも、日本からドイツに転職する場合、過去の職歴やスキルがリセットされてしまい、その点でミスマッチが生じてしまうケースが多々あります。

例えば「日本で10年法人営業を勤めた」というスキルは、ドイツでも同じく法人営業ができるとはなりません。なぜなら、ドイツにおける法人営業のターゲットはドイツ顧客で、そのためにはドイツ語に知悉した人物が適任だからです。

転職ペンギン

日本での職歴がドイツ企業からは正当に評価されないという点は「日本からドイツに就職・転職した際の年収は?」の記事で学んだね!

フェリ

ドイツでの就職を考えるとき、語学要件はアドバンテージではなく単なる「スタート地点に立つ手目の必要条件」であることを押さえておきましょう!外国語に堪能であること、に加えてもう一つ得能があると内定の確率がぐんとあがります

【対策】
こうした、自身の過去の職歴やスキルと申し込みたい企業とのギャップを避けるには、自身の経歴を活かせる業界、職種をしっかりと見定めることが重要です。

例えば、自身の日系企業への営業の経歴を活かしたいのであれば、ドイツ企業の中で日本市場を抱えている業界に絞って就職活動する必要がありますし、逆に自身のドイツ語のスキルを活かしたいのであれば、ドイツ市場を拡大したい在独日系企業などが適しています。

ドイツでの応募に関する情報不足

ドイツにあっては日本と根本的に仕事のあり方や捉え方が異なり、それゆえ応募に関する不文律も、知っていないと対応できないものが多く存在します。具体的には、応募する会社の探し方から始まり、カバーレター(Anschreiben)の存在や、履歴書の書き方、応募の際の書類や志望動機の書き方などについてです。

こうしたドイツ社会に根差した部分に対し、日本のやり方を直接コピー&ペーストしようとしてしまうと、やはりドイツの採用担当者側から良い印象を受けず、選考時点で弾かれるケースが多くなります。

ドイツと日本の就活文化を鑑みて大きく異なるのは、ドイツの場合、自分から積極的に就職活動を行わないと、まったく話が始まらないどころか何一つ情報が入ってこないという点です。そのため、日本の新卒文化に慣れていて、就職相談会などを期待していても、中々チャンスは回ってきません。

転職ペンギン

カバーレターは面倒だと送らない人もいるんだけど、それって結構マイナスなんだよね?

フェリ

もちろん、それが原因で足切りをする企業も少なくないわ。カバーレターと履歴書の書き方に関しては、それぞれ過去記事の「ドイツ語のカバーレター(Anschreiben)の書き方」と「ドイツ語での履歴書の書き方と注意点」を参照してね

【対策】
講じられる対策の一つは、履歴書やカバーレターを作成したら、まずはドイツ人の友人などに添削してもらうことです。彼らの目線からダメ出しをしてもらえれば、自身の応募書類の不備などを改善していけます。

また、ドイツ人の友人に頼みづらい場合、大学の就職課や、転職エージェントなどを通じ、履歴書やカバーレターに対する助言をもらうことも得策です。

面接まではいくものの、面接で落とされる

ドイツで応募面接に呼ばれるということは、かなりの確率で企業側も興味を示していることに値します。実際に、Karrierbibleによると、面接後に86.4%の応募者が、直接なんらかのフィードバックを受けたと回答しており、内定をもらえるかどうかは別として、書類応募よりもかなり丁重に扱われていることが分かるでしょう。以下に、日本人が面接で落とされやすい理由と、その対処法について紹介していきます。

面接での受け答えに慣れていない

上にあげた3つは、そもそも書類選考に通らない場合に考えうる失敗の理由です。一方で、書類選考までは通過するものの、面接をパスしないという場合、以下のような理由が考えられます。

  • ドイツ語(英語)での対応に難あり
  • 理由がはっきりしない(ドイツ人は明瞭な回答を好む)
  • 会社の研究をしていない

特に日本での就活の場合、学生時代頑張ったことなどが評価ポイントになりますが、ドイツでの就職の場合、単純明快に「過去の経験が、応募ポジションに活かせるか」に焦点が置かれます。

そのため自己PRの場などで的外れな部分をアピールしてしまうと、人事担当者にとっても応募者のどんなところが採用後に活かせるのか不明瞭で、採点のしようがなくなります。

また面接時には、必ず会社の研究をしていくことが重要です。売上高、売上の構成、問題点などを自分なりに分析し、それら会社の強み・弱味と、自身の過去の経験がどのように関係してくるのかを、理論的に説明する必要があります。

重要なのは「数ある応募者の中で、なぜ貴方を採用するのか」というところです。そのため、日本の就活のように謙虚におこなうよりも、積極的に自身の成果などをアピールしていくべきでしょう。

転職ペンギン

やっぱり、就活で何度もお断りされると気分が滅入るよね。。

フェリ

失敗は成功の元!日本での転職活動と同様、ドイツでの転職活動でも経験がものをいう部分があります。一回、二回の面接失敗から学ぶところも多く、次回の糧とすることが重要ですね

将来のビジョン・動機が不明瞭

最後に、ドイツの採用担当者にとって重要なのが「この応募者は、いつまでドイツにいるつもりなのだろう」という点です。

国籍などを理由に採用候補から外すことはドイツでは原則タブーですが、実際問題、外国籍応募者の採用は様々な理由から二の足を踏むケースが少なくありません。具体的には、以下のような部分がポイントです。

  • 将来会社を辞め、自国に帰ってしまうリスクが高い
  • 意思疎通に問題が生じるケースがある

そのため、ドイツの採用担当者側としては、「なぜドイツに残るのか」のはっきりした理由がないと、最後の一歩(内定)に行きつかないことがあります。

採用担当者側が公然とプライベートの話をすることはありませんが、それでも演繹するために、間接的にさぐりを入れてくること(パートナーの有無、両親の意向、将来のビジョン等)はあります。

一般的に冷たいイメージを持たれるドイツ人ですが、やはり同じ人間で、最後の部分は人情的なニュアンスを加味するケースがあり、そうした部分をいかに説得できるかが、最後に内定を勝ち取れるか否かの重要なキーポイントになってきます。