ドイツ語で履歴書はLebenslaufと呼ばれ、その他英語圏のようにCVという呼称でも一般的に通用します。就職活動はもちろん、アルバイトの募集、大学受験、ゼミの申し込みや交換留学など、あらゆる場面においてドイツでは履歴書の提出が求められてきます。

英語の履歴書でも通用するケースは多々ありますが、それでもやはり、求められている職種がドイツ語メインのものなどであれば、ドイツ語で履歴書を提出するほうが、会社側にも好印象を与えられます。

ただ、このドイツ語での履歴書の書き方ですが、単に言語(ドイツ語)の問題だけでなく、盛り込まなくてはいけない内容、写真の撮り方やレイアウトなど、日本の履歴書と比較して異なる部分が多く見受けられます。

今回は、そうした日本とドイツの履歴書文化の違いにスポットライトをあて、正しいドイツ向け履歴書の書き方について解説をしていきたいと思います。

フォーマット

履歴書を作成するにあたっては、ワードファイルを使用して自作する、というのがドイツでは一般的なやり方です。その後、念のため、レイアウトが崩れていないか確認する意味でも、提出時にPDF化してチェックしてみたり、あるいはPDFバージョンをそのまま送付する、という手段も多く用いられます。

フォーマット、レイアウトに関しては定まったものが存在しているわけではありませんが、やはり「テンプレート」のようなものは存在し、実際にLebenslauf Musterなどで検索をかけてみると、色々なサイトで履歴書サンプルの比較を行うことが可能です。

ただし、ウェブ上に出回っているサンプルは、あくまでドイツ人向けの履歴書の書き方ですので、日本の学歴や職歴を盛り込む場合、一工夫必要になってきます。そういった違いを踏まえ、以下、ドイツ向け履歴書の中に盛り込まなくてはいけない内容について詳しく説明していきたいと思います。

内容と構成

大まかな構成に関しては、以下に記載する内容をもとにして作成していただければ、大方的外れになることはありません。

なお、本稿の最後にテンプレートを添付していますので、具体例が知りたい方はそちらを参考にしてください。

写真

ドイツでは、履歴書用写真の映り方は2種類あります。正面から撮るパターン、および斜めから撮るパターンです。例えば、以下のような斜めに映る写真のパターンは日本では見慣れないかも知れませんが、ドイツでフォトスタジオに行き、特になにも指定しないとこのように撮られることもあります。

いずれの場合も、スーツなどオフィシャルな格好での撮影が基本で、フォトスタジオなどであれば、10ユーロ前後で撮影することが可能です。最近のドイツ人就活生の傾向を見ていると、斜め撮影の割合が高いように見えますが、正面撮影でも問題ありません。

個人情報

ドイツの履歴書は、応募者の紹介から始まることが通例です。応募者の個人情報には、最低でも以下の項目を盛り込まなくてはいけません。

  • 名前
  • メールアドレス
  • 電話番号
  • 住所
  • 国籍
  • 生年月日&出生地

具体的には、以下のようなレイアウトになります。

Name: Taro Suzuki
E-Mail: Taro.co.sample.jp
Tel.:+49 123 456 78999
Addresse: Abcstr. 1, [郵便番号], Berlin, Deutschland
Staatsangehörigkeit: Japan
Geboren am 01/01/1980 in Tokio

特に、ドイツの会社の場合、CV送付後、メールではなく直接電話で面接の日時の打ち合わせなどを行われることも多いので、日中連絡のつく電話番号を登録しておく必要があります。

学歴

続いて学歴の紹介をおこないます。インターネットで検索をかかれば色々なレイアウトが見つかりますが、特に所定の形式が存在するわけではなく、学部や大学名など、必要最低限の情報を盛り込んでさえいれば、ある程度どのようなレイアウトでも許容されます。一般的には、以下のような情報が盛り込まれていれば問題ありません。

  • 学位(Bachelor, Master等)
  • 学部名
  • 大学名
  • 大学の場所
  • 大学の成績
  • 在学期間
  • 卒論のトピック

ドイツ向けに学歴を記載するときに注意しなくてはいけない点が2点あります。

1つ目は、時系列が上から「現在」→「過去」の構成になる点です。日本語の履歴書の場合、

2000年 〇〇高校卒業
2004年 〇〇大学卒業

のように、下に行けば行くほど情報が新しくなりますが、ドイツの場合全く逆になる点に注意しなくてはいけません。レイアウトとしては以下のような形になります。

seit 04/2010
Masterstudium der Informatik, Tokio
University of Tokyo
Vertiefungen: Primzahlsatz

04/2006 – 03/2010
Bachelorstudium der Informatik, Tokio
University of Tokyo, Tokio
 Abschlussnote 3.43 (in GPA)
 Vertiefungen: Primzahlsatz
 Bachelorarbeit: “Computer security of Japanese companies”

