ドイツ語では英語同様に「Startup」と言われ、ドイツでは毎年2500社近いスタートアップ企業が設立されています。全ての新規起業された会社がベンチャー企業と言われるわけではなく、製品力や技術力を武器に大掛かりな資金調達をし(基本的には1億円以上)、積極的に販売攻勢を仕掛けるモデルをスタートアップと呼び、一人親方やスモールスタートの会社はそう呼ばないことが一般的です。
今までの「経営の不安定」なスタートアップのイメージと異なり、デジタル技術の革新によって最近でも多様なスタートアップ企業が脚光を浴びたことから、ドイツの新卒生の中にもこうした企業への就職を志す者が増えるようになってきました。
この傾向は海外の学生や求職者にとっても同じで、日本や韓国からドイツに移住した若者の中にも、企業文化がフラットなスタートアップ企業で働くことを好む者が増えています。
今回の記事では、こうしたドイツのスタートアップ企業事情に焦点を当て、日本人がこうしたスタートアップ企業で就職するにはどうしたら良いかの解説していきます。
・ドイツでの新卒就職を考えている大学生~若手社会人
・大手よりもよりチャレンジングな環境で現地採用されたい方
・英語やドイツ語を活かした仕事がしたい方
ドイツにおけるスタートアップ企業の特性
ドイツスタートアップ協会によると、毎年約2500社のスタートアップ企業が設立されており、年度によって異なりますが、おおよそ「ベルリン」「ミュンヘン」「ハンブルグ」といった大都市圏がスタートアップへの人気で知られています。
スタートアップの業種は圧倒的に「ソフトウェア」が人気となっており、製薬、生活用品、Eコマースなどがそれに続いています。
創業者の平均年齢は35歳と若く、従業員の平均年齢もそれに紐づくようにして若い傾向にあり、全体的に20代~30代の社員で構成されるフラットな組織であると言われています。
ドイツのデジタル経済紙、OMRの発表した2023年のスタートアップランキングを覗くと、例えば2018年に創設されたSDGs向けの販売サイト「Share」、皮膚科ポータルの「Dermanostic」、学生によって起業されたボトル販売社の「airup」などが含まれます。
スタートアップで働くメリット・デメリット
社風の観点から、スタートアップ企業は組織体制が若くフラットで、大手や老舗企業のようなヒエラルキー体制になっていないため、若手であっても比較的自由に自分の裁量で仕事できるという傾向にあります。
また、若い組織ということもあって外国人の採用にも積極的で、ベルリンのスタートアップには社内公用語が英語という会社も散見されます。そのため、ドイツ語は話せないが他の分野で実績を持っている、という求職者にとってはぴったりの就職先になりがちです。
一方で、給与や福利厚生、将来の転職の際の厚遇のされ方など、大手企業と比較するとマイナス点を感じる候補者も少なくありません。
スタートアップで働くメリット:
- 組織がフラットで、公平に仕事を遂行できる
- 平均年齢が若く、感性が新しい
- 早いスピード感
- 自分の裁量で仕事をさせてくれる領域が広い
- 新しい技術やデジタル化に積極的
- 将来的に組織が成長した場合のリターンが大きい
- リモートや時短など、新しい働き方に積極的
- 職歴の浅い人間でも比較的採用されやすい
- ドイツ語が不要なケースが多い
スタートアップで働くデメリット:
- 給与が大手に比べ低い
- 早期倒産のリスクがある
- ノウハウが蓄積されていないため、
問題を一人で解決しなくてはいけないことが多い - 勤務時間外の仕事などが発生しやすい
- 転職の際、大手より優遇されにくいこともある
- 成果が出ないとすぐに見切られる可能性が高い
ドイツのスタートアップで働くには?
このように、組織風土がフラットで若手や外国人でも採用・昇進のチャンスの多いドイツのスタートアップですが、どのように内定を手にすることになるのでしょうか?
スタートアップ企業を狙うドイツの求職者が多く用いているのは就職ポータルです。IndeedやStepstoneのような一般的なポータルサイトも当然活用できますが、以下のように「スタートアップ」に特化した求人募集をおこなっている媒体も少なくありません。
スタートアップ求人に特化した媒体:
ドイツのスタートアップ以外の就職先
もっとも、ドイツのスタートアップは軌道に乗りきる前の状況であることが多く、会社によっては成果が出るまで残業があったり、成果が出ないと簡単に解雇されたりといったケースも多く、初めてドイツで就職する日本人にとってはハードルが高いのもまた事実です。
スタートアップのような自己裁量を持った企業で、かつのびのびと働きたいという希望がある場合、「在独日系企業」への就職がおススメです。
在独日系企業とは、ドイツに現地法人を構える日本の会社のことで、その多くが規模感的には数人~100人程度とドイツのスタートアップ並であることが多く、同じようなスピード感と責任感を持って仕事を遂行することができます。また、ドイツ語が必ずしも必須ではなく英語が重要、外国人人材の採用に積極的、とドイツのスタートアップ企業と似た傾向を兼ね備えているのも特徴的です。
ドイツでの初めての就職、まずは文化の似た在独日系企業でキャリアをスタートしてみるのも良いかも知れません。