多言語能力が求められるのは、何も日本における就活だけではありません。ここドイツにおける就職活動でも、語学力は高く評価され、採用面接の査定に大きな影響を及ぼします。
本稿では ドイツで就職する際に具体的に求められる語学力について詳しく解説をおこないます。
ドイツ就活で求められる語学力
ドイツで就職する場合、感覚的にドイツ語が求められてきそうなのは想像がつきやすいと思います。
ドイツの中でも、特に製造業や古い体質の企業、また中堅都市規模以下の企業の社内の会議やメールのやり取りはドイツ語で行われることが多く、そうした人との社内の基礎コミュニケーションのためにはドイツ語が不可欠となります。
一方で、ドイツの産業構成を見れば明らかなように、ドイツの経済は貿易や他国とのビジネスによって回っています。そのため、多くの国際的な企業では「英語」をその要件として課している企業が非常に多いことに注意が必要です。
つまりドイツで就職する際には「ドイツ語」「英語」の双方を話せることが求められる環境が多いというわけです。
英語
ドイツ全体の求人において、20~25%が英語を必要としています。ビジネス英語の話せる人材の給与は+20~30%上乗せになるとされており、ドイツ企業の中でも花形の海外営業(北米、北欧、等)や海外マーケティング、購買などの部署に配置される可能性が高まります。
もっとも、ドイツ人の英語力は世界の英語力調査でも上位常連であり、大卒のサラリーマンであればB2~C1レベルの英語がこなせるレベルにあり、「英語が話せること」の価値は日本よりも低いことに注意しなくてはいけません。
ドイツの求人における「ビジネス英語」の基準はB2~C1が目安となります。このB2~C1という指標は、主にIELTSやTOEFLといったスピーキングやライティングを交えた英語試験によって算定されることが多く、リーディング・リスニングだけのTOEICは参考と見なされないことが多いです。
| スコア種類 | B1 | B2 | C1(流暢) |
|---|---|---|---|
| IELTS | 4.0〜5.0 | 5.5〜6.5 | 7.0〜8.0 |
| TOEFL iBT | 42〜71 | 72〜94 | 95〜 |
| Cambridge Scale | 140〜159 | 160〜179 | 180〜200 |
| TOEIC(参考) | 550〜784 | 785〜944 | 945〜 |
| レベル | 主なできること |
|---|---|
| C1以上 |
|
| B1~B2 |
|
| A1~A2 |
|
業種や職種によっては英語を求められることが多いものと少ないものとがあり、海外との折衝を要する分野ではその割合は多く、地元の小売業や倉庫業、介護施設などでは英語求人の割合は低くなります。日本人がドイツで就職をする場合、貿易やIT、商社業務などに携わることが多く、その場合は「高確率」で英語が求められると想定していたほうが良いかもしれません。
ドイツ語
英語求人の割合が20~25%と記載しましたが、裏を返せば残りの75%~80%は「ドイツ語求人」ということになります。
ドイツ語求人において、ドイツ語が話せることはアドバンテージではなく、必要最低知識です。そのためドイツ語が話せてようやく応募資格を得る、つまりスタート地点に立てるということに注意が必要です。
ドイツ語の知識の証明のためには、以下のような試験が用いられることとなります。英語同様、こちらもB2~C1レベルのドイツ語がビジネスで必要とされるボーダーラインとされており、ドイツ語求人の場合はそれらの基準を充足しておく必要があります。
上記のうち、TestDafとGoetheの試験に関しては、日本にいながらでも受験することが可能です。DSHというのはドイツで大学・大学院に通う際に受験するドイツ語試験のことで、こちらでも代用可能ですが、基本的には学生向け試験です。
ドイツ語が話せるっていうのは、ドイツの就活ではあくまでスタート地点に立ったに過ぎないですね。語学に加えて、何か秀でたスキルや実績がないとドイツで就職を成功させるのは難しいかも知れません
まさしく、ドイツ語が話せればドイツで就職できる、という訳ではありません。日本でも、日本語が話せれば就職できるわけではないのと同義ですね
