このカテゴリでは、Career Managementのサービスを利用して、ドイツでの就職活動に成功した方々の事例をピックアップし、紹介していきます。

今回は、日本で海外との輸出入業務に携わった経験をもとに、現在はドイツのロジスティック部門で欧州と日本市場の橋渡しとして活躍する、安藤さん(当時29歳、仮名)のストーリーを紹介します。

きっかけは海外旅行、学生時代に降ってわいた異文化への興味

安藤さんはもともと、海外とは接点のない学生生活を送っていました。学部も、教育学部という海外畑や英語とはかけ離れたもので、一般的な日本の学生同様、サークルとバイトに勤しみ、大学生活を謳歌していました。

そんな彼に初めて異文化に接するきっかけが訪れたのは、大学2年生の夏休みのことです。就職活動を翌年に控え、今まで海外旅行にいった経験もなかった安藤さんは、これが最後のチャンスと思い、2週間の短期限定でニュージーランドの語学コースに申し込みます。

もともと、英語に興味があったというよりは、海外の新しい風景や自然に心を惹かれたという安藤さん。今回も、語学コースは口実で、2週間ニュージーランドで生活し、大自然を謳歌しようという心づもりでした。

そんな、いわば「ついで」のつもりで申し込んでみた語学コースですが、実際に体験してみると、異文化との接触、慣れないホームステイ生活など、安藤さんにとって心惹かれる体験づくしで、あっという間に2週間が過ぎ去ってしまいました。

英語の実力こそ、たった2週間の限定されたものなので、そこまで身に付きませんでしたが、このとき、安藤さんの頭の中に漠然とながら「将来海外で生活するのも悪くないんじゃないか」という考えが芽生えます。

この時の経験が、のちに7年越しにおこなわれる彼のドイツ就職活動の原動力となってきます。

New Zealandの大自然

国内のロジスティック部門でのキャリアアップ

さて、このニュージーランドでの経験がきっかけで、安藤さんは就職の際も、どことなく海外企業と接する機会が多そうな職に特に力を入れて就職活動をおこないました。

とはいえ、安藤さんの中でこの時すでに「絶対に海外で駐在員になってやる」という強い気持ちがあったというよりは、どこか曖昧に「海外と折衝する仕事ができたら楽しいな」という程度のものでした。

そうして大学を卒業した安藤さんは、見事日本の大手物流会社に内定を勝ち取り、希望通り海外との折衝機会の多いロジスティック畑でのキャリアを歩み始めます。

仕事では、国内の物流管理に加え、海外との折衝、特に輸出入に関する実務なども任され、安藤さんの望んだとおり、採用からものの数年で、念願の「海外に触れる仕事」に携わることができます。

空き時間を活用して英語の勉強に勤しみ、数年間の実務を経たのちには、ネイティブとまではいかないものの、仕事で使用するには十分差支えの無いレベルの英語力を身に着けるようになっていました。

仕事のほうも順調です。自分で調達を管理した製品が日本の市場で売り上げを伸ばすと、チームの成績も向上し、安藤さんも心のどこかで「海外と日本の市場の橋渡しをおこなっている」というやりがいを強く感じるようになっていきます。

さらなるダイナミックな活躍を目指して

とはいえ、安藤さんの部署、ひいては企業の方針はあくまで国内物流の管理で、輸出入は副次的なものでした。それゆえ、海外駐在などのチャンスも少なく、このまま順調にキャリアを積んでいくと、中々海外勤務は望めないような状況でした。

国内で順調なキャリアアップを積む中で、安藤さんは心のどこかで、あの大学生のときに味わった、海外生活への憧憬を捨てきれずにいます。

この時、安藤さんは29歳。「30歳を越えたら、人生はあっという間」という知人の言葉が頭に残っていました。

自分の性格を鑑みるに、安藤さんは、「やらない後悔よりやって後悔」という言葉が自身に適していると感じていました。日本での順風満帆なキャリアを捨ててでも、一度きりしかない人生の中で、自分の夢を追い求めたい、という衝動に駆られます。

そんな思いを胸に、安藤さんは30歳の誕生日を前にして、数年勤めた会社を退職。海外で再就職するため、よりチャレンジングな道を選びました。

日本国内からの応募

さて、勢いに任せて会社を退職した安藤さんでしたが、この時点で転職先が決まっていたわけではなく、それどころかどこの国で仕事をするかの選択さえもまだおこなっていませんでした。

安藤さんのリサーチの結果、生活環境、賃金水準、就職のしやすさなど、総合的に鑑みるに、ドイツでの就職が一つの候補としてあがります。数ある候補地の一つとして、安藤さんはドイツでも応募してみることにし、ドイツ就職に実績のある当社にコンタクトをおこないます。

