年間約30日の有給休暇を取得できることも少なくないドイツ社会。多くの人がこれらの有給をまとめて消化、週末や祝日と組み合わせて使うことで、2週間~3週間規模の「バケーション」を実現することが可能となります。

ドイツ人の多くがこのロングバケーションを夏に設け、南ヨーロッパや中東、アジアへの旅行に当てますが、夏と並んで冬場も実はロングバケーションの人気シーズンであることをご存じでしょうか?

Winterurlaub(冬バケーション・冬休み)

師走の忙しなさとは対照的に、日本では1月は家族でゆっくりと過ごす期間・・「お正月」「三が日」が控えています。この時期だけは、いつもは忙しそうな日本社会もスローダウンすることでしょう。

一方ドイツでは、実家に帰り家族とゆっくり過ごす時間には「クリスマス」が該当し、年始は1月2日から仕事を開始する企業も少なくありません。例によって、年の最後まで休暇をため込んでおいて12月にまとめて2~3週間の休暇を使い、全く連絡の取れなくなる担当者も珍しくありません。

このように、どちらかといえば日本で言うところのお正月にあたる「里帰りムード」の漂うドイツの冬休みですが、実はもう一つ重要な側面があります。それが、アメリカに次いで世界2位のウィンタースポーツ人口を誇るドイツならではの、「スキーバケーション需要」です。

冬バケーションの仕事への影響

ドイツの会社社会におけるクリスマス・年末年始休暇についての習慣」の記事でも述べた通り、公的な祝日数は多くないものの、非常に多くのドイツ人が有給休暇と組み合わせることで長期休暇を取得する傾向にあります。

特に12月中旬以降はこの傾向が顕著で、担当者によっては年始まで思う存分2~3週間、電話どころかメールでの連絡もつきにくくなるというケースが発生します。ドイツ企業との取引をしている場合、年末年始休暇に入る前に担当者への確認と引き継ぎなどをおこなってもらうと良いでしょう。

また、多くのメーカーでは工場がクリスマス期間中停止するので、年始には在庫高が激減し、発注に影響を及ぼすこともあります。ドイツ企業から重要な部品や製品を仕入れている場合、こちらも余裕を持って納期の確認をしましょう。

ウィンタースポーツとドイツ人

2022年の北京オリンピックでは、ノルウェーに次いで多くの金メダルを取得したドイツ。スキーリゾートの数もヨーロッパではトップの498か所(2023年現在)を数え、国内外のスキープレイヤーを魅了します。

ドイツのウィンターバケーションの人気滞在地は、イタリア、スイス、オーストリアといった国境を接するドイツ南部のアルペン地帯です。スキーやスノーボードは勿論のこと、後述の通り家族連れでのスパ旅行や雪山登山なども盛んで、必ずしもウィンタースポーツができなくても楽しむことが可能です。

このように、国内や近隣で多くの魅力的なスキーリゾートを持つため、夏のバケーションと異なり近場で過ごす人の割合が高いことも特筆すべきポイントでしょう。もっとも、ドイツの長く寒い冬に嫌気がさして、太陽を求めてカナリア諸島やマルタ島などにバケーションに出るドイツ人も少なくありません。

NRWの近場リゾートWillingen(Copyright_flicker@dronepicr

ドイツ人のスキーバケーション

最後に、ドイツ人の典型的な冬休みの過ごし方であるスキーバケーションの実態について見てみましょう。節約癖のあるドイツ人ですが、浪費するときは思い切って浪費する傾向が強く、その特徴がスキーバケーションにも垣間見えています。

バケーションの期間

ドイツにおいてスキーバケーションに適した期間は11月下旬から3月下旬と見なされており、人によっては年末年始や年越しパーティをリゾート地で過ごしたがる人もいます。行楽シーズンのピークは12月~1月頃に集中し、特に12月は残った有給休暇を使い切って1~2週間の冬休暇に投じるケースが散見されます。

それゆえ、このスキーバケーションのピークにあたる12月~1月は、帰省客とも相まって交通機関や宿が非常に混雑することで有名で、早期予約が求められます。

アルペンのスキー場(Copyright_flicker@Nassfeld

バケーションの費用

自宅からの距離やどこで過ごすかに応じて費用は大きく異なりますが、一般的なドイツ人のスキーバケーションに投じる金額は一人当たり1.500~3.000 EUR程度と言われています。

例えば、Ridestone社のおこなったモデルケースでは、一人当たりの金額は2.377EURと産出されています。もっとも、大人数でいけばその分一人当たりのワゴン代やコテージ代が軽減されるため、同級生や別の家族など大家族を連れてスキーバケーションに赴くドイツ人も少なくありません。

主な費用

名目 費用 注釈
夕食代40EUR 程度1回あたり
宿代80~150EUR 程度1人あたり
スキーパス50EUR 程度1日あたり
スキーレンタル20EUR 程度1日あたり
保険5EUR 程度1日あたり
交通費100~500EUR居住地に応じる
   
一週間の総費用2.000EUR 程度 

このように、まるで大学生のように冬休みを楽しむことのできるドイツ人。勿論、この特権はドイツ人だけでなく、ドイツで働く社会人全般の享受できるものであり、実際にドイツの現地採用で働く日本人たちも同じようにドイツの冬休みを満喫することができます。

ドイツで就職し、冬休みには2週間アルペンで息抜きといった仕事人生も面白いのではないでしょうか。

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