貿易の重要な支払い条件の一つである前払い方式について、メリット・デメリットを紹介します。

英語     Prepayment

日本語    前払い

ドイツ語   Vorkasse

 解説

他の呼称としては、ドイツ語では「Vorauszahlung」、英語では「Cash before Delivery(CBD)」「Cash in Advance(CIA)」なども用いられています。

一般的にドイツにおける商取引では、品物の受け渡しと代金の支払いは同じタイミングでおこなわれることとなりますが、海外貿易などの場面においては、しばしば特殊な「前払い」制度が登場します。

前払いは、数ある国際貿易における支払い方法の中でも最も「売り手有利」な決済システムで、文字通り「買い手がまず代金を全額支払い、売り手はその後商品を引き渡す(発送する)」という流れとなります。当然のことながら、買い手にとっては支払い後に売り手が契約を履行しないリスクもあるわけで、特殊な場合を除くとあまり用いられることがありません。

具体的には、以下のようなケースにおいて「前払い(Vorkasse)」による決済が用いられます:

  • 少額の取引
  • 買い手の信用が少なく、売り手のパワーが強い場合
  • 両者の間で確固たる信頼関係が構築されている場合
  • 他の決済方法をおこなう時間的余裕がない場合
  • その他決済方法による諸経費を軽減する目的
  • 前払いに対するディスカウントを設けている場合

国際貿易において、お互いのリスクを軽減するためには、CADやL/C(Letter of Credit、信用状)による決済などを用いることが少なくありませんが、いずれにせよ書類作成の手間や時間、銀行フィーが発生し、場合によってはそれが最適解とは言い難いケースも存在します。例えば、少額かつ一刻を争うような発注場面において、悠長にL/Cの準備をする意味合いは低いと言え、こうした場合では前払いも度々用いられます。

一方で、上述の通りあくまで「売り手有利」な決済システムであることに変わりなく、高額案件の場合ではCAD、L/C、取引保険などを組み合わせた支払いタームなどが用いられやすいと言えます。