昨今のコロナウイルスの影響で、人事採用のプロセスも急激な変化を遂げています。

今回では、以前からその使用者数が増加し始め、外出自粛令とそもに面接のトレンドとなったWeb面接のメカニズムと注意点を、ドイツの状況を交え説明していきます。

Web面接を取り巻く2020年の状況

今までは、海外応募者のための遠隔地における面接など、特別な理由がある際に用いられていたWeb面接ですが、昨今、日本との間やドイツ国内でも、交通費削減や移動時間短縮などの理由からWeb面接の件数は増加しています。

世界的には、このWeb面接は2010年代から増加傾向にあり、アメリカのIT会社, Software Advice社の調べによれば、全応募者の半数以上がなんらかの形でWeb面接を経験しています。

日本では、旧来の対人形式の面接が好まれる傾向にありましたが、マイナビ調べによると、2020年卒の日本人応募者のうち、20%がWeb面接の経験があると答え、2019年卒の11.5%と比較し、前年比で約2倍近く増える結果となりました。

Adapted from マイナビ学生就職モニター調査

ドイツも日本同様、もともと旧式な対人の面接が好まれる文化でしたが、コロナウイルスとそれに起因する外出自粛令などに応じて、2020年3月現在、多くの企業が対人面接からWeb面接に急速にシフトしつつあります。この状況下で、約67%のドイツ企業がオンライン面接の強化を示唆しており、この傾向はコロナ収束後も続くと予想されます。

このように日本だけでなく世界的にも、コロナウイルスの問題が持ち込まれる前から徐々にではありますがWeb面接が企業間に浸透しつつあり、そこに外出自粛例が呼び水となって、各企業が積極的にオンライン面接に移行し始めたというのが2020年の現状です。

Web面接の仕組みと基本情報

さて、具体的にWeb面接のメリットとはどのようなものなのでしょうか。応募者側にとっても、企業側にとっても、以下のような点がWeb面接のメリットとして知られています。

  • 交通費負担の削減
  • 応募者の移動時間の削減
  • 企業並びに応募者の時間的都合がつけやすい
  • 身体的に距離をとらなくてはいけない際に有効(コロナウイルス等)

企業側および応募する側は、パソコン、あるいはスマートフォンのアプリなどを用いてビデオ通話を行い、実際に部屋で対面するのと同じような形式で、面接を行うことが可能です。

Adapted from マイナビ学生就職モニター調査

一方で、システム障害や目線の合わせにくさなどのデメリットも存在し、かつお互いの真意が伝わりにくいという懸念もあるため、コロナウイルス発生以前、Web面接は一次面接などに限定されるケースがほとんどでした。

外出制限など特殊な状況下では、一時的に「一次面接から最終面接まですべてWeb面接で完結」というケースが発生しますが、一般的には、やはり最終面接など意思確認が重要とされる場面では、旧来の対人面接が好まれると予想されます。

Web面接に使用されるアプリケーション

ドイツのWeb面接では、一般的に以下の3つのアプリケーションの使用が推奨されています。

  • Skype
  • Zoom
  • Cisco Webex

いずれも、無料版と有料版とで使い勝手に違いがあります。

無料版で使い勝手がよいのはSkypeですが、アプリケーションのダウンロードと、マイクロソフトアカウントの作成が必要で、相手側もアカウントを持っているかどうかの確認が必要です。

Zoomは、アカウント作成不要(ホストを除く)ですが無料版の場合グループチャットの制限時間が40分までとなっています。

Cisco Webexの有料版は、セキュリティの面、機能性、最大配信数などで特にWeb会議に特化したアプリだといえますが、使用料の相場は他社に比べて高めです。

  参加可能人数 アカウント 画面共有 制限時間 有料・無料
Skype 25 必要 可能 なし 無料
Skype For Business 250 必要 可能 なし 有料
Zoom 100 主催者のみ必要 可能 40分 無料
Zoom Pro 100 主催者のみ必要 可能 なし 有料
Webex 25 必要 可能 40分 無料
Webex Business 最大1,000 必要 可能 なし 有料

実際にどのアプリケーションを使用するかは、会社の状況やアカウントの有無によって左右されます。

Web環境の確認

こうしたアプリケーションによるWeb面接をセッティングする場合、Wi-Fi環境が必要となります。ビデオ通話を行う場合(特にグループでの場合)、ある程度質の高いWi-Fi環境を整えなくてはいけません。

例えば、Skypeの推奨する最低ダウンロード速度は、ビデオ通話の場合128kbps, 3人でのビデオ通話の場合512kbpsが最低限要され、推奨速度はその3~5倍になります。

通話の種類 最低ダウンロード/アップロード速度 推奨ダウンロード/アップロード速度
通話 30kbps/30kbps 100kbps/100kbps
ビデオ通話 128kbps/128kbps 300kbps/300kbps
ビデオ通話(3人) 512kbps/128kbps 2Mbps/512kbps
ビデオ通話(高画質) 400kbps/400kbps 500kbps/500kbps

(Adapted by Skype Support)

Web面接によるトラブルと注意点

上述のようなメリットがある一方で、Web面接に関するトラブルも多数報告されています。

応募者のインターネット環境が悪く、突然不通になってしまった

通話中にノイズが入り、面接に集中できなかった

各社の試算データによって異なりますが、おおよそ6-15%のケースで、なんらかのトラブル(通信障害等)に見舞われるという報告がされており、事前に通信環境のチェックを行う、別の通信手段を用意しておくなど、対症療法的な措置が必要とされます。

また、システム上の障害以外にも「目線でどこを見たらよいか分からない」「カメラのセッティング」「話すときの音量」「背景は自宅でもいいのか」といったような、通常行われる対人での面接では気にならないような点も、Web面接の場合には気を付けなくてはいけません。

Adapted by Software Advice

こうした部分に関しては、社内などで一旦Web面接のテストを行い、ビデオ録画などして音量や目線に問題がないか、フィードバックを出し合うことが良いとされています。

Web面接による採用はおススメできるか?

最後に、今回の記事のまとめを行います。

  • コロナ以前にも、Web面接の需要は増えつつあった
  • 外国ではおよそ半数以上がWeb面接を経験、日本では新卒の20%が経験
  • ただし、最終面接まで一貫して全てWeb面接で行うケースは稀で、コロナ収束とともに対人面接の需要は回復すると予想される

重要なのは、Web面接は距離的、政治的、身体的に問題がある際に講じられるあくまで補完的な手段であり、やはり応募者・企業ともに従来の対人面接を好む傾向にあります。

とはいえ、グローバルモビリティの増加に伴い、今後も日本・ドイツ間など遠隔地を結ぶWeb面接や、こうした有事の際の面接を勘案する必要があり、応募プロセスのどこかの一部分(例えば、一次面接のみ)をWeb面接でまかなうという企業は今後増えていくでしょう。

それゆえ「Web面接のみで全て完結」「Web面接は全く受け入れない」という両極端な意見に走るよりも、従来のやり方と、Web面接を併用し、お互いの長所を取り入れた新世代の面接に転換していくことが求められています。

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