一般的に、ドイツで日本人が内定を得る難易度は高いと言えます。それでも、人によっては何十社にも応募し、知人との面接練習等を繰り返して自力で内定先を見つけ出すこともあり、努力次第ではいくらでも到達可能な目標と言えるでしょう。

一方で、折角内定を得たとしても、それがゴールではない点に注意しなくてはいけません。中には、大手ドイツ企業の内定を得ても、我々の思いもよらぬ様々な理由で内定が取り消しになる例が日本人に発生しています。

※本記事に記載されている内容はあくまで事例であり、同じような条件下でもそのような判例が下されるとは限りません。最終的な判断は弁護士などの指示を仰いでください。

内定取り消しとは

そもそもドイツ社会において、口約束の「内定」は存在しません(仮にあったとしても、無いようなものです)。面接を通過し、その後「雇用契約書」に雇用主・被雇用者双方が署名して初めて正式に「内定(就職が確約された)」状態となります。

採用活動には、人的な手間、広告費など様々なコストがかかっているので、この「内定」状態から入社取り消しにするような事態はあまり採用者側にとっても望ましくないとされます。わざわざ時間をかけて選定した応募者を、この時点でいきなり「不採用」にすることは法的リスクの面でも手間の面でも「あまり発生しない」と言えるでしょう。

とはいえ、雇用契約書に署名された状況から逆転で入社取り消しとなるケースも散見されています。果たしてどのようなパターンに注意を払う必要があるのでしょうか?

就労許可が下りない

日本人のドイツ就職を考えるにあたって最もリスクの高い「入社取り消し」パターンは、就労ビザにまつわる問題です。

雇用契約書は、あくまでその入社日に労働を開始できるという条件の下で効力を発揮するので、仮に被雇用者側のなんらかの理由で「労働ができない」状況に陥ったら、労働契約が無効となる確率が高いと言えます。具体的には「懲役刑」「病気やケガ」「犯罪行為による免許証の失効」等が挙げられますが、日本人の場合は特に「就労許可が下りない」というパターンが最も多く発生します。

配偶者ビザや無期限滞在ビザ等の取得者を除き、一般的に日本人がドイツに移住し就職する場合、「労働許可(就労ビザ)」の取得が前提となります。労働許可(就労ビザ)を得るためには、まずはドイツにおける雇用主を探すことになり、「1. 内定」→「2. 雇用契約書の締結」→「3. 就労ビザの取得」といったプロセスになるわけですが、この「3. 就労ビザの取得」が外人局によって難易度が高く、様々な理由から拒否、または遅延が発生しています。

就労ビザの下りない(または遅延する)理由:

  • ドイツに住所が無い
  • 就労ビザの申請中の引っ越し
  • 給与が足りない
  • 学歴に対して給与が見合わない
  • 職種に対して給与が見合わない
  • 外人局の混雑

特に、最近では給与関連の理由での就労ビザ拒否が発生している一方、外人局の規定などで「具体的な給与の額」が定められていないため、どれくらいの給料であれば就労ビザ取得に安全圏なのか、あらかじめ判断がつきにくい部分があります。

多くの場合、時間さえかければ就労ビザの許可が下りるパターンが多いのですが、雇用契約に記載された入社日を大幅に超過すると業務に影響をきたすこととなるため、場合によってはこうした就労ビザ関連の遅延が致命的な入社拒否理由になることもあります。

必要な資格に関する嘘

興味深いことに、ドイツの採用面接では応募者側にいくつかの条件下で「嘘をつく権利」が容認されます。妊娠予定や、仕事に関係の無い疾病歴、宗教など、そもそも面接官が聞くべきでない質問(一般的にはプライベートな、業務に関係ない質問と見なされるもの)を投げかけた場合、応募者は嘘をつくことが認められているわけです。

一方で、採用面接時の嘘が解雇理由に繋がることもあります。例えば、業務に必要と見なされる資格や免許に関する嘘はクリティカルで、そもそもそれが無いと仕事が始められないような場合、民法123条に抵触することとなり、入社拒否や即時解雇を招く可能性があります。

入社前の会社都合による雇用取り消し

稀なケースですが、会社都合によって入社前に雇用契約が終了される、といった事例も起こり得ます。また、採用の決まった会社が入社までに何らかの理由で業務を継続できなくなる、といった事態も確率は低いながら考えられ、応募者側に非が無いにも関わらず仕事を開始することができません。

ドイツで入社トラブルを防ぐにはどうしたら良いか?

さて、折角苦労してモノにしたドイツ就職のチャンスが、このような「内定取り消し」によって霧消してしまう事態は誰もが避けたいことでしょう。法的な知識や弁護士への相談などで法的に争う事はできますが、根本的な解決にはならないうえ、時間と手間のかかる作業と言えます。

応募者側にできる自衛行動としては「信頼のおける人材紹介会社を介する」などが挙げられます。ドイツの人材紹介会社である当社Career Managementは、雇用者側の情報や要望もきちんと把握し、都市別、職種別の就労ビザの取得にかかる日数なども経験上把握したうえで、無理のない雇用契約書の締結をサポートすることで上記のようなトラブルを可能な限り防止しています。

難易度が高いドイツ就職にまつわるサポートを受けるため、経験とネットワークを駆使した人材紹介サービスのご活用を是非検討されてみてはいかがでしょうか?