ドイツの日系企業に就職する日本人女性のうち、実に8割程度が「営業アシスタント」ポジションへの転職です。パートナーの転勤などでドイツで転職することになった、ドイツの大学を出て職を探す、といった場合に、日本人女性の就職先の大きな受け皿として人気を博しています。
今回は、特にドイツで転職する日本人女性にとって人気の高い「営業アシスタント」について、具体的にどのような業務内容でどのようなスキルが求められるのかなど、徹底解説をおこないます。
ドイツにおける営業アシスタント職の立ち位置とは
ドイツで営業アシスタント職は「Customer Service」「Kundenservice」と呼ばれ、日本の会社では「エリア職」の仕事のポジションに近い職種となります。大学の専攻として特定の学部はありませんが、主にドイツでは「Ausbilding(職業訓練)」等がキャリア形成の入口としてみなされています。
Vertriebsmitarbeiter(営業職)との違いは、実際に売り上げの数字に責任を持たないことが多く、また出張を伴わないケースがほとんどです。ドイツでのCustomer Serviceの平均的な給料は25,000EUR~30,000EUR程度で、他の会社に移ってもつぶしが利くことから、配偶者に転勤が多い女性や地元の女性などにも人気です。
ドイツのCustomer Service職や日本のエリア職が基本的に国内顧客の管理(受発注管理、ストックの確認等)を任されるのに対し、在独の日系企業における営業アシスタントの立ち位置は、国際ビジネスを前提とすることから語学力が要されるというのが特徴です。従来の日本のエリア職の業務に加え、語学力や貿易知識、異文化コミュニケーション能力が要されるポジションというのが正鵠を射た理解となります。
- 大半を女性職が占める
- 日系で言うところのエリア職の延長線上にある職種
- 加えて、語学力、貿易知識、異文化コミュニケーション能力などが要される
業務内容
具体的に、ドイツの日系企業に就職した営業アシスタント職の業務内容はどのようなものになるのでしょうか。
業務の流れとしては、営業の獲得・管理する欧州顧客のさらに細かい部分のサポートといった形になり、例えば顧客からの「〇〇の商品のストックはあるか?」「注文したいので以下の製品に対して見積書を発行してほしい」「船荷証券を発行してほしい」といった要望に応えるような形になります。
オーソドックスな業務内容として「受発注の管理」「顧客との英語・ドイツ語等でのコレスポンデンス」が挙げられ、少し難易度が上がるとドイツ国外への貿易や三国間貿易に対する「フォワーダーとの連携」「貿易保険の手配」「売掛保険の手配」「輸送費の見積り」「Invoiceの手配と売掛金の管理」等も任せられるようになります。
このように、社内の「物流部」「営業部」「経理部」等様々な部署と横断的に折衝を行うため、チームワーク力が不可欠で、難しい場面でもあまりパニックにならず、フレンドリーにこなせる力が要されます。
上述の通り、個々の営業アシスタントには売上目標のようなものは課せられることが少なく、顧客からメールでのオーダーがハイペースで入ってくるため、そうした問いに対する回答・顧客の対応に業務の大半を割く形です。正確・迅速な受発注、社内のコミュニケーションの強化といった部分が営業アシスタントの成果として求められる部分で、また成果を上げた場合、そこからInnendienst(出張を伴わない営業)などに配置転換されることもあります。
- 出張はほとんどなく、顧客と顔を合わせることは滅多にない
- 営業や顧客からオーダー受け、システムへの打ち込みと発注手配を行う
- 様々な部署のハブとなるため、企業内でのチームワークが重要
- 英語やドイツ語での(特にメールでの)スキルが要される
- 売上の数字等に対する責任はない
応募の要件
このように、ドイツ企業におけるエリア職のような「在独日系企業の営業アシスタント」のポジションですが、応募に際して具体的にはどのような要件があるのでしょうか。
上述の通り、ドイツ国内外の顧客と直接メールなどでやり取りをするケースが多いため、必然的に語学力が要されます。英語に関してはB2レベル以上、ドイツ語に関してはマストではない、というのが一般的な在独日系企業の営業アシスタントポジションに対する応募要件です。