その他外国語
英語、ドイツ語に加え、その他諸外国語の知識があればやはり有利に働きます。すでに日本語に精通している場合、多かれ少なかれアドバンテージとなりますが、ドイツの会社で日本語を使用する機会はそこまで多くないため、日本語が使える、という技能は、企業によっては宝の持ち腐れになりやすいです。
その他、ドイツの会社で人気の語学と言えば、中国語、スペイン語、ロシア語などで、特に昨今ドイツ企業は中国市場の開拓に大きく力を入れているため、日本語+中国語などの語学力があればアジア市場を任せられる人材として高く評価されます。
日本にいたときに中国の工場とやり取りをすることがあり、中国語を覚えましたが、これがドイツに来てから就職の助けになりました。現在、多くのドイツ企業が中国と取引を行っています
ドイツの企業だと、日本人はアジア市場折衝要因として駆り出されることが多く、その場合日本語の他に中国語や韓国語が話せると凄いアドバンテージね。その他ドイツで人気の第二外国語に関しては「ドイツに就職する際にお勧めの外国語ベスト5」の記事を参照してね
英語のみで応募できる会社を見つける方法
さて、色々とドイツの企業で求められる語学力について述べてきましたが、結論としては「英語」「ドイツ語」の2つの語学においてビジネスレベル 、かつその他言語があれば+α、といった形で、ドイツ就活市場では高い評価をくだされます。
ビジネス英語はともかく、日本からの応募を考えている人々にとって、「ドイツ語ビジネスレベル」という要件を満たすのはそう容易ではないと思います。それでは、この「ドイツ語ビジネスレベル」を満たせない場合、ドイツでの就職はあきらめたほうがいいのでしょうか?
実は、ドイツ語力がビジネスレベルに満たなくても、ドイツで就職する方法はいくつかあります。
一つ目は、上述の通りドイツの求人に出回っている「英語求人」をIndeedやLinkedInでフィルターする方法です。「英語のみ」で検索をかければ、件数自体は多くひっかかることとなるので、その中から自身のスキルや職歴にあったものを選択する方法をとれます。
二つ目は、在独日系企業です。ドイツに進出している日系企業などの場合、大抵、直属の上司となる日本人はドイツ語ができず、社内公用語は英語となっているパターンが多いです。
以下の統計データは、ドイツの日系企業に転職した日本人のドイツ語習熟度を調査したものです。英語さえできれば、この図が示す通り、ドイツ語の習熟はマストではなく、実際にドイツで就職した日本人の半分近くがドイツ語で日常会話できるレベルに達していません。
また、在独日系企業の場合、社内の公用語が英語であるという文化に惹かれてか、社内にいるドイツ人たちも、オフィスで英語をつかう仕事に興味があったり、あるいはそもそも日本文化に興味があったりと、我々にとって親しみやすい同僚であるパターンが多く、打ち解けやすい傾向にあります。
ドイツでの仕事の受け皿の9割以上を占めるドイツ企業の求人に関してですが、基本的な要件として「ドイツ語」が必須になる会社がほとんどである一方、少なからず「ドイツ語不問」の会社も存在します。特に、ベルリンやフランクフルトのような大都市では企業のグローバル化も顕著であり、おのずと社内の公用語もドイツ語・英語を使い分けたり、英語のみで行われているケースも存在します。
日系企業の現地オフィスは、単なる出先機関ではなくローカライズの必要性が求められる傾向にあったり、欧州統括のような複雑化した機能を持つようになったりと、自然と求められる人材の質も高まってきています。
そのため、もしドイツ語に自信が無く、かつドイツでの仕事に魅力を感じている場合、このように、ドイツに進出している日系現地法人での採用、というのが新しい可能性として挙げられます。
ドイツにある日系企業では英語・ドイツ語の要件が純ドイツ企業よりも少し緩くなる
座学で身に着けた英語やドイツ語をビジネスの場で使用するのはかなり難易度が高く、必然的に日本人であることのアドバンテージが活かせる在独の優良日系企業が人気になりがちですね。
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