ドイツで特定の条件を満たすと、日本人であってもドイツで失業手当を受け取れる資格を得ます。もっとも、この失業手当に関する諸手続きは、自身で受給申請をしなくてはいけないうえに、様々な条件や規定が存在しており、それらに抵触すると受給資格を失うこともあります。今回の記事では、日本人の躓きやすい失業手当のイロハについて紹介していきたいと思います
本記事と並行して「ドイツで退職・転職が決まったら最終日までにすることリスト」の記事も参照ください
失業手当の概要と受給資格
ドイツにおける失業手当の原型は、第一次世界大戦直後の混迷を極めるワイマール政権下で整えられました。その後、幾多の改定や変更を経て、現在のようなドイツの「失業保険」が形作られたのです。
失業手当には大まかに「ALGⅠ」と「ALGⅡ」に分類され、一般的に前者は自身の失業保険から支払われる失業手当で、後者は税金から公的扶助の目的で支払われる失業手当(※生活保護)であるという違いを持ちます。今回の記事で触れるのは「ALGⅠ」のほうになります。
上述のテーブルに書かれた内容がドイツにおける失業手当の「概略」になりますが、実際には年齢、健康状態、子供の有無、過去の雇用状況、退職理由などで支給額や支給期間は変動します。
参考になるサイト: Arbeitslosengeld: Anspruch, Höhe, Dauer
失業手当の申請手順
失業手当を適切に受給するには、当然のことながら失業手当の申請が欠かせません。会社を退職することになったからといって、自動的にドイツの労働局から失業手当が支給されるわけでないので注意が必要です。
早め(3ヶ月前を目安) Arbeitsagentur-Webサイト
または最寄りのジョブセンターで
失業初日までに
最寄りのジョブセンターで手続き
ジョブセンター窓口で
必要書類を提出
求職者登録(Arbeitsuchend melden)
自身の契約が延長されなかったり、あるいは自分から会社を辞めるなどの措置をおこない転職先を定めていない場合、まずBundesagentur für Arbeitのポータル上で「求職者」としての登録を行う必要があります。この求職者登録は、自身が会社を辞め失業者となることが判明し次第「遅滞なく」おこなうことが義務付けられており、この登録が滞ると後々得られる失業手当の額に影響を及ぼすので注意が必要です。基本的に労働局は「失業3ヶ月前」の求職者登録を推奨していますが、即時解雇などでこの3ヶ月ルールが適用できない場合、情状酌量が認められることもあります。この辺の判断は担当者の裁量や個々のケースによって異なるといえるでしょう。
会社によってはAufhebungsvertrag(労働契約終了のための契約)を結ぶため、この日付などが「失業することが判明した日付」と見なされることがあります。いずれにせよ、即座に求職者登録をおこなっておくことが満額失業手当を得るためのポイントとなります。
失業者登録(Arbeitslos melden)
上述の求職者登録と失業者登録は異なるもののため、別途申請が必要な点に注意しましょう。失業者登録は失業日の初日までに登録することが推奨されていますが、登録自体は失業日から遡って三ヶ月前から可能なため、できるだけ早い段階で登録をおこないましょう。
当該プロセスを進めるにあたって、書類が必要となったり、ジョブセンターでのカウンセリングが必要になります。Arbeitsbescheinungのように企業側に提出してもらうような書類もあるため、早めの人事担当者との折衝が必要になります。
失業手当の申請
上述のプロセスと並行して、失業手当を受け取るためには失業手当申請も必要となります。労働局の推奨は失業の2週間前の登録ですが、書類が揃い次第こちらも早い段階で申請してしまうことをお勧めします。それによって遅滞なく失業手当を受け取ることが可能となります。
失業保険受給に際する注意点
日本での失業手当同様、ドイツの失業手当も無条件に受給し続けることはできません。あくまで新しい仕事を見つけるまでの繋ぎとしてのニュアンスが強いため、その新しい仕事を見つける意欲が無かったり、すでに仕事があるのに失業手当を受給するのはルール違反となります。以下に、ドイツの失業手当受給に関するいくつかの注意点をまとめていきたいと思います。
長期の旅行などや休暇には担当者の許可が必要
