ドイツの日系企業に就職した日本人は、ドイツが欧州市場の拠点であることから、ヨーロッパ各国との折衝を前提とした、ダイナミックな業務内容が期待されています。今回は、ドイツで日本人に開かれているポジションの中でも、特に異文化折衝能力が要され、グローバルな仕事として知られる営業企画部の業務内容について徹底解説します。

ドイツにおける営業推進部の立ち位置とは

在独日系企業における営業企画部の立ち位置は特殊で、ドイツ企業では「Vertriebsleiter」のような営業部長が担っているケースが多いです。日系企業での営業推進部の立ち位置は、営業と本部の中間に位置するもので、実際に顧客を相手にセールス・折衝するのではなく、現地の営業社員を統括して本社とのコミュニケーションを円滑にする役割となっています。

そのため、どちらかと言えば在独の日系企業の中でも欧州各国に販売拠点を持つような大規模な会社でこうした役割が求められることが多く、現地社員というよりも比較的駐在員的な、現地人材と本社の橋渡し的な立ち位置での活躍が求められます。

専門的な資格は必要とされませんが、現地マーケットの大勢の営業社員を束ね、本社の意向を正確に伝える必要があるため「マネジメント能力」「プレゼン能力」「高度なドイツ語(ドイツマーケットの場合)」「高度な英語」の知識が要されてきます。

  • 直接に顧客と折衝する機会は少ない
  • 本社の意向を現地の営業社員に正確に伝える、高度な語学力が要される
  • マネジメントのスキルも必須

業務内容

具体的に、ドイツの日系企業に就職した営業推進職の業務内容はどのようなものになるのでしょうか。

基本的にドイツに進出している日系企業の場合、ドイツ国内、あるいはドイツ国外(他ヨーロッパ地域、ロシア、アラブ、アフリカなど)のどちらかのマーケット、営業部隊を担当することとなります。

営業部隊の規模は会社によりけりで、10人以上のところもあれば、2~3人規模のところも存在します。人によっては一つの国に付きっきりになることもありますし、複数の国の営業部隊を統括することもあります。会社の規模が大きくなればなるほど、売上数字も一日規模でまとめる必要が出てくるため、各マーケットの営業社員や営業部などと密な連携をはかり、現状の洗い出しや、販促の展開を伝えます。

情報のルートは2方向あり、営業グループから上がってくる報告を上司や本社にあげ、逆に本社からおりてくる施策を、営業部隊に正確に伝える流れです。いずれにせよ、少しの情報の齟齬が命取りとなることから、高い語学能力がここでは要されてきます。

営業部隊は国内外に散開しているケースが多く、連絡はオンラインで行なうか、あるいはドイツ内であれば月一で社内の定例会議を行なったり、国外マーケットであればその都度出張を行なったり、といった具合です。上述の通り、営業推進部自体が直接顧客とやり取りしたり、新規開拓を行なったり、というケースは少ないですが、その分、営業社員のモチベーションを高め、彼らに数字を挙げてもらう、というマネジメント分野での技能が重要になります。

  • 営業社員の管理、育成、数字の把握と本社への報告が業務
  • 営業社員に比べると、出張の回数は少ない
  • 英語やドイツ語での高い対人・プレゼン能力が要求される

応募の要件

このように、高いマネジメントスキルと語学・プレゼン能力が要される「在独日系企業の営業推進」のポジションですが、具体的にはどのような応募の要件となるのでしょうか。

語学に関しては、英語、ドイツ語ともに、最低でもB2以上、可能であればともにC1レベルはあったほうが良いとされています。例えば、以下はドイツの日系企業に就職した日本人の語学レベルですが、数ある業務の中でも特に営業推進部は「正確な情報の日欧の橋渡し」が至上命題であることから、他職種よりも高い語学力が求められます。

