ドイツにおける正社員(フルタイム)の数は2400万人で、パートタイムの従業員の1500万人と比較すると1.6倍という数値になっており、日本の全体における正社員の数値がそれ以外の雇用体系の1.5倍であることと、ほぼ似たような人口動態となっています。

正社員はその他の採用形態と比較し、給与面、社会保障、昇給可能性、職業の安定、ローンの組みやすさなどのメリットがあるため、特にドイツの大卒や国外の熟練労働者の中で人気が高く、年々応募のハードルが上がっている傾向にあります。

こうしたドイツの就職市場で日本人が正社員として採用されるには、どのようなスキルや資格、職歴が必要なのでしょうか?

※本記事の数値は2024年8月現在のものです。将来的に数値に変更がある場合がありますのでご注意ください

ドイツにおける正社員(フルタイム労働)とは何か

ドイツ社会において正社員とは一般的にVollzeit(フルタイム)の名称を持ちます。その対となる雇用形態はTeilzeit(パートタイム)と呼ばれ、以下のような違いを持ちます。

 正社員(Vollzeit)パートタイム(Teilzeit)
就業時間労働契約に準じる労働契約に準じる ※正社員以下の労働時間
就業人数2,400万人1,500万人
平均就業時間1,644時間/年 ※週40時間前後711時間/年 ※週20時間前後
平均月給与4,323€正社員の半分程度

正社員とパートタイムの違いの一つは、就業時間です。Gesetz über Teilzeitarbeit und befristete Arbeitsverträge(パートタイム及び有期雇用法)の2条に則り、通常の勤務時間より短い勤務形態は「パートタイム」と見なされます。ドイツのフルタイムの一般的な就労時間は40時間前後(週の勤務時間が38.5時間、または40時間の会社が多い)ですので、それ以下の労働時間(例えば週20時間、30時間などの雇用形態)はパートタイムに区分けされます。

一般論で言えば、「ドイツでの就職」を目指す場合、その給与の高さと雇用の安定度からフルタイムでの就業を目指す割合が多いと言えます。

ドイツで正社員(フルタイム)として働くメリット

いわゆる正社員(フルタイム)での労働はドイツ社会におけるスタンダードな働き方であるため、ドイツで「サラリーマン」というとまずこの雇用形態が念頭に置かれます。

給与、年間有給数、といったドイツの統計データの多くはこのフルタイムに即して計算されていることが多く、ドイツ社会における「就労」を目指すのであれば、まずは目標にすべき雇用形態の一つと言えるでしょう。

正社員(フルタイム)雇用で得られるメリット一覧

  • 就労ビザの取りやすさ
  • ローンの組みやすさ
  • 家やアパートの借りやすさ
  • 給与の高さ
  • 年間有給の多さ
  • 昇進可能性の高さ
  • 社会的信頼の高さ

ドイツで正社員(フルタイム)として働くデメリット

反対に、デメリットとしてはどのようなものがあるのでしょうか?ジョブ型採用の一般的なドイツ社会において、給与と雇用の保障されたフルタイムの内定を得るには「実績」や「その分野における職歴」といったものが要求されるため、一筋縄ではいきません。

またドイツ人の中でも、「仕事以外」の優先順位が高い場合はそちらにリソースを向けるため、フルタイムでの就業は敬遠されがちです。資格取得を目指す、子育て、闘病、介護、などがこうした理由に当てはまります。

正社員(フルタイム)雇用のデメリット一覧

  • 就職難易度の高さ
  • 仕事に多くの時間を取られる

日本人がドイツで正社員雇用されるコツ

職種や業界によって異なりますが、基本的に「正社員(フルタイム)」での就労は「パートタイム」の就労よりも仕事に対するコミットと責任感が求められる傾向にあります。そのため、単に「時間通りに働いた」というだけでは十分ではなく、意欲的に会社のビジネスの発展に尽くす必要があると言えます。また費用対効果といった面でも、解雇しづらい正社員雇用はその他の雇用形態に比べて採用者側が「一層慎重」になるため、ポジションを得る難易度が高いとされています。

このような背景から、日本人を含め、ヨーロッパ圏外からのドイツへの応募は基本的に「不利」であることが少なくありません。どうしても違う文化圏から来た応募者が会社のためにどこまで尽くしてくれるかが不明瞭であり、就労ビザのリスクや意思疎通の不便さなどを考慮してまでこうした人材を雇うメリットが低いことが多いからです。

ドイツで日本人が正社員のポジションを得づらい理由

  • 正社員という雇用形態であると企業側は解雇しづらいため、採用に特に慎重
  • 就労ビザや意思疎通の壁ようなリスクがある「外国人応募者」は「ドイツ人応募者」よりも優先度が低くなることが多い

こうしたハンデを持つ日本人がドイツで正社員のポジションを得ようとすると、以下のいくつかのパターンが考えられます。

コツ1: ハンデを吹き飛ばすスキルを身に着ける

日本人であっても、ハンデを吹き飛ばすほどの高いスキルを持つ応募者であればドイツ企業の正社員の職を得る可能性は大いにあると言えます。特に弁護士や税理士といった士業系の資格、ITやエンジニア、建築家といった理系の専門知識などを持つ人材は、国籍のハンデに関わらず正社員のポジションを得られやすい傾向にあります。

コツ2: 正社員からではなく、パートタイムやインターンシップから仕事を開始する

いきなり正社員での採用は、ドイツ人が採用面接を受ける場合であっても難しいケースがあります。特に、20代ドイツ人の経験の少ない層は、一度インターンなどを経て経験を積んでから正社員のポジションを得る、と段階を踏んでステップアップしていくことがあります。

正社員での採用に困難を覚え、その理由が経験や実績不足であると感じる場合、一度給与水準を落としてインターンなどからキャリアを開始してみるのも一つの手といえます。

コツ3: 日本人であるアドバンテージが活かせる企業に応募する

インターンからキャリアを開始する方法は時間もかかり、必ずしも正社員になれる保証があるわけでもありません。最初から正社員(フルタイム)狙いで就職活動を始めるのであれば、日本人であるアドバンテージが活かせる在独の日系企業に応募するという方法があります。

ドイツに日系企業は約2,000社近く進出しており、その多くが欧州内でその製品・サービスの拡販をおこなっているグローバル企業です。ドイツに根を降ろして生活し、日欧の文化差を巧みに折衝できるようなグローバル人材の需要は高く、 採用形態の多くが正社員(フルタイム)です

当社Career Managementはヨーロッパで活躍する日本人の方々を含め、このようなグローバル企業への紹介を25年に渡り蓄積してきた実績があります。ドイツでの正社員としての就職に興味がある方は是非お気軽にコンタクトを!