ドイツと日本に根付いた風土や国民性は、両国のビジネス・面接文化にも色濃く反映されています。

ドイツと日本、似たような経済・産業モデルの国と言われることがありますが、中には180度異なるような文化的側面も目に付き、一概に似ていると一括りにすることはできません。日本的な文化に慣れている人がドイツで就活を行う際には、戸惑いを覚えるような場面も少なくないでしょう。例えば面接で出された飲み物は飲んでもいいのか、交通費は請求してよいのか、等々。

今回は日本文化との対比で、ドイツ企業で面接する際にどんなところに注意しなくてはいけないかという点についてまとめていきます。

ドイツ企業での日本人の就職面接

ドイツ人は良くも悪くも、我々日本人を含む外国人を特別扱いすることが少ないと言えます。良く言えば、国籍を理由に面接を落とすことが少ないということで、悪く言えば日本人だからと言ってドイツの就活マナーを知らなかったりドイツ語が下手だと手心は加えないという事にもなります。

というわけで、ドイツ企業における面接には万全の準備を持って臨みましょう。

就職面接までのスケジュールと交通費

ドイツ企業にウェブエントリーで申し込みを行うと、応募先人事担当者による選考がおこなわれ、企業側が興味を示した場合、おおよそ1週間~2週間程度で面接への招集がかかります。ドイツ企業は興味のある候補者にしか声掛けをおこないため、この時点である程度絞り込みがおこなわれていると言えるでしょう。

面接への招集は、採用担当者から確実を期するために「電話」で連絡が来ることが大半です。そのため、履歴書には日中、連絡の取りやすい電話番号を載せておく必要があります。

人事担当者から電話が来て、その場でスケジュールのすり合わせをおこなうと、念のため、その後人事担当者からメールにて確認の連絡が来て、交通費など詳細のすり合わせをおこないます。

ドイツ企業の場合、一般的には「経済的な公共交通手段を用いた交通費」は会社から支給されます。経済的な公共交通手段とは、具体的に以下のようなものが挙げられます。

  • 2等車以下の電車移動(ICE等)
  • 鉄道駅から会社までのバス

「経済的な公共交通手段」とは「一番安い公共交通手段」ではないため、例えばベルリンからデュッセルドルフまで来るのに、長距離バスに乗ってこい、と言われるようなことはありません。あくまで、常識の範囲内で経済的かつ合理的に会社に到着できるような交通手段のことです。

その他、会社に事前確認しておかなくてはいけないのが以下のようなケースで交通費などが支給されるかです。

  • 飛行機移動
  • 混雑時の席の予約代
  • タクシー移動
  • 前泊を要する場合のホテル代

特に、前泊を要する場合、会社側がホテルを手配するケースもありますので、自分でインターネットなどを通じて予約するのではなく、一度人事側の確認を取ってからにするのが最適なやり方です。

また、後述の通り交通費の清算を行うためには、打刻チケットそのものを手元にとっておく必要があります。ただし、Deutsche Bahn(ドイツの鉄道)をオンラインで予約した場合などでは、チケットそのものは手元に残らず、オンライン上で印刷したPDFコピーでも問題ありません。

当日の面接までの流れ

面接当日、注意しなくてはいけない点の一つが、ドイツの公共交通機関は度々遅延するという点です。WELT紙(ドイツの新聞社)によると、ドイツにおける長距離列車の4本に1本はなんらかの形で目的地への到着に遅延しているというデータがあり、近距離列車などに比べ一層の注意が必要です。

特に乗り継ぎなどを行う場合、一つの電車が遅れると、その次の乗り換えに間に合わないケースが多く、全体の旅程に大きく影響してきます。そのため、面接会場・最寄り駅には余裕をもって早く着いておくことをお勧めします。

電車が遅れる場合、電光掲示板にて遅延時間・新しいホームの場所などが掲示される
電車が遅れる場合、電光掲示板にて遅延時間・新しいホームの場所などが掲示される

また、前述のとおり、チケットを駅構内などで買う場合、後々の交通費精算のために、必ずチケット原本を手元に残しておく必要があります。

面接会場への到着は、面接予定時刻の10分~5分前くらいを目途にしておくことが望ましく、早く着きすぎてしまった場合には大抵受付の担当者に知らせれば、ロビーなどで待たせてもらうことが可能です。

