ドイツで職歴の少ない学生が本採用に近づくための重要な第一歩、「Praktikum(インターンシップ)」への応募はどのような形でおこなわれるのでしょうか?
今回の記事では、 新卒・経験者を問わず、ドイツでのインターンに興味のある方を対象に、インターンの対象者、応募の目的、必要となるビザの種類などをまとめていきます。
ドイツ就職におけるインターンの必要性
ドイツの若手(20代)就職市場において、インターンは重要なウエイトを占めています。
そもそもドイツの仕事文化の大きな特徴として、就活市場においては実務経験者が有利である点が挙げられます。ポテンシャルを重視して新卒一斉採用をおこなう日本とは異なり、あくまで企業内の必要となるポジションに募集をかけるドイツ企業にあっては、ポテンシャル以上に、そのポジションで即戦力として給与に見合った働きをしてくれるかどうかが肝になります。
そのため、そもそも新卒の学生であったり、仕事経験であってもドイツの企業やドイツでの仕事経験がない場合(日本人がドイツで就職活動をする場合このパターンに該当することが多い)、応募の段階で落とされてしまうこととなります。そうした際、少ない実績や経験を埋める目的で有効打になるのが「インターン(Praktikum)」です。
本来インターンは実務経験の無いドイツ人学生が職歴を補うためにおこなうものですが、日本人でドイツに移住、就学し、ドイツでの仕事経験がない場合も似たような形で活用することができるのです。
ドイツ式のインターンの特徴:
- ドイツでの職歴が無い学生などが職歴を補う目的でおこなう
- ドイツでは全体の40%が「3回以上のインターン」を経験
- 3~6ヶ月程度の中長期での採用が一般的
- その期間は給与も支払われる
- インターン満了後、その企業での採用近道となる
インターンと就労ビザ
フルタイムなのか、パートやバイトとしてなのか、雇用形態に応じて必要となる就労ビザの種類は異なってきますが、基本的には「労働許可証」を必要とするケースが多いと言えます。
例えば学生の場合、ドイツに留学する学生は「学生ビザ」を支給されます。この学生ビザを用いると期限付きでインターン(年間120日のフルタイム・または240日の半日)をする権利が与えられます(Aufenthaltsgesetz § 16b Studium)。
その他、ワーホリビザでドイツに滞在する場合も条件は付くものの労働許可が見なされることとなります。
逆に、観光ビザでの就労はできず、また一般的にインターンのみを目的とした就労ビザの発行を協力してくれる企業もほぼ存在しないため、上記のいずれかのビザがあることが前提となるでしょう。日系企業の一部は海外でのインターンを募集していますが、こうした求人のそれぞれでビザが必要かどうかは最終的に企業側とすり合わせる必要があります。
海外インターンを紹介しているサイトの例:
インターンへの応募
インターンへの応募手段は多種多様で、一般的な就職ポータル(IndeedやXing等)から、学生であれば校内の掲示板、就職メッセなども活用することができます。インターンの特徴としては、普通の職種よりもはるかに応募要件が緩く、実務経験無しでの応募も可能な点が挙げられます。
学生のインターンであれば、その学生の本分である専攻の成績や論文実績などを採用担当者にチェックされることが多いと言えます。大手コンサルや銀行などの人気企業はインターンの応募倍率も高く、GPA3.0以上(ドイツの成績システムで1.0~2.0)等の基準を持って足切りをおこなうことがあります。
応募は必ずしも学生である必要はありません。上述のように、日本での職歴はあるがドイツで職歴が無い場合、正社員の前の段階としてまずはインターンからそのキャリアをはじめるケースも往々にしてあり得ます。
インターンへの応募:
- 学業での成績を優先して評価される
- ドイツでの実務経験無しでも応募できることが多いが、あれば優遇される
- ドイツ語・英語は多くの企業で重要な応募要件となる
- 校内掲示板、学内メッセ、就職ポータルなどを活用して応募
応募手段は多くの場合WEB上での書類選考から始まります。担当者にメールやWEBフォーマットで必要書類(履歴書、カバーレター、学部成績、等)を提出し、後日採用担当者から返事を貰うと面接に進むような形になります。
このインターンのポジションを得られるかどうかは学生にとっても死活問題であり、ドイツ人の学生であっても300~400社応募しインターンを得られることが1社のみ、というケースがあります。逆に言えば、インターンのポジションを得ることに成功さえすれば、企業内で直接人事や上司に評価してもらえるチャンスを得られるため、ドイツ企業への入社に大きく前進することとなります。
我々日本人が応募する場合、ドイツ人と比較しても遜色のない自分の強みと言えるような専攻を伸ばしておくか、自身の過去の経験が活かせるようなフィールドへの応募がインターンのポジション取得に大きく寄与すると言えます。
日本人学生が比較的ポジションを勝ち取りやすいインターン
- 国籍のあまり関係ないITやエンジニア系の案件
- 多国籍人材の獲得に力を入れている大手企業案件
- アジアとの貿易(輸出入)系案件
インターン面接
書類選考を通過すると採用担当者との面接に呼ばれることとなります。ドイツ企業の人事部は興味のない学生を書類選考で足切りする傾向にあるため、面接に呼ばれるということは大きな第一歩です。
大企業であれば2回以上、中小企業であれば1~2回での面接でインターンの内定が定まります。ドイツの一般的な就職活動と違い、ここでは実務経験よりも応募者(学生)の伸びしろやソフトスキル、大学で得た知識などについて聞かれることとなりますが、他にもアピールできるポイントがあれば積極的に前面に押し出していく必要があります。
このインターン面接は、ある意味日本社会における新卒採用の面接と似ているかもしれません。最初の一社でダメだったからと言って諦めるのではなく、2社、3社と面接を受けるうちに次第に受け答えが洗練され、内定を得る確率が高まっていくでしょう。
合格すると、一般的な入社プロセス同様に「労働契約書」にサインすることとなり、この書類へのサインをもって晴れてドイツ企業での就職の第一歩目となる「インターン内定」を勝ち取ることとなります。
日本人がドイツでインターンに参加意味はあるのか?
上述の通り、ドイツにおけるインターンとはドイツにおける職歴や実績の穴を埋めるために、主に若手の求職者が低賃金でおこなう雇用形態のことです。そのため、ドイツの平均的な賃金と比較するとどうしても見劣りする部分もありますし、正社員と比較して社会保障などの面でデメリットを感じる場面も少なくないでしょう。
勿論、インターンはドイツにおけるキャリア形成の手段の一つとして使われることはありますが、既に社会人としての経験がある場合、必ずしも好んでおこなう必要があるとは言えません。
特に、日本からドイツに移住したばかりのタイミングでは、就職市場に関する知識も不足しており、このようなエントリーレベルからの応募を勧められることもありますが、実際には「在独日系企業」のように、日本人としての知見とノウハウが生かせて正社員としてのポジションを勝ち取りやすい求人も多く存在しています。