この時の安藤さんの状況・要望としては、以下のようなものでした。

  • 日本にいながら就職活動を行いたい
  • 日本人にとって働きやすい環境を望みたい
  • 仕事環境だけでなく、生活一般に対しても高い水準を保てる国がよい
  • 現在のキャリアを活かせる業務内容がよい
  • 日本と欧州市場の橋渡しとなる、ダイナミックな業務がおこないたい

安藤さんが当社、Career Managementとのコンタクトを開始したのは、前職を退職した直後の10月のことです。できれば年内に就職先を見つけたい、という安藤さんの要望に応えるため、就職活動はタイトなスケジュールで行われました。

安藤さんが当社のHPを通じて履歴書を送付して後すぐに、担当者から安藤さんにコンタクトが行われます。その後、スカイプで当社担当者と安藤さんとの間で情報共有、自己紹介などが行われ、当社の500以上のジョブリストの中から、安藤さんに適した職種のすり合わせがおこなわれました。

通常、ドイツでの就職は応募者がドイツにすでに居を構えている状況で開始され、ビザや住居、面接日程などの問題がないことが多いですが、今回のケースは、当の安藤さんが日本にいながらの就職活動です。

距離感の難しさもあり、安藤さんは、職が決まらないままの年越しを早くから覚悟していました。ところが、思ったよりも早く、条件にあう転職先候補が見つかります。

10月後半、Career Management社を通じて、在独の日系企業のロジスティック部門の採用者を探している情報が安藤さんのもとにもたらされました。業務内容、企業概要などの詳細を担当者より聞いた安藤さんは、是非この会社で面接を受けたい旨を伝え、とんとん拍子で日程の段取りが行われました。

お互いのスケジュールの都合で、ドイツの人事担当者との面接は、スカイプという形で行われます。11月、2度にわたる面接の結果、安藤さんは見事、希望職種であったロジスティック部門での内定を勝ち取ります。就職活動を始めて、わずか2ヵ月のことでした。

日本にいながら就職活動を成功させた要因

今回紹介した安藤さんは、日本にいながらドイツでの就職、という難しいステップを見事にクリアしました。

前回の就職者、木村さんの例ではドイツの大学院で専門的にロジスティックを勉強し、住居もドイツにあってからの応募だったので障壁は安藤さんと比べるとまだ易しいものだったと言えるでしょう。

そのために、木村さんは、欧州の中でも日系企業とのつながりの深いドイツで、体系的に欧州流のビジネスを学ぶため、ドイツの経済系の大学院の門を叩きます。ドイツの大学院のシステムは、あまり日本人には知られていませんが、業務に直結するような実践的な専門大学から、理論的なことを学ぶ大学コース、他にも、1年で通えるようなものや、英語のみで卒業できるMBAコースなど選択肢が豊富で、木村さんはその中で、今までの金融の専攻を離れ、ロジスティクス系に特化した知識を身に着けることにしました。
出典:国内法人営業からドイツでロジスティック部に転職

多くの海外就職希望者が壁に直面するように、日本にいながらドイツで就職活動をするのは楽な道ではありません。安藤さんの成功のカギは何だったのでしょうか。

  • PRポイントがある
  • モチベーションがある
  • 英語に堪能であった

今回の就職活動では、上述の3つの条件が、安藤さんの成功の秘訣と言えます。

第一に、安藤さんは日本の物流畑で順調なキャリアを積んでおり、管理職の経験もあります。海外就職の際に重要になってくる、わざわざ日本に住んでいる候補者を採用したいと人事担当者に思わせる「PRポイント」を十分に持ち合わせていました。

また、仕事を通じ、単に漠然と海外に移住したい、という思いだけではなく「海外市場と日本市場をつなぎたい」という確固たる意志を持ち合わせていたことも、ここではプラスに働きました。

最後に、ドイツ語こそ話せなかった安藤さんでしたが、日本時代に英語を独学で学び、また仕事を通じて英語を使用した経験がある、というのも大きな強みです。特に、ドイツ語がマストになるケースが多いドイツ企業と比べ、在独の日系企業であればむしろ英語力が好まれることが少なくありません。

学生時代の夢と経験に後押しされ、30歳を前にして念願の海外就職の門戸を叩いた安藤さん。渡独後はそこまで残業に煩わされることもないため、就業後の時間をドイツ語学習にあて、渡独から1年たった今、ドイツ語でのコミュニケーションが可能なまでに上達しました。

なにかと制約の多い、日本にいながらのドイツ就職活動ですが、安藤さんの例は、チャレンジ精神とスキルさえあれば、十分に成功させることが可能だということを示しています。