受付では「自分の名前」+「身分証明書(ビザ・パスポートなど)」を提示し、何時から誰と面接の予定があるのかを伝える必要があります。

ドイツ企業では、特に日本式のような「待っている間にジャケットを脱いでおく」「座る位置(上座・下座)に気を付ける」といった文化は特にありません。

肝心なのは、人事・面接担当者が現れたら椅子から立ちあがり、相手の目を見て、名前を名乗り、握手を交わすことです。これは、面接場面のみならず、基本的にドイツのビジネス一般に通じる挨拶の文化です。

ドイツ企業では必ずしも黒スーツ(男性の場合)である必要はありませんが、企業特性や応募ポジションによって着て行く服装を使い分ける必要があります。例えば、銀行や証券会社などはきりっとしたスーツが王道で、逆にITやマーケティング、デザイン系の会社ではむしろキリっとし過ぎた格好は逆効果です。

面接中の作法など注意点

面接で日本人応募者が聞かれやすいトピックなどについては、別の記事にて詳しく紹介しています。以下、日本人がドイツ企業・ドイツ人人事担当者との面接で注意しなくてはいけない点を列挙していきます。

初めの話題はポジティブなことを話す

ドイツの面接は、大抵取るに足らない話題から始まります。具体的には「今日はどうやって来たの?」「今日の天気」「この都市に来るのは初めて?」といったような事柄です。

この面接の皮きりトピックは、選考にほとんど影響を与えないものですが、それでもドイツ固有の習慣があるため、できるだけポジティブな文言を用いたほうがよいとされています。

例えば、「駅から遠かった」「疲れた」「場所が分かりづらかった」というような相手のオフィスやロケーションを遠回しに貶めるような表現は避けられるべきで、「駅からの風景を堪能した」「きれいなビルなのですぐわかった」といった表現が好まれます。

唯一、ネガティブな言葉を用いていいのは天気についての話題で、土砂降りなのに「今日はいい天気ですね」と無理にポジティブに取り繕う必要はありません。

丁寧語(Siezen)を使う

ドイツ語で面接を行う場合、Duzen(相手をDuと呼ぶフランクな表現)ではなく必ずSiezen(相手をSieと呼ぶ丁寧な表現)でなくてはいけません。

ドイツ企業の場合、入社後は同僚や上司も「Duzen」表現で、フランクに呼び合うことが多いのですが、面接の場ではまだ他人同士のため、Siezenを保たなくてはいけません。

特に、ドイツ語を日常的にクラスメイトや語学学校などで使うことに慣れてしまっていると、いざというときにSiezen(丁寧語フォーム)が出てこないというケースも有り、慣れていないと思った場合、事前に練習をしておく必要があります。

出された飲み物は飲んでもいい

面接の場には、大抵コーヒーや水、コーラなどが用意されており、これらを飲むように勧められます。日本と違って、相手が二度勧めるまで飲んではいけない、といった就活マナーはドイツにはなく、基本的に出されたものは飲んでも問題ありません。むしろ、提供された飲み物を断ってしまうことはNGであると見なす会社もあります。

ただし、あまりがっつきすぎるのもNGで、机にある飲み物のおかわりなどは減点対象となるので注意しましょう。

相手の目を見て話す

面接中の挙作で注意しなくてはいけないのが、「相手の目を見て話す」という点です。

典型的な面接の光景 (C)flicker Amtec Photos

相手の目を見て話す、という文化はドイツ特有のコミュニケーション形態で、目線をそらすことは、相手にとって失礼と受け取られるだけでなく、やましいことがある・コミュニケーションできない、と受け取られてしまいます。

目上の者の目を凝視しすぎるとかえって失礼、という日本文化とは異なるという点に注意しましょう。

 ドイツ日本
面接会場までの交通費基本支給支給されないことが多い
担当者との顔合わせ名前を名乗り軽く握手お辞儀、挨拶
出された飲み物勧められたら飲む勧められたら、面接官が飲んだら、等
目線担当者の目を見て自信たっぷりに過度に見つめすぎるのはよくない

面接終了後の流れ

面接は、30分~1時間半程度で、平均すると1時間前後であることが一般的です。

面接終了後は、人事担当者と交通費精算の件で打ち合わせを行います。上述の通り、チケットそのものが必要な場合は帰宅後に郵送処理などを行う必要が有り、中にはPDFなどでメール添付すればよいとする企業もあります。

面接の結果は、1週間程度で知らされることが通常ですが、企業によっては2週間、3週間とかかるところもあります。また、面接の回数も、1回のところもあれば、2回以上おこなうところもあり、企業文化によってまちまちです。