ドイツ語が話せればドイツ企業に就職できる、というのは日本語ができれば日系企業に就職できる、というのと同じように、必要条件と十分条件を混合してしまっている誤解で、実際にはドイツ語だけでドイツで内定を貰うことはできません。

今回のコラムでは、ドイツ就職を志す際、ドイツ語以外で習得しておくと競争力のアップする外国語についてまとめていきたいと思います。

ドイツで価値のある第二外国語とは

ある特定の国における言語の重要性を考える際に必要になってくるのが、その言語の需要と供給のバランスです。理想的には、その国における話者人口が少なく、かつ重要性が顕著であるような言語であれば、おのずと価値が高まります。

例えば、日本において就職・転職活動の際に最も重要になってくるスキルの一つは英語です。これは、英語という言語自体の日本における需要もさることながら、日本全体でみてもビジネスで英語を流暢に使える話者人口が少なく、自ずとこの言語を話せる人の価値が高くなっているからです。

さてそれでは、ドイツの状況はどうなっているでしょうか。ドイツでの就職・転職を考える際に必須となってくる言語は、英語とドイツ語の二つです。国際英語ランキングで8位にランクインしているドイツにおいて、英語は日本ほど転職・就職の際の武器になるものではなく、話せて当たり前というスタンスで見られています。

では、英語・ドイツ語の次に重要になってくる言語を考察してみましょう。現在、世界の公用語とされる英語があらゆるビジネスシーンで用いられていますが、かといって全ての外国人が英語を話せるわけではありません。ヨーロッパの中にも、英語が苦手な人が多い国がありますし、そういった国との貿易には、ドイツ企業は他言語話者を採用します。

ただ、いくら母国の英語レベルが低いからと言って、ドイツにとってあまり重要でない国の言語を話せても意味がありません。そのため、重要となるのは以下の2点になります:

  1. その言語の母国とドイツとの交易が盛んであること
  2. その言語の母国の英語レベルが低いこと

以下の表は、EF English Proficiency Indexの国際英語力ランキングにおける非英語ネイティブ国の順位に、どの国がドイツにとって重要な輸出・輸入国であるかをマーキングしたものです。

このランキングを基に、以下の表を作成しました。ドイツの就職・転職市場において価値を持つ言語は「中国語」「イタリア語」「スペイン語」ということが分かります。これらの言語は、ドイツの大学などでも人気の高い第二外国語で、就職市場を見渡しても、中国語話者、イタリア語話者の需要が高いことが伺えます。

  英語力が低い 英語力が普通 英語力が高い 英語力が極めて高い
ドイツと貿易が多い   中国、イタリア、スペイン ポーランド、スイス、チェコ、フランス オランダ、ベルギー、アメリカ、英国
ドイツと貿易が普通 日本 韓国、ロシア    
ドイツと貿易が少ない        

日本はというと、ドイツにとって世界で15~16位に重要なビジネスパートナーというカテゴリです。そのため、貿易量は他国程多くありませんが、日本の英語力は「低い」とカテゴライズされているため、ドイツ人にとって日本語話者にはそれ相応の需要があると言ってよいでしょう。

ドイツ就職でおススメの第二外国語

さて、上述の表に沿って、実際にドイツ就職で役に立つ第二外国語について詳細を見ていきましょう。

英語

今や世界の公用語と化した英語ですが、当然ドイツにおいても英語はビジネスパーソンの必須言語と見なされています。この英語は、できたらプラスというわけではなく、もはや「英語が話せないと雇わない」という扱いを受けるほどです。

求められるレベルとしては、最低でもB2レベル、多くの応募者がC1レベルに達している状況で、ドイツ就職を目指すためには、ドイツ語よりも英語が求められるシーンのほうが多いというのが現状です。

ドイツ語

ドイツ、オーストリア、スイス等で公用語として使用されているドイツ語、上述の通りドイツ語のスキルはドイツ就職を志すにあたってアドバンテージではなく、必須要件の一つです。

ただし、一部のMNE(多国籍企業)にあっては、ドイツ語を必ずしも求めていない企業も少なくありません。ドイツに展開する日系企業、アメリカ企業等、あるいはドイツ企業であっても研究機関などは世界各国の研究者を収集する目的で、あえて公用語を英語に設定しています。

中国語

ドイツにとって最大の貿易相手国の一つでもある中国(輸出では3位、輸入では1位)、そのドイツ経済における意味合いは年々増加しており、おのずと中国語に秀でた人員の確保が各ドイツ企業における急務となっています。

単なる貿易相手国としてだけではなく、JV(合弁事業)、工場の設立などより経営の根幹に携わるような中国企業との連携も増えているため、中国語だけでなく、中国の仕事文化、法、商慣習などに長けた人材が重宝される傾向にあります。

フランス語

フランスはEU国内ではドイツにとって最大の貿易相手国(輸出2位、輸入4位)であり、特にお隣の国でもあることから、BtoBだけでなくBtoC取引も盛んです。そのため、英語ではなくフランス語でのやり取りの機会も多く、おのずとフランス語の需要もそれなりの重要性を担っています。

また、アフリカの旧フランス植民地諸国やモロッコ等でも使用される言語のため、使用者の人口はドイツ語よりも多い3億人と推定されます。この数は、今後アフリカの経済発展とともに成長し、半世紀後には1.5倍になると言われており、期待のもてる言語の一つです。

スペイン語

ドイツにとっての貿易規模こそ、オランダやフランスに比べると見劣りするスペインですが、英語力の低さと母国語として使う人口(3億3000万人で、世界3位)の多さを考慮すると、就活市場でも非常に効果を発揮する言語の一つとしてみなされています。

ドイツの企業などでは、スペイン&南米市場担当者を同じ部署に配置することもあり、特に南米は今後経済発展の余地が大きい市場として知られていることから、ドイツ企業もBusiness Developmentのターゲットとして投資を行っています。

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