外務省統計によると2025年現在、海外に在住している邦人の数は約130万人(長期滞在+永住者)、うち100万人が成人年齢に達しており、その割合の多くが駐在員、または現地採用者と見受けられています。
英語力を活かしたい、海外でキャリアアップしたい、海外のエキゾチックな雰囲気に憧れる、外国の料理が好き・・海外就職を志す動機は多様で、そのための手法もいろいろと謳われていますが、一部の国と地域を除いて意外と情報収集の難しい海外就職。
本稿では、漠然と「海外就職」を考えている人のための徹底解説をおこないます。
・海外就職するにはどうしたらいい?
・どんなスキルがあれば就職できる
・どこの国がおススメ?
海外就職の背景
そもそも、海外就職の熱が改めて高まっているのは何故でしょうか?
以下、3つの背景的理由を紹介します。
- ワーホリや短期留学の活用による心理的ハードルの低下
- インターネットの普及による情報網の充実
- 長期的な円安・不況による若者の国外への憧憬
1 ワーキングホリデーや短期留学の活用による心理的ハードルの低下
1980年、オーストラリアとのワーホリ協定を皮切りに、2025年現在で日本は世界29ヵ国とワーホリの提携を結んでいます。特に2010年代後半になってスウェーデン、エストニア、オランダなどヨーロッパの国々との協定が拡充、現地にツテや情報網の無い若者が「とりあえず」海外に行くことの後押しの要因として挙げられています。
1年と言う短い期間ながら、ワーホリ中は就職活動、就業も可能なため、ワーホリ中に就職先を見つけ、ワーホリ後に就労ビザに切り替えるケースも増えています。
2 インターネットの普及による情報網の充実
かつて留学や海外就職は、一部のエージェントに集約された情報を頼りにおこなうものでした。現在、YouTubeやブログ、SNSなど様々な情報ソースが出回っていることもあり、こうした発信者の中から自身のライフプランに適した移住先を選びやすい環境が備わっていると言えます。
インターネットを駆使した情報網の拡充により、かつては情報の収集しづらかったヨーロッパや東南アジアの実情が分かるようになり、海外就職の心理的ハードルが下がったと考えられています。
3 長期的な円安・不況による若者の国外への憧憬
日本の労働環境や慢性的な通貨安に不安を覚えた若者が、大学卒業後や第二新卒の機会に海外への移住を決めるケースも増えています。2025年現在、日本の平均年収水準はOECD加盟国38ヵ国の中で29位と、下から数えたほうが早いランキングになっており、より良い労働環境と賃金を求めての海外移住の傾向が高まっています。
こうした中、十数年前に比べると情報もビザの取得の手続きも簡易化された部分が多く、若者の海外移住の後押しの要因になっていると思われます。
海外就職の種類
海外就職の方法には「駐在員」「現地採用(日系企業)」「現地採用(現地企業)」の3パターンが存在し、割合的に9割近くが駐在員+日系企業の現地採用で占められており、現地国籍の会社での現地採用は1割程度です。
駐在員 | 現地採用(日系企業) | 現地採用(現地企業) |
---|---|---|
6~7割 | 2~3割 | 1割 |
日本本社が雇い主 | 現地法人が雇い主 | 現地法人が雇い主 |
赴任タイミングを決められない | 赴任タイミングを決められる | 赴任タイミングを決められる |
住宅を手配される | 自力で住宅を確保 | 自力で住宅を確保 |
3~5年の赴任 | 無期 | 無期 |
英語・日本語 | 英語・日本語または現地語 | 英語・日本語または現地語 |
駐在員として海外に派遣する場合、一般的には日本で一旦就職し、組織内での実績と英語力を評価されたうえで人事異動に応じて海外赴任が決まります。そのため、自身の行きたいタイミングや場所というよりは、本社の意向や人事の評価に左右されることが多いと言えるでしょう。
現地採用(日系)の場合、親会社は日本にあるものの採用自体は現地法人が主体となるため、雇用契約も現地法人と結ぶことがほとんどです。そのため、自身の好きなタイミングで就職活動を開始し、運と力量によって内定を勝ち取ることが可能です。
過去には現地法人の主要な役割は駐在員が握っているケースが多かったですが、海外への移住希望者の高まりや現地の求められる役割の変化などを理由に、現地採用者の中でも現地の責任者を担うようなものが増えてきています。
海外就職の条件と難易度
海外就職を目指す場合、①就職エージェントの活用、②GlassdoorやIndeedのような就職ポータルの活用、➂LinkedInやXingのような就職系SNSの活用、の3つが一般的な経路と言えます。
就職エージェントの活用 | 就職ポータルの活用 | 就職系SNSの活用 |
---|---|---|
数社に限定 | 多くの会社にリーチ可能 | 多くの会社にリーチ可能 |
ビザのアドバイスが受けられる | ビザのアドバイスを受けづらい | ビザのアドバイスを受けづらい |
面接のアドバイスが受けられる | 面接のアドバイスを受けにくい | 面接のアドバイスを受けにくい |
会社の目に留まりやすい | 大勢の中の一人として見なされる | 会社の目に留まりやすい |
Career Management | Glassdoor Indeed |
LinkedIn |
海外就職の難易度は、業界や職種、そしてキャリアに左右されます。現地との互換性が高くて技能労働者の求められている理系人材(エンジニアや開発)の分野においては、現地の文化やコンテクストによって成果が左右されやすい文系職に比べて就職難易度が高いと言えます。
文系であれば、最も受け皿の広い職種は現地日系企業の営業・アシスタントで、海外市場に日本の製品やサービスを展開させるため、英語や現地の共通語に精通した日本人の採用が多くなされる傾向にあります。
現地採用(日系企業) | 現地採用(現地企業) | |
---|---|---|
営業・アシスタント | ⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️ | ⭐️⭐️ |
