これからドイツ就職を志す人にとって、求人情報や応募要件は気になるポイントの一つでしょう。どれくらいの職歴や学歴があれば職を得られるのか、あるいは未経験からでも応募は可能なのか・・?
今回の記事では、ドイツ就職市場における「未経験者」の扱いと、未経験からの仕事の探し方などについて解説していきます。
ドイツにおける未経験求人事情
ジョブ型社会モデルに則ったドイツの転職市場においては、原則的に「未経験」の求人数はそう多くは有りません。つまりドイツで特定の職に就きたいと思ったら、その特定の職の職歴が必要になってくる、ということです。
ドイツでの「未経験」の仕事の探し方:
- 正社員になるには「その職」における職歴、または学位が求められる
- 一部の求人形式(インターンシップ、アルバイト、職業訓練)では未経験者への門戸が開かれていることもある
- もっとも、未経験求人は他求人形態と比較し雇用形態が不安定、賃金水準が低い、といった点が挙げられる
かといって、ドイツに「未経験」で応募できる求人がゼロという訳ではありません。例えば、「学生」や「職業訓練生」は未経験からの応募が許される例外として見なされます。それでもいきなり正社員としての採用というよりは、インターンや職業訓練を通じて、試用期間、そして本採用という流れになる点には注意が必要です。
ドイツの「未経験」就職市場:
呼称 | 応募資格 | 応募割合 |
Praktikant/Praktikantin・・インターン生 | 該当科目の専攻学生、等 | 全体の5~10%程度 |
Einsteiger・・初心者/未経験者 | 社会人経験2~3年、等 | 全体の10~20%程度 |
Ausbildung・・職業訓練 | 職業訓練学校の学生、等 | 全体の5~10%程度 |
Minijob・・労働時間の短いアルバイト | 特になし | 不明 |
Praktikant/Praktikantin・・インターンシップ生
「未経験(職歴無し)」の応募者が職歴を作る登竜門としては、最もポピュラーな方法の一つです。一般的には学生(大学生・大学院生)が対象となることが多く、応募要件として「その職種に関連する学位」が多くの場合で求められることとなります。
期間としては3ヶ月~半年くらいが通例で、インターンシップ終了後そのまま本採用への道が用意されていることが多く、職歴の無い大学生がお金を稼ぎながら職歴を作るために多く活用されます。
Einsteiger・・初心者/未経験者
基本的にはPraktikant/Praktikantinと考え方は同じで、その職種に関連する学位などが高い確率で求められることとなります。
もっとも、求人ポータルサイトで「Einsteiger」と検索すると、中には特定の職種における実績などがなくても応募可能な求人がいくつか用意されています。小売店、営業職、一部の技術職などで、こうした職種においては完全未経験からの応募も可能ですが、その分仕事が大変で退職率の高いことが多いとされます。
Ausbildung・・職業訓練
他の応募形態とは少し毛並みの違うのが「職業訓練」向けの求人です。一般的に、Ausbildungと呼ばれる職業訓練生を対象とした未経験求人で、ベーカリー、接客、メカニックなど狭い範囲の職種に用いられます。
あくまで職業訓練性を対象とした求人のため、一般的な「未経験者」が応募することはできません。
Minijob・・労働時間の短いアルバイト
日本同様に、アルバイトにおいては未経験の応募を認めているところは多いと言えるでしょう(一部のアルバイトは職業訓練などを求める)。もっとも、アルバイトは職歴とは見なされづらく、上記の他形態と比べ正社員への転換も難しいため、安定した収入・雇用形態を求める際にはおススメされません。
在学中のみ、あるいはワーホリ中のみのアルバイトとして割り切るのであればともかく、長期的な在職を望むのであれば、他の形態での応募を目指した方が良いでしょう。
ドイツで未経験求人を多くおこなっている業界
このように、基本的に「未経験職種」への応募のハードルが高いドイツ社会ですが、中には、「その職を経験したことが無くても応募可能」な業界が複数存在しています。
歩合制の営業職
上述の通り、「Einsteiger」「Berufseinsteiger」などの検索で引っかかってきやすいのが「営業職(歩合割合の高い)」です。学歴や職歴よりも、「とりあえずたくさん売ってくれたら良い」という側面が強いため、未経験でも応募可能な求人ポストが他職種に比べたら多いと言えるでしょう。
注意しなくてはいけないのが、営業職の未経験応募可能職のほとんどは「ドイツ人」を対象としている点です。つまり、ドイツ国内のリテール市場などを対象にしているため、ドイツ人の顧客と対等に話せるだけのドイツ語力、そして文化的な適合力が求められることとなり、日本人の未経験者にはハードルが高いと言えます。
ヘルプデスク・カスタマーサービス
顧客からのクレームを処理したり、ヘルプデスクを担当する部署は未経験での求人を受け付けているか、比較的応募要件が軽いことが多いと言えます。もっとも、ドイツ市場やヨーロッパ市場における電話対応を一日中おこなうため、かなりドイツ語に自信があるか、スペイン語やイタリア語などヨーロッパのその他言語を武器として持っているようなアドバンテージが無いと内定は難しいでしょう。
飲食・接客業
レストランや小売店の接客も、未経験での採用を受け付けやすい職種の一つです。特に日本レストランなどでは日系の顧客も多いことから、日本語が話せるというのがアドバンテージとなります。
アルバイトとしての採用形態が多いですが、正社員としての採用や、将来的な正社員への昇格も制度として設けているところがあり、ワーホリでドイツに来てそのまま飲食などのバイトから正社員に採用される、といったケースは多く見受けられます。
在独日系企業
完全に「職歴ゼロ」からの未経験というわけではなく、「その職種における未経験者」でも応募可能という意味では、ドイツに展開している日系企業の一部職種は未経験でも応募可能です。
特に、ヨーロッパ各地の顧客との折衝をおこなう海外営業や、受発注業務や貿易実務をメインにおこなう営業アシスタントのような職種は、過去未経験でドイツに移住してから始めた人も少なくありません。逆に、日本での職歴が営業職であっても、ドイツでは物流やマーケティング部といった未経験職種に挑戦し、そのポジションを得た人間も見受けられます。
ドイツの他の未経験求人に比べて契約形態が安定しているため、新しい仕事に挑戦したい方、ドイツでの正社員採用に興味がある方などが可能性として考えられる応募先と言えます。応募条件としては、ドイツ語が必要とされることもありますが、英語と日本語スキルがまずは挙げられます。