本社の意向を正確にくみ取ったり、本社に正確に情報の分析・報告をする業務であることから、極力、日本のビジネススタイル、本社の考え方を理解している必要があり、日本や、日本の会社で数年以上働いた経験があると、高評価の対象となります。また、複数人の営業グループをまとめた、グループ一体となって数字目標を達成した、という、個人ではなくグループでの過去の実績などもあると、マネジメント能力が認められるポイントとなります。

また、パワーポイントやエクセル、ワードといった必要最低限のオフィスアプリケーションの実務能力も必須となります。

  • 英語・ドイツ語ともに最低B2レベル
  • 可能であればともにC1レベル
  • パワーポイント、エクセル、ワード
  • 日系企業での就職経験は非常に有利
  • 対欧米人に対する高いコミュニケーション能力が求められる

どんな技能が重宝される?

上述した応募要件以外に、どういった技能があれば重宝されるのでしょうか?欧州統括としての機能を持つ場合、ドイツ国外への営業が頻繁に行われるため、英語以外のもう一つの欧州言語(スペイン語、フランス語、ロシア語等)に対する素養があると非常に有利です。

一営業社員ではなく、一つ上の立場から市場を俯瞰しなくてはいけないため、EBITやEBITDAのようなKPIにまつわる指標を自家薬籠中のものとし、人件費やコストを含めて会計的な視点からも各拠点の経営に資するような知識があると、高評価となります。

その他、ドイツ国外の顧客を担当する場合、その国へのドイツからの輸出が必要となるため、貿易に関する知識もあるとプラスの要因になります。その国々の商法などに精通していればなお良いのですが、実際にそこまで求められるケースは稀です。

加えて、新規市場の開拓の場合、市場調査やPrice Managementを要することもあるため、統計的な知識やリサーチ能力もあると重宝されます。そうした新興市場では、自分で一からマーケティングも行う必要があるため、マーケティング、ブランディングの能力もあると評価されます。

  • 欧州他言語の素養
  • 各種経営指標に対する理解
  • 貿易知識
  • 市場リサーチ・アナリティクス能力
  • マーケティング能力

どんな性格の人が向いている?

性格に関して言うと、一人で顧客のところまで足を運んで折衝というよりも、少し俯瞰的にマーケットを見渡す性格が求められます。それゆえ、出張などはあまり多くなく、事務処理・プレゼンや本社への報告、といったデスクワークに快適さを見出せる性格がよりフィットします。

特に、営業と本社との橋渡しとしてのコミュニケーションが大事となってくるため、日独双方の文化に精通し、それぞれの言語にかみ砕いて説明できる、異文化交渉力は非常に魅力的です。現地の営業と仲良くなれるような人となり、経験などがあれば、適任と言えるでしょう。

  • デスクワークが得意
  • 異文化コミュニケーションが得意
  • 日本の文化に誇りを持っている

どんなスキルが身につくのか

最後に、こうした環境に身を置いて仕事をした場合、どのようなスキルが身につくのでしょうか。

ドイツでは「管理職」と見なされる、グループの統率者としての立場での仕事のため、将来的にも「マネジメント経験有」と履歴書に書けるようになるのが非常に大きな魅力です。個人の数字ではなく、グループで一丸となって何か数値目標を達成するというのは、日系企業のみならず、どこの国の企業でも求められる重要な役割です。特に日系企業にとって、まだまだ「海外の人員を統率できる」人材というのは他国の多国籍企業の後塵を拝している部分があり、その分野で成果をあげることは、将来的なキャリアアップにも役立ちます。

本社と営業の間に立ってプレゼンを多く行うため、英語・ドイツ語でのプレゼン能力、企画・提案能力が身に付きます。こうした技能は、語学の実践的な面での習熟にも役立ち、実際にプレゼンを多くこなすことから、他の職種よりもドイツ語・英語の習得が早い、とも言われています。

  • プレゼンに則した、優れた語学能力が身につく
  • 異文化対応能力が磨かれる
  • マネジメント能力が身につく

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