04/2003 – 03/2006
High School
Daiichi high-school, Tokio
Hochschulzugangsberechtigung

上述の時系列の点に加え、もう一つ注意しなくてはいけない点が、大学の成績の記載方法です。ドイツの大学の成績は「1」が最高で、数字が増えるにつれ悪い成績と見なされていきます。

アメリカなどで一般的な大学の成績評価であるGPA方式ではその逆で、数字が高くなれば成績が良いとみなされるので、成績を記載する場合は、具体的に「なんの」成績評価指標を用いたのかを明記する必要があります。

日本の大学の中には、GPA換算を行わず、独自の算定方式を用いているところも少なくありませんので、その場合、注意書きにそのような旨を記載しておくと良いでしょう。

ドイツ就活時においても学歴フィルターは存在しますが、主に「大学名」ではなく「大学在籍時の成績」や「受講した教科」でふるいにかけられます。例えば、ドイツの某有名メーカーなどは、本採用はおろかインターンにおいてさえも、応募者に対し「大学時の成績が2.0以上であること(GPA換算で3.0以上)」「大学で会計学を専門に学び、かつその履修分野での総合成績が1.7以上であること(GPA換算で3.3以上)」といった要件を設定しています。
引用元:ドイツ就職時に有利な日本の学歴は?学歴フィルターは存在しない?

職歴

学歴同様、職歴に関しても定まったフォーマットが存在するわけではありませんが、最低限、以下のような情報が盛り込まれていることが望ましいです。

  • 職種
  • 業種
  • 会社名
  • 勤務地
  • 仕事上の成果など

特に、ドイツで名前の知られている日系企業はそんなに多くないため、前職が日系企業で、かつ相手側に会社の規模や情報が伝わりにくそうな場合は、企業HPのリンク(英語)を貼っておくと良いとされています。

また、ドイツの場合、「Praktikum」という、英語ではインターンシップに該当するような、いわゆる「就業体験」のような制度が存在します。これらは、半年~1年規模かかり、かつ給料も多かれ少なかれ発生するため、職歴として書き加えることが可能です。

一方で、日本のインターンシップの場合、日本の企業訪問的な色合いの強く無給のものが多いため、一般的にこういったものは職歴の欄には書き加えないほうが無難でしょう。

資格、語学など

Excel、Word、PowerPointのような基礎PC知識のほか、外国語知識なども書かれることが望ましいです。レイアウトに関しては以下のような形になります。

Sprachen
Deutsch: Fließend (TestDaf4×4/C1)
Englisch: Fließend (TOEFL107/C1)
Chinesisch: Ausbaufähig (Spracheshule/ A1)
Japanisch: Muttersprache

EDV-Kenntnisse
Word, Excel, PowerPoint: sicherer Umgang

上記の例に登場する「C1」や「A1」という指標は、CEFRという言語レベルを測るための欧州統一指標で、就活や大学応募などの場面で度々用いられます。C2レベルが最高で、以下、C1、B2、B1、A2、A1といった順に下がっていきます。一般的にB2~C1レベルあれば、最低限ビジネスの場面で活躍できるとされています。

具体的に自分の持つ点数がCEFR指標でどの程度の実力かは、British Councilのような機関のHPを参照すると、点数の区切りが記されています。

ただし、算定機関や国によって、どのあたりの点数をどれくらいのレベルと見なすかはまちまちです。

また、語学試験の場合、一般的に取得から2年以内のものが有効と言われていますが、CVの場面などでそこまで厳格にこの2年ルールが求められることはそう多くありません。

英語が応募者に対する「アドバンテージ」であるならば、ドイツ語はいわば充足しておかねばならない「必要最低知識」と見なされることが多々あります。理系の研究所など、多国籍グループの職場などでは英語のみでも応募が認められるケースもありますが、基本的に、英語同様、ビジネスの場面で通用するように、B2~C1レベルのドイツ語力があることが望ましいでしょう。
引用元:ドイツ就職で求められる語学力(ドイツ語・英語)について

趣味、アルバイト、ボランティア等

その他、オプションとして趣味(Interessen)、アルバイト(Minijob)、ボランティア(Soziales Engagement)等の活動も、どれだけプラス評価になるかは会社によりけりですが、書いておいたほうがよいとされています。

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サンプル

最後に、ドイツ語の履歴書サンプルを添付します。ドイツの会社にドイツ語で応募する場合のテンプレートとして是非参考にしてください。

Lebenslauf テンプレート

また、ドイツ就職活動に際して履歴書と同じく必要となる書類、カバーレターのドイツ語での書き方に関しては、以下のコラムを参照ください。