マーケティング | ⭐️⭐️ | ⭐️ |
経理・人事 | ⭐️⭐️⭐️ | ⭐️ |
エンジニア | ⭐️⭐️⭐️ | ⭐️⭐️⭐️ |
開発 | ⭐️⭐️⭐️ | ⭐️⭐️⭐️ |
※★の多い職種は需要が多い
求められるものとしては以下のような要件が多いと言えます。
1 ビジネス英語力(最低TOEIC800程度) |
2 実務経験(最低1年以上を推奨) |
3 コミュニケーション能力 ※対日本人、対外国人、ともに |
4 現地語能力 ※必須ではないことも |
5 高い現地適応能力 |
海外就職の人気国
日本の枠にとらわれず、ダイナミックに海外で働きたいという人にはどのような国がおススメでしょうか?以下、海外就職の人気国を紹介します。
※数値の算出に当たっては、海外移住者向けのプラットフォームInternationsと現地のアンケート等を参照
アメリカ
世界最大の日本人の移住者数を誇るアメリカは、海外就職の人気国としてもトップクラスです。高い給与水準、キャリアチャンス、整ったインフラ、そして9000社という数の現地に進出する日系企業数などが影響し、若者を中心にアメリカンドリームを求める若者の数は後を絶ちません。
日系企業の数だけでなくアップルやマイクロソフトなど、世界的大企業の数が多く、自身のキャリアを磨く環境としての魅力が非常に高い国と言えるでしょう。オープンな国柄で現地での友人のつくりやすさもあり、プライベートの充実さに定評があります。
一部の都市では治安や急激なインフレが注意点として挙げられます。
就職/ キャリア | 給与/物価 | ワークライフ | QOL | 友人関係 |
---|---|---|---|---|
A | D | C | E | B |
オーストラリア
在留永住者数世界2位のオーストラリアも、高い給与水準とワークライフバランスを享受できる国として知られています。特に、オーストラリアの大学を卒業すると卒業生ビザが支給され、そのまま現地での就職活動、就労が可能になることから、留学してそのまま現地に滞在するケースが増えています。
広大な大地と自然を背景に、ゆったりとした仕事文化が魅力で、世界的にもWork-Life BalanceやQuality of Lifeが高いことで知られています。また日本との貿易が多いことから、意外にも日本語を活かせる職種は多いと言えます。
就職/ キャリア | 給与/物価 | ワークライフ | QOL | 友人関係 |
---|---|---|---|---|
C | D | B | B | B |
イギリス
ヨーロッパ最大の日本人人口を誇るイギリス。EUを脱退したとはいえ日本とのつながりは深く、現地の日系企業や日本との貿易関連での職の当てはあると言えます。その高い日本人人口を元に、ロンドンをはじめとする大都市では多様なコミュニティが充実しており、他のヨーロッパ諸国よりも現地滞在の情報が集めやすいメリットも。
金融やコンサル系を中心に、ヨーロッパでも指折りの多国籍企業の集積地としても知られています。そのため、仕事の探しやすさは勿論、その後のキャリアアップに関しても長期的なものが描けることで各国の学生から人気を博しています。
就職/ キャリア | 給与/物価 | ワークライフ | QOL | 友人関係 |
---|---|---|---|---|
B | E | B | E | E |
フィリピン
かつては日系企業の製造業の拠点として、実務経験十数年以上の開発責任者などが重宝されていましたが、最近では現地市場の急速な発展に伴って、販促要因としての若手の採用も盛んになりつつあります。特に、英語の話せる法人営業要員は必要とされており、日本や韓国を相手に貿易をおこなう商社的な求人も人気を見せています。
アットホームな国柄で、大都市の中心地などを除けば物価も安く、快適な海外ライフが享受できる国として20~30代を中心に人気を博しています。
就職/ キャリア | 給与/物価 | ワークライフ | QOL | 友人関係 |
---|---|---|---|---|
D | C | D | D | A |
タイ
フィリピン同様、かつては駐在員によって現地法人の運営がなされていたタイの現地労働市場ですが、コロナ禍による駐在員の激減や、長期的な東南アジア市場の開拓需要などにより、現地採用の需要が増えていると言えます。
日系企業の現地採用として採用された場合、都市部の物価に対応することは可能ですが、昨今の急速な経済発展に伴って現地水準の給料では生活が厳しくなりつつあるのもまた事実。かつての「安い旅行先」から、東南アジアの重要市場に役割を変化させつつあります。
就職/ キャリア | 給与/物価 | ワークライフ | QOL | 友人関係 |
---|---|---|---|---|
D | C | D | D | A |
ドイツ
ヨーロッパ最大の日系企業数約2000社を誇るドイツは、世界でも指折りの「グローバル人材の活躍しやすい国」として密かな人気を持ちます。駐在員として海外派遣される場合、数年の下積みを要しますが、英語力や実務力に自信のある20~30代は、直接現地採用によっていきなり現地のビジネスに参加、キャリアアップのショートカットを狙います。
ヨーロッパ随一の経済大国でありながら物価は比較的安定しており、生活必需品の物価を鑑みた給与水準は世界でも指折りのものとされます。
イギリス同様、一部の都市などでは人間関係がやや閉鎖的とされるところがネックですが、昨今の多国籍化によってその傾向は薄れ、若い層の中にも外国人との交流を受け入れる割合が増えています。
就職/ キャリア | 給与/物価 | ワークライフ | QOL | 友人関係 |
---|---|---|---|---|
A | B | A | D | E |
ドイツ就職に求められる主な要件
高い英語力 |
特定の分野の実務経験(1~3年以上推奨) |
高いコミュニケーション能力 |
四大卒 |
ドイツ語 ※可能であれば |
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