失業中のモラトリウムを利用し、日本に旅行したり、どこか遠くに羽を伸ばしにいきたい、ということも多々あるかも知れませんが、失業手当を貰うという事は原則「一刻も早く仕事を見つけるための努力をする」という前提に成り立っているため、自由にドイツや現住所を離れることはできません。
とはいえ、毎日ひたすら求職活動ばかりしては気が滅入ってしまいますし、時には手続きなどの関係で遠くに行かなくてはいけないこともあるでしょう。というわけで、ドイツ労働局の定めでは、年間に21日間(3週間)の休暇を申請する権利を失業者は有しています。最も、この21日間には土日も含まれるため、例えば今週の月曜日から来週の月曜日まで丸々8日間の休暇を申請したい場合、文字通り8日間の休暇日数を消化しなくてはいけないわけです。
また、この休暇申請もオンラインなどで申請すれば無条件に許可されるわけではなく、あくまで担当者の許可を取る必要があります。この辺のプロセスは、一般的な企業で有給申請をする際に上司の許可を得るのと同じようなニュアンスになりますね。
Sperrzeit(待機期間)に要注意
日本での失業手当の受給期間が自己都合退職なのか会社都合退職なのかで分かれるのと同様、ドイツも離職自由が「自己都合」の場合、最初の12週間は失業手当を受け取れない、俗に言う「Sperrzeit(待機期間)」としてのカウントがなされます。
他にも、上述の求職者登録に遅れるなどの自由から1週間の待機期間を課されることもあるため、場合によっては必ずしも期待した期間の受給を得られないことがある点に注意しましょう。
参考になるサイト: Fachliche Weisungen Arbeitslosengeld
アルバイト可能だが給付額に影響を与える可能性がある
失業手当の給付を得ている状態でもアルバイト(Nebenjob)は可能ですが、その場合必ず事前に労働局に申請を行う必要があります。また、アルバイトをおこなう際にもいくつか条件があり、これらの条件を超過すると失業手当が打ち切られたり、減額されたりする危険があります。
注意点
- 週に15時間以上のアルバイトをおこなう場合、失業手当が打ち切られる
- 月165ユーロまでなら非課税枠内となり、失業保険の額に影響を及ぼさない
- その他経費の申請によって非課税枠を増やすことが可能
このあたりの条件も、労働局のサイトに書かれているからと言って自身で判断をおこなうことは危険です。必ず直属の担当者に相談し、許可を得たうえでアルバイトなどをおこなうようにしましょう。
参考になるサイト: Nebenjob und Arbeitslosengeld
他のEU諸国でドイツの失業手当を受け取れるかどうかは該当国の規定に委ねられる
ドイツとその他EU諸国の間では(該当国に関しては「Arbeitslosengeld und Auslandsbeschäftigung」を参照してください)失業手当の受給資格を持ち運ぶ協定が結ばれており、ドイツで失業手当を受け取る資格を持ち、かつその他EU国で求職登録をおこなえば、当該国にて一定期間失業手当を受け取ることが可能です。
最もこの協定、原則としてその他EU国で自身が求職者として登録できるかどうかはその国の制度や法律に基づくため事前に注意が必要です。多くの場合、その国でのシティズンシップなどが求められることになり、事実上日本人が自由にこの制度を享受することは難しいと言えるでしょう。こちらの規定に関しては、ドイツの労働局だけでなく、自身が求職したいと考えている国の求職センターなどで登録可能か否かの確認を事前に行っておく必要があります。
失業者は可能な限り求職義務を果たす必要がある
失業手当を受給するということは、一刻も早く仕事を見つけるため、求人への応募など求職努力をすることを前提としています。そのため、失業手当受給者は基本的に(月に2~5件の応募がセーフティラインと言われる)求人案件に応募する義務が生じます。
参考になるサイト: Bewerbungspflicht bei Hartz IV (ALG II)
この求職努力には、ジョブセンターから定期的に送られてくる求人広告への応募や、個人でリクルーターやサイトなどを介して応募した件数などに加え、また病気や両親の介護など不可抗力の状況なども考慮されるため、具体的になにをしたから受給資格や欠格したり減額されたり、という厳密な判断は下せませんが、定期的な担当者とのミーティングを通じてアドバイスを仰ぐ必要があります。
ジョブセンターから送られてくる案件は自身の条件に好みや合致しないことが多く、やはり前職よりもよい条件の仕事を得たい場合、自ら積極的に求職活動することをお勧めします。

