ドイツの大学や大学院に在籍する場合、当地での学生ビザが必要となります。こうした大学を卒業し、現地で働くことになったら、今度は学生ビザから就労ビザに変更する必要が出てきます。

今回は、ドイツの大学・大学院を卒業した後、どのようにドイツで就労ビザに更新すればよいのかの仕組みを解説します。

ドイツとビザの仕組み

ドイツに長期間滞在するためには、Aufenthaltstitelと呼ばれる居住許可を取得する必要があります。

日本とドイツの間では、ビザなし(旅行ビザ)で3ヵ月までの滞在が可能になり、それを超えてドイツに滞在する場合、学生ビザ、学生準備ビザ、ワーホリビザ、就労ビザなど、滞在の目的に応じたビザの取得が必要となります。

注意しなくてはいけないのが、こうした滞在の目的は厳格に区分けされており、例えば学生ビザでもってドイツの会社で普通労働を行うことはできず、逆に就労ビザで大学に通うこともできません(ただし、大学に通いながらのインターンシップなど一部例外あり)。

ドイツの大学・大学院を卒業した場合、このドイツ滞在の目的が兼行されるため、学業ビザから就労ビザへの切り替えが必要となりますが、基本的にドイツのビザ取得においてドイツの大学・大学院を卒業した場合、移民局も比較的ビザ申請を受け入れてくれやすい傾向にあります。

木村さんにとって幸運だったのは、大学院で、専門の勉強に加え、ドイツ語と英語、双方を身に着けるだけの時間がたっぷりとあったことです。そのため、日本での職種とは全く異なる職種を勉強しなおした木村さんでしたが、大学院卒業を控えた2年生の後半時には、ドイツ語、英語ともに堪能になり、すでにドイツ企業からも仕事のオファーを貰っている状況でした。また、ドイツの大学院を卒業した、というのも木村さんのビザ取得にとって追い風でした。ドイツの移民局は、ドイツで大学・大学院を卒業した者に対して比較的ビザの受け入れをしやすく、また永住ビザ取得のプロセスも短縮されます。”
出典:ドイツ就職体験談:国内法人営業からドイツでロジスティック部に転職

どこで行うのか

ビザの更改手続きを行う場所は、基本的に自身が住民票登録を行っている都市の外人局です(Ausländerbehörde)。例えば、ベルリンに住んでいる場合はベルリンの外人局、ハンブルグに住んでいる場合はハンブルグの外人局が管轄です。

注意しなくてはいけないのが、会社が居住区と別の都市に位置する場合でも、更改手続きは自身の住民票が属する都市で行う必要がある、ということです。

更改の際には、大抵の都市で事前予約が必要になり、都市によっては予約をするために2ヵ月以上要するようなところもあります。事前予約は、メール、オンライン、または直接インフォメーションセンターでおこなうなどの形式があります。

就労ビザが届くまで働けない?

ドイツ学生ビザを持っている場合、就労ビザを持っていなくても通常90日(年間)までの就業が可能になります。そのため、例えば4月1日から勤務開始するにも関わらず5月1日まで就労ビザが届かない、といったケースでも、原則的には現行の学生ビザの範囲内ですでに勤務を開始することが可能です。

ただし、実際にどこまでの就労期間が許容されるかなどは、学業内容やビザの種類によって異なってくるため、最終的には外人局の判断を仰ぐ必要があります。

学生ビザから就労ビザの更改に必要な書類一覧

以下、基本的に学生ビザから就労ビザに更新をする際に必要になる書類一覧です。ただし、実際には都市ごと、あるいは条件ごとにどういった書類が必要になるかはケースバイケースで、最終的には外人局の指示に従う必要があります。

  • Antrag (所定の申込書)
  • Pass(パスポートの原本及びコピー)
  • Exmatrikulationsbescheinigung(大学の除籍届)
  • Bachelorurkunde/Masterurkunde(大学の卒業証明書)
  • Aktueller Krankenversicherungsnachweis/ Bescheinigung (in Kopie) (現行の健康保険の加盟証明書)
  • Arbeitsvertrag(entwurf) (in Kopie)(労働契約書のコピー)
  • Mietvertrag (in Kopie)(賃貸契約書のコピー)
  • ビザ用写真
  • 申請用手数料(100€前後)

Antrag (所定の申込書)

申し込みを行う都市ごとにビザ申請用の所定の申込書が存在するため、外人局に問い合わせ、入手する必要があります(あるいはオンライン上でダウンロード)。

原則的に、質問事項はすべて埋めていく必要がありますが、分からない部分、不明瞭な部分は空欄にしておき、その場で確認しても問題のないケースが多いです。

以下、主要都市におけるビザ申請書式のダウンロードリンクです(PDFのダウンロードは各リンク先を参照)。

Pass(パスポートの原本及びコピー)

ドイツ内で発行されるビザの上限は、パスポートの残存期間に準じます。例えば、パスポートの有効期限が2019年10月までであれば、2019年10月までの分しかビザの申請をおこなうことができません。

そのため、パスポートの残存期間が極端に少ない場合、先にパスポートの延長を行っておく必要があります。目安としては、残存期間が1年を下回っていれば、ビザの申請に先立って延長しておくことをお勧めします。

Exmatrikulationsbescheinigung(大学の除籍届)

大学を卒業する際には、自分を大学から除籍する「Exmatrikulation」の申請が必要になります。この手続きを終えると、大学のオンライン画面などで除籍済の証明書がダウンロードできます。

後述する卒業証明書と同じく、間に合わない場合必ずしも持参する必要はないケースがほとんどです。

Bachelorurkunde/Masterurkunde(大学の卒業証明書)

大学・大学院で必要な単位をすべて取得し、試験局(Prüfungsamt)で正式に卒業が認められると、大学側から卒業証明書が送られてきます。

ただし、大学側ですべての認定プロセスが済むまでには1~2ヵ月程度かかることから、ビザの申請に間に合わない場合、この原本は必ずしも必要ではなく、大学の試験課に申請すれば数日で発行してもらえる「仮の卒業証明書」で事足りることがほとんどです。

Aktueller Krankenversicherungsnachweis/ Bescheinigung(現行の健康保険の加盟証明書)

カード型の健康保険証ではなく一枚物の「加入証明書」が必要になります。

加入している健康保険会社に連絡をすれば、郵送で送られてくるか、または支店に直接赴けばその場で発行してもらうことが可能です。

Arbeitsvertrag(entwurf)(仮の労働契約書のコピー)

労働ビザの発行時には、学生ビザの申請時に必要だった「銀行残高」が不要になる代わりに、賃金や雇用形態などが詳細に記された労働契約書が必要になります。

ただし、「entwurf」と書かれている通り、必ずしも署名入りの正式なものである必要はなく(ビザの発行まで、労働開始時期など空欄の場合もあるため)、あくまで仮の労働契約書でも代替可能です。

Mietvertrag (in Kopie)(賃貸契約書のコピー)

労働開始日がカバーされたドイツにおける正式な賃貸契約書も、ビザ申請時には必要になってきます。

原則として、ホステルや契約書の発生しないような民泊などは不可で、期限付きにしろ又借りにしろ、正式な賃貸契約の形式をとる必要があります。

日本人がドイツで働くうえでのネックの一つが、住居探しです。ドイツに正式な住居・アドレスが無いと、銀行も開けず、ビザも申請できません。日本の会社のように、借り上げ住宅や独身寮を手配してくれたり、という配慮はドイツの会社にはほとんどなく、仕事のオファーが決まったら、住居は自力で確保しなくてはいけません。”
出典:ドイツで現地採用された日本人がアパート/家を探す方法とコツ

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