B1 | B2 | C1 (流暢) | |
IELTS | 4.0~5.0 | 5.5~6.5 | 7.0~8.0 |
TOEFL iBT | 42~71 | 72~94 | 95~ |
Cambridge Scale | 140~159 | 160~179 | 180~200 |
(TOEIC) | 550~784 | 785~944 | 945~ |
営業アシスタント職への応募では、職歴が重要視されます。日本でエリア職での経験が長く、社内でのこうした受発注管理をおこなった経験があれば、在独日系企業でも高く評価され、内定の確率がぐっと高まります。また、過去に海外の顧客との取引をおこなったり、英語でビジネスをした経験があれば、さらにプラス評価となります。
特に、社内のチームワークの要となるポジションとなるため、日本のビジネス文化やマナー、メールの書き方などに知悉していることが前提条件となります。加えて、ドイツ、ヨーロッパの顧客を相手にするため、欧州文化への知見や、異文化コミュニケーション能力も求められます。
その他、パワポやエクセル、ワードといった必要最低限のオフィスアプリケーションの実務能力も重要です。
- 英語は最低B2レベル
- ドイツ語はあれば高評価
- パワポ、エクセル、ワードのスキルは必要
- 日系企業でのエリア職としての就職経験は非常に有利
- 対欧米人に対するコミュニケーション能力が求められる
どんな技能が重宝される?
上述した応募要件以外に、どういった技能があれば重宝されるのでしょうか?在独日系企業は、欧州統括としての機能を持つケースが多く、その場合ドイツ国外の国との折衝が頻繁に行われるため、英語以外もう一か国語、欧州言語(スペイン語、フランス語、ロシア語等)に対する素養があると非常に有利です。
また、受発注管理に加えて書類の作成、フォワーダーとの連携や保険関連の業務もおこなうことがあるため、こうした「貿易実務」に関する知識が前もってあれば、やはり高く評価されます。
企業によっては、一度日本や他の生産拠点からドイツに持ってきた製品の品質管理(Quality Management)も複合的な業務の一環として求められることもあり、この分野での知見は将来的な給料アップに有利に働きます。
Invoiceの作成、売掛保険の手配など、一部会計の範疇に手を出すこともあるため、マスターしている必要はなくとも、こうした領分の知識があるとこれもまたプラスの要因となります。
- 欧州他言語の素養
- 貿易知識
- 品質管理能力
- 会計・財務能力
どんな性格の人が向いている?
性格に関して言うと、欧州各国の顧客とのやり取りをメール・電話で行う業務になることから、様々な国の人との対話を楽しめる性格の人が適していると言えます。そのため、欧州の文化に興味がある、過去にヨーロッパで留学経験がある、といった経歴の人に特に人気の職種です。
一方で、社内では日本人の駐在員、営業との連携が重要なため、高度なコミュニケーション能力、特に人当たりの良さ、気配り、地道で堅実な性格、などが適した個性として挙げられます。
- 異文化コミュニケーションが得意
- 気配りができる
- 地道・堅実な仕事に適性がある
どんなスキルが身につくのか
最後に、こうした環境に身を置いて、営業アシスタントとしての仕事をした場合、どのようなスキルが身につくのでしょうか。
業務の大半は、ドイツ国内外の海外企業とのメール・電話でのやり取りになるため、おのずと英語やドイツ語のスキルが成熟します。会社によっては、そのための語学研修費用を持つところもあり、語学を活かした職に就きたい人に最適です。
また上述の通り、営業アシスタントはドイツのほぼどのような企業でも求められるポジションのため、非常につぶしが利く職種として知られ、特に在独日系企業で貿易実務などを身に着けた場合、以後の職探し(例えば、パートナーの転勤に伴う)にはあまり不自由しないキャリア形成が行えます。
- 優れた語学能力が身につく
- 貿易実務能力
- 以後のドイツにおける転職市場で有利になる
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