※本稿は2025年1月に更新されています

何をもって移住しやすいと定義するかはその時々に応じた評価が必要かと思いますが、一般的に「生活費」「仕事の見つけやすさ」「コミュニケーションの取りやすさ」などが指標として挙げられるのではないでしょうか。

転職ペンギン

ご飯の美味しさとかも、評価対象にしてほしいけど。。

フェリ

主観的なものは数値化が難しいからね。あくまで客観的に判断した住みやすい国ランキングを作成する、というのが今回の目的よ

今回は、独自の指標を元に、ヨーロッパで日本人にとって移住しやすいと思われる国ベスト5位をランク付けしました。

指標

今回評価するのは、以下の4つの項目です。

  1. 生活費指数
  2. 購買力指数
  3. 日本人にとっての就職難易度
  4. 現地の英語力

生活費指数と購買力指数は、Numbeo社が公表しているニューヨーク市との比較における現地の生活費・購買力を参考にしました。このサイトによると、例えば日本の生活費指数は50.7で、ニューヨーク市の約半分近い生活費が享受できる、といった形です。この生活費指数が高ければ高いほど、現地の生活費が高いことを示します。

また、現地購買力指数は文字通り現地で得られる購買力、給与指数(※額面ではなく、可処分所得を元に計算)を示しており、生活費指数が低く購買力指数が高ければ、「高収入低支出」での生活が可能な、住みやすい国、という判断ができます。こちらもニューヨーク市を対象としており、一般的に100を超えると余裕がある生活がおこなえます。

日本人にとっての就職難易度に関しては、恣意的なランキングになってしまいがちなので、各国に展開している日系企業の数を参考にしました。基本的に、日系企業の数が多いほど日本人の採用需要も高い傾向にある、という仮定に基づいてランク付けを行なっています。外務省の資料でも、基本的に日系企業の拠点の多い国=日本人の滞在者数が多い国であり、ある程度の相関関係は仮定できます。
(参照:海外在留邦人数調査統計

最後に、英語力に関してはEF English Proficiency Indexを参考にランク付けしました。このランクが高ければ、職場や生活圏、お役所関係で英語の通じる可能性が高く、意思疎通に困難を持ちづらいという指標になります。

日本人が住みやすい国ランキング

さて、上記のデータをまとめると、以下のような結果となります。

  生活費指数 購買力指数 就職し易さ 英語の通じ易さ
1位 ドイツ C A A A
2位 イギリス C B B 公用語
3位 フランス C C C C
4位 オランダ C A C A
5位 スペイン A D D D
参考: 日本 B B E

数値的な結果を元に、A~Eまでの評価を行ないました。Aは最も優れていて、アルファベットが遠ざかるにつれてランクが下がっていきます。

転職ペンギン

ドイツ、イギリス、フランス、オランダ、スペイン、の順だね

フェリ

北欧諸国はワークワイフバランスが高く一見良いようにみえるけど、気候環境が厳しいことと、日本人にとっての就職口が限定的であることから、移住難易度は高いわ。アイスランドやリヒテンシュタインのようなマイクロ国家も同様ね。

(生活費、購買力、日本人の就職し易さを元に著者作成)

1位 ドイツ

  • Cost-of-living index: 62.7%
  • Local purchasing power: 101.00%
  • 日系企業拠点数: 1947社
  • 英語ランキング: 8位

ドイツには令和5年時点で1947社の日系企業が進出しており、ヨーロッパで唯一日系企業の数が1000社を超えている国となります(北米、アジアが主な進出先)。在独日系企業内における日本語人材もさることながら、日本との貿易額も大きいため、ドイツ企業でも日本市場開拓向けの日本人人材の採用需要は一定数望めます。

生活費水準は62.7%と、ニューヨークよりも生活にかかる費用が低い一方で(ちなみに、賃貸料金を鑑みると更にその差は広がり、ニューヨークの6割以上安い物価指数を享受できる)、購買力指数は101%とヨーロッパの中でも高い水準を保ちます。生活費の安い要因として、EU各国からの免税措置のため野菜・果物など生活必需品が安く購入できる、生活必需品に関しては減税されている、などが挙げられます。

転職ペンギン

確かに、ドイツの野菜や果物は安い印象だね

フェリ

要約すると、日本よりも高い給料で、安い生活費を享受できる国、ってことね。ドイツでの食費ドイツでの給料に関してはそれぞれリンク先の記事を参考してね

英語力に関して言うと、世界で8位の英語力を持ち、オランダや北欧と遜色のないレベルです。お役所や公共交通機関はおろか、スーパーやファーストフード店でも英語が通じることが多く、ドイツ語が話せなくても不自由することは少ないです。

加えて、ビザ取得要件も日本人にとっては比較的易しく、ドイツで仕事があればほとんどの確率でビザを取得できます。また一般的に、5年以上納税を行なえば永住ビザへの切り替えが可能です。

