ことわざは、その文化の本質を端的に表しているため、未知の文化に触れるときには割と良い助言になります。今回は、日本人がドイツで仕事をするうえで、知っておくと役に立つドイツ語のことわざについてまとめていきます。

Fragen kostet nichts (聞くのは無料)

日本では、遠慮、謙遜、忖度、といった態度がビジネスシーンにおいて重要なカギを握ります。いい営業社員、上司からの覚えが良い部下など、みなこの日本特有の「空気の読み方」に長けているところがあります。

ただし、これはあくまで日本特有のやり方で、ドイツにおいて通用するものではありません。ドイツ人の基本的な考え方では、「Fragen kostet nichts(聞くだけなら無料)」という慣用句にも表されているように、相手が忙しそうだろうが空気を読まずに質問をしたり、ぐいぐい聞きづらい部分に突っ込んでしまっても問題ありません(ドイツ人曰く、教えて嫌な事なら教えてくれないし、教えてくれることなら教えてくれる、とのこと)。

逆に、空気を読んで何も質問しないと、何も相手側から教えてくれないのがドイツ人です。そのため、同僚に嫌な顔をされようが、忙しいと言われようが、ぐいぐいと質問し続けなくてはいけないのです。

詳細に関しては、以下の動画を参照ください。

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Zeit ist Geld(時は金なり)

英語の「Time is money」のドイツ語バージョンです。ドイツ人のいう時は金なり、とは、文字通り時間をお金で換算するものです。例えば、新製品の発売が1ヵ月遅れれば、1ヵ月分で得るはずだった利益がゼロになります。そのため、どんな案件でも、とにかく早く早く先へ進めたがるのがドイツ人です。

ですので、ドイツ人は日本的な「社に持ち帰って検討します」という態度も好ましく思いません。NoならNoと決めてくれれば次の展開に移れるので、早く答えを教えてほしい、という形です。

また、いわゆる日本式の「あまり大きな数字にならないけど、つきあいのためにやらなくてはいけない細々した作業」や「完璧主義的な仕事」もドイツ人は嫌います。プレゼン資料の一言一句、参加者の好みにあったようにレイアウトしたり、何でも完璧に準備してから提出、というより、ドイツ人の仕事はほとんど「9割くらい完璧」で一旦提出し、1割のミスがあると後から言われてやり直す感じです。ドイツ人に言わせると、こちらのほうが効率的なんだとか。

Ja oder Nein(❝はい❞か❝いいえ❞)

ドイツ人と日本人を比較した際に決定的に異なるのがこの点です、すなわち、なにか物事に対して明瞭な答えを述べるか、曖昧にぼやかすかです。ドイツ人の場合、基本的に受け答えは全て明瞭で、嫌なら嫌、OKならOKとはっきり述べ、日本人のように「多分」「恐らくは」「前向きに」のような曖昧な用語を使いません(たまに、JaとNeinを組み合わせた「Jain」という造語を用いることがありますが)。

では、実際に「はい、できます」「はい、その通りです」と言ってしまった後で、やっぱりできなかった(情報が間違っていた)場合ドイツ人はどうするのでしょうか?基本的には、前にある障害を押しのけて、ゴール地点(「はい、の答えの地点」)にたどり着くようにあらゆる手段を講じて努力します。

さしずめ、日本人がこの橋は渡れそうかどうか見極めてから橋を渡るタイプだとすると、ドイツ人はとりあえず向こうに渡ることを決めてから、どのように渡るかを決めるタイプでしょうか。

もちろん、最終的にその答えが根本的に判断ミスでどうしてもひっくり返らない、ということもありますが、その場合ドイツ人はそこまで恥に思いません。「今回は今回、次は次」というメンタルです。そのため、ドイツ人(上司、部下ともに)のいう「Ja(はい)」は分かりやすい一方、自信たっぷりに言う割にたまに間違っていることがあるので注意しましょう。

Ende gut, alles gut(終わりよければすべてよし)

ドイツ人にとって、プロセスはあまり関係なく、結果に重きが置かれます。これは大学の成績の付け方も同じで、日本のように出席点やレポート点などはあまり評価されず、試験の成績が良いかだけを見られます。

仕事でも似たようなことが言え、基本的に結果が出れば、13時に帰社しようが1ヵ月有給を取ろうが何も言われません。逆に、毎日頑張って残業していようが、結果が出ていないと割と辛辣なことを言われます。

ドイツ人の部下や同僚を持つ場合、次のような問題が起こりえます。「とりあえず、結果を出せばいいんでしょ?」みたいなスタンスで仕事に臨むので、度々報連相を怠り、いつの間にか自分のやり方で仕事を進めている、ということが多々発生します。

Dienst ist Dienst und Schnaps ist Schnaps (仕事は仕事、酒は酒)

このことわざがそのまま表しているとおり、ドイツ人にとって仕事と酒は本来分かたれるべきものです。そのため、日本のように「仕事上での酒」「週末のゴルフ」といったような公私混同されたビジネススタイルを嫌います。

勿論例外もあり、特にアジアのビジネススタイルに詳しいドイツ人は、仕事と割り切って飲み会についてきてくれることもあります。ただし、あくまでマジョリティのドイツ人はそのような公私混同された飲み会などを嫌う、ということを頭に入れておかなくてはいけません。