JETRO調べによると2017年時点でドイツに進出する日系企業は1,500社以上で、多くの多国籍企業が拠点を置くドイツの中でも、日系企業のプレゼンスはひと際目立ちます。
面白いことに、日本の文化を踏襲する日系企業にあっても、ドイツにその拠点を持つ場合、社風や採用方式がドイツの影響を受け、日本とは根本的にスタイルが違うといったケースも少なくありません。
それゆえ、日本の就活方式と全く同じやり方を期待していると、在独日系企業で就活を行う際に思わぬ落とし穴にはまってしまうことがあります。今回は、ドイツにおける日系企業の就活制度、面接ステップの注意点について説明をおこなっていきます。
日本式?ドイツ式?在独日系企業の就活スタイルはどっち?
日系企業の中には、長年ドイツで拠点を運営し、すでに現地化したスタイルの人事制度を設けているところもあれば、日本式のスタイルを根強く残すところもあります。
社会学分野で良く知られるInstitutional Theoryによると、多国籍企業の制度は現地の法や商慣習の影響を強く受け、やがて自然と現地企業と似たものになる傾向があると言われています (参考:Dimaggio and Powell, 1983)
一方で、その多国籍企業の持つ人事制度や習慣は、本国において同じく長い年月をかけて培われてきたもので、現地に溶け込むまで時間のかかるものや、溶け込んでしまうとむしろ強みが失われてしまう分野もあります(参考:Kostova, 1999)
実際のところ、日系企業が実際にどの程度まで現地の習慣の影響を受け、どの程度自国の風習を引きずるのかは、その会社の規模、業態、その他様々なファクターによって決定され、一概に「長くドイツ拠点の歴史が古い順から人事制度が現地化していく」とは言い切れません。
一般的には、日本的な要素を残す反面、ドイツ的な文化を導入した「ハイブリッド」のような採用システムを多くの在独日系企業が採用しています。
応募の形式
ドイツの日系企業に応募する場合、申し込みの形式は主に二種類です。
- ウェブ上で現地採用として申し込む
- 当社のようなリクルーターを活用する
ウェブ上には、大手日系各社がドイツ語・英語で求人広告を出しており、自社HP内で求人情報サイトを設けているところも少なくありません。ただし、こういった企業内のウェブ募集は、大抵ドイツ人の人事部によって運営されているケースが多く、対象となるのはドイツに既に生活基盤のある人などです。
それらの中には、日本語が必要とされるような職種や、日本での仕事経験が有利になるようなポジションもありますが、あくまで現地人からのエントリーを期待したものが多いと知っておく必要があります。
一方で、当社のようなリクルーターを経由する場合、大抵人事や日本人管理職から直接のオファーを貰うため、日本のバックグラウンドを活かしやすい職種にダイレクトに応募することが可能です。
履歴書に関しては、日本人担当者・ドイツ人担当者双方が理解できるよう、英語、または英語+日本語の双方が求められるケースもあり、誰が面接や人事に携わるかがカギになってきます。
面接までのスケジュールと交通費
日系企業の面接までのスケジュールに関しては、一般的なドイツ企業への就活と変わりません。当社のようなリクルーターを経由した場合、いったん応募者の情報をお預かりしてから、適切なポジションをご紹介させていただき、早ければ1週間くらいで面接のオファーまでこぎつけることができます。
ただし、タイミングや経歴がマッチしない場合は、数か月、半年近く決まらない方もいることも実際のところ散見されます。リクルーターは、あくまで一手段として活用すべきで、ご自身での情報取集や就業を目指す時期に合わせて計画的に資格を取得するなど、自助努力は欠かせません。
具体的な就活スケジュールに関しては、以下の例を参照してください。
(参考記事:[就職体験談] 国内法人営業からドイツでロジスティック部に転職)
在独日系企業での就活で注意するポイントは、交通費精算の方法です。
前回の記事でも言及したとおり、通常ドイツ企業の場合、面接の際に応募者が必要とする交通費は会社側の負担となります。
ところが、日本の就活システム同様、一部の日系企業では交通費が応募者負担という文化も存在しており、実際に交通費が負担されるかどうかは企業やポジションごとに異なる、つまりケースバイケースです。
当社Career Management経由で応募していただいた場合、基本的に面接にかかる交通費の交渉は当社側で行います。可能な限り応募者の方の費用負担を減らし、面接に集中してもらえる環境を整えております。
当日の面接までの流れ
在独日系企業に面接する場合の当日の流れは、ドイツ企業とほぼ同じです。
ただし、面接会場での作法・マナーは、面接官が日本人かドイツ人かによって大きく変わってくるため、どちらでも対応できるように心の準備が必要です(日系企業と言えども、場合によってはドイツ人面接官と1対1面接、といったケースもあります)。
例えば面接官がドイツ人の場合、前回の記事でまとめたように、握手をして名前を告げるドイツ式の挨拶などが必要になります。
一方で、面接官が日本人の場合、握手や欧米式のフレンドリーな挨拶は好ましくありません。お辞儀をし「本日はよろしくお願いいたします」などの挨拶ができると良いでしょう。
どちらのケースでもいいように、すでにビルに入る段階で上着を脱ぎ、日本式の面接作法に備えておくことをお勧めします。
また服装に関して言えば、日系企業での面接の場合、無難なのは黒スーツ+ネクタイのフォーマルな就活フォームです。

面接中の作法など注意点
面接官がドイツ人の場合の注意点は、前回の記事で触れました。今回は、在独日系企業で面接を受け、面接官が日本人の場合のマナーを紹介します。
基本的に、この場合のマナーは「日本で就活をする場合と同じ」マナーを想定していれば大きく的外れになる心配はありません。
入室のノック
一般的には、無難なノックの回数は3回と言われています。また、ノックをしてから担当者の「どうぞ」の声がかかってから入室するようにしましょう。
入室したら、元気よく「よろしくお願いいたします」と声をかけられれば印象が良いです。また、コートやカバンの類は、自分の椅子の下か、置く場所が分からない場合「こちらに置かせていただいてもよろしいでしょうか」と一言かけられると丁寧です。
着席
着席は、担当者の「どうぞ」の声がかかってからになります。
すでに面接担当者が席に着いていて、座席を指示された場合それに従えばよいので問題ありませんが、担当者が後から来るケースや、座る場所が不明な場合、基本的には「下座(ドアに近い側)」への着席が良しとされています。
先に部屋で面接官を待つ場合、面接官が部屋に入ってきたら起立し、はきはきと挨拶するのが礼儀です。
出された飲み物
日系企業・日本人面接官との面接で注意するのは、出された飲み物です。
基本的に、飲み物が出されて無条件に飲んでよいわけではなく、面接官の「どうぞ」の声がかかってから、一口~二口軽く口をつける程度が吉と言われています。
どうぞと言われて逆に全く口をつけなかったり、残すのも失礼と見なされることがありますので、最初に少し飲み、面接終了前にタイミングを見計らって全部飲み干す、というのが理想的です。
メモ
面接中の企業説明、ポジション説明などの間でメモを取りたい場合、必ず面接担当者に「メモを取ってもよろしいでしょうか」と確認してから取るようにしてください。