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2位 イギリス

  • Cost-of-living index: 63.7%
  • Local purchasing power: 90.1%
  • 日系企業拠点数: 928社
  • 英語ランキング: 母国語

EU脱退前は1000社以上の日系企業が拠点を持つ、ドイツと並ぶ欧州の重要拠点でしたが、ここ10年で徐々に日系企業の数が減少しつつあります。一方で、欧州内での日系企業の数は2位であり、英語が公用語として通用することから、留学生、駐在員の中でいまだに根強い人気を持ちます。

イギリスの場合、ロンドンを中心とした「都会」とそれ以外とで物価水準の格差が激しく、大都市を避ければ住みやすい生活が望めるでしょう。ただ、エネルギー価格高騰の煽りを大きくうけた国の一つであり、今後もインフレのリスクが避けられません

転職ペンギン

イギリスに進出している日系企業って、ドイツよりも少ないんだね

フェリ

EU脱退後、多少人気は落ちたとはいえ、いまだに金融・経済の中心的存在であることに変わりはないわ。世界で有名な大学の上位ほとんどはアメリカとイギリスだし、母国語が英語というのはやはり大きなメリットね

3位 フランス

  • Cost-of-living index: 66.0%
  • Local purchasing power: 83.6%
  • 日系企業拠点数: 820社
  • 英語ランキング: 28位

ドイツ、イギリスに次いでヨーロッパ三位の大国フランスには、820社もの日系企業の拠点があり、特にパリは欧州でも随一の日本人コミュニティが存在し、多くの留学生・駐在員が生活しています。

生活費指数は過去数年のインフレによって高騰しており、特に都市部では賃貸料を含め厳しい生活が続いています。もっとも、ドイツ同様EU経済圏の恩恵によって、野菜や果物は日本よりも安くスーパーで購入することが可能です。

英語力はヨーロッパでは中堅レベルの28位ですが、実際には英語ではなくフランス主体とした生活になることが少なくありません。フランス語に根強い誇りを持つフランス人にとっては、フランスに住む人にはやはり外国人であろうとフランス語を話してほしい、という意識が大きいのでしょうか。

転職ペンギン

フランス人はフランス語でしかコミュニケーションしたがらない、って言うよね

フェリ

中には英語がペラペラな人もたくさんいるのだけど、どうしてもフランス語文化というものが根強く、話せても話したがらない人、というのが多い印象ね。中にはお酒が入ると英語話せるようになる人も・・

4位 オランダ

  • Cost-of-living index: 64.3%
  • Local purchasing power: 103.3%
  • 日系企業拠点数: 700社
  • 英語ランキング: 1位

国土も小さく、人口もヨーロッパ12位と小国ながら、英語の通じやすさ、地理的な利便性などから、700社もの日系企業が進出してるオランダです。イギリスのEU離脱と共にそのプレゼンスを増しており、日系企業の進出数は数年前の約2倍となりました。

給料が高いにもかかわらず、高い所得税で知られており、現地購買力は日本とあまり変わらないような水準になっています。ドイツと一番似た経済構造ですが、日本人の就職できる間口が限られているためこの順位です。

オランダは高い英語力で知られており、世界的に見てもトップ水準の実力を持ちます。公用語でこそありませんが、田舎の公共交通機関からスーパーまで、ほとんどの場面で英語が通じるのが魅力ですね。

転職ペンギン

オランダは九州と同じくらいの大きさ。にもかかわらずヨーロッパでは強い影響力を持っているんだね

フェリ

オランダは規模的には小さいけど、日系企業が欧州の統括拠点として使用することが多く、優秀な人材を常に求めている印象ね

5位 スペイン

  • Cost-of-living index: 48.4%
  • Local purchasing power: 78.2%
  • 日系企業拠点数: 404社
  • 英語ランキング: 34位

ヨーロッパ6位の人口を持つスペインです。似たような経済水準と人口を持つイタリアよりも生活費が安く購買力が高いので、こちらを5位にランクインさせました。日系企業の拠点数は404社と、イタリア以上の日系企業数を持ちます。

英語力に関しては、世界でのランキングが34位と、今回紹介する国の中では唯一、「ハイレベル」ではなく「中レベル」として英語力が評価されている国です。マドリッド等都心部はともかく、地方や年配の方たちの間では、英語は通じにくいことが多いでしょう。

数値を見るとドイツやイギリスに見劣りしそうですが、「温暖な気候」「おいしい食事」「友好的な国民性」など、数字以外の点で生活のメリットが大きく、スローライフを目指すのであればスペインやイタリアといった南欧諸国のほうがお勧めできるポイントが多いかもしれません。

転職ペンギン

給料以外にも、加味しなくてはいけない点はあるよね

フェリ

ドイツやイギリス・北欧諸国は、経済的には安定しているけどその分性格は冷たい、という人は多いわね。。どこが住みよいかは人によるのかも