30歳を超えると、20代の頃と比較して海外転職の難易度は上がります。
例えば、日本は2025年現在30か国とワーキングホリデービザの協定を結んでいますが、一部の国を除くと基本的に申請できる年齢の上限は30歳まで(31歳の誕生日を迎えるまで)となっています。
どの国でも30歳を境に未経験での職探しは難しいと見なされていることが理由で、実際に海外移住する年齢を見ても20代が中心で、30代、40代からの留学や転職の割合は極端に低くなっていきます。
とはいえ、職種や転職先を絞れば十分可能ですし、場合によっては20代の頃よりも仕事が見つけやすいこともあります。当社調べによると、ドイツに海外転職した日本人の約半分は、社会人としての経験が乏しい20代ではなくキャリアを積んだ30代以降からの挑戦でした。
本稿では、30代からの海外転職の難易度そしておススメの国と地域について、解説をおこないます。
30歳からの海外転職はなぜ難しいか?
単純な「仕事の探しやすさ」に絞っての話をするのであれば、むしろ30代での海外転職は20代の時よりも簡単であることが多いと言えます。というのも、海外における人事部の採用の軸は「即戦力として活躍できるかどうか」であり、この点において既に社会人としての実績をしっかり持つ30代は評価の対象に値するからです。
にも関わらず30歳からの海外就職が難しいと言われる理由には、主に環境の変化が挙げられます。20代のころであれば環境の変化に柔軟に適応することもできますが、30歳を超えてしまうと、結婚や両親の介護、家や車のローンと言った私生活上のしがらみから、海外での挑戦に踏み切りづらい環境になります。
特に、30歳を超えると万が一海外就職に失敗した時のリスクが大きく、人によっては許容しづらい面が出てくるでしょう。こうした心理的、環境的要因から海外転職が難しいとされていますが、実務経験の面から考えるとキャリア的には転職しやすい環境にもあります。
おススメの海外転職先(国と職種)
実際に30歳からの海外転職を考えてみましょう。
日本人が海外転職しやすい国の条件として、その地に進出している日系企業の数が一つの指標として重要です。その中でも特に、現地の日系企業の需要が「販売拠点」なのか「生産拠点」なのかがポイントです。
例えば中国などは進出している日系企業の数が3万社と多いものの、安価な生産拠点としての意味合いが強く、営業やマーケティングといった文系職としての現地採用よりも、工場の責任者や開発、生産管理といった役職での採用が多く、現地語の必要度も高まります。
その意味で、日本人としてのキャリアや社会人経験が活かしやすいのは「販売拠点」としての日系企業数が多い欧米諸国で、その中でもアメリカ、カナダ、ドイツ、イギリスといった国々は、仕事の多さ、給与水準、医療水準など、さまざまな点から見て人気の海外転職先と言えるでしょう。

こういった国においては、現地での拡販を目指した「営業」「営業アシスタント」または現地の顧客向けに実際に製品を動かす「ロジスティクス」などの職種の需要が多く、日本で培った知識やスキルが活かしやすいと言えます。
それでは、どんな国が海外転職先としておススメなのでしょうか。具体的にいくつかの例を挙げていきます。
アメリカ
日本の海外永住者数で最多を誇るアメリカは、まさにキャリアアップのために海外転職を志す日本人にとってのメッカとも言えます。英語が公用語であることも就職市場としての大きなアドバンテージで、確かな英語力(IETLS7.0以上推奨)、仕事上の専門スキル、そしてオープンなコミュニケーション力などを武器に転職することが可能です。
転職先としてのポートフォリオも豊富で、アメリカ資本の会社以外に、現地に進出している日系企業、さらにはドイツや韓国などその他多国籍企業で働く日本人の数も少なくありません。
▶ 世界最大級の日本人永住者コミュニティ
▶ 世界的に有名な多国籍企業が多く、キャリアアップに最適

カナダ
アメリカのお隣のカナダは、日本人の数や日系企業数ではアメリカにひけをとるものの、世界トップクラスの自然環境、治安、そして充実した医療や教育システムで多くの日本人移住者を魅了しています。
北米市場に展開する日系企業や、日本との取引をおこなう現地企業の数も少なくないため、日本語が活かせるポジションが他国に比べて見つけやすい特徴を持ちます。現地企業には、ITエンジニアやヘルスケア、環境関連など特定分野のスキルを持っている場合就職しやすく、またビザの審査に有利に働きます。
▶ ワーホリからの就職が人気
▶ 自然環境や医療制度などが充実し、ワークライフバランスも高い

イギリス
既にEUを離脱しているイギリスで、往年程のプレゼンスはないものの、ヨーロッパ域内では在留邦人数最多を誇ります。留学、ワーホリ、国際結婚、そして海外転職などの目的で多くの日本人が滞在、そして日本人コミュニティが存在し、日本に関連する仕事の受け皿が他のヨーロッパよりも多く提供されているのがポイントです。
▶ ヨーロッパ最大の日本人コミュニティ
▶ 国際的な企業が多く、キャリアアップに繋がる

ドイツ
ヨーロッパの中で最大の日系企業数を誇るのがEU経済の雄、ドイツです。上記の通り、当社調べでも30歳からドイツに転職した日本人の割合は全体の約半数で、むしろ日本やその他の国で5年以上の社会人経験を積んだ候補者のほうが新卒よりも仕事を得やすい環境にあります。

ドイツの日系企業ポジションの特徴は、ドイツ市場だけでなくドイツを軸にその他のEU諸国に展開することを前提としており、国境を越えたダイナミックな業務を経験できることになります。
給与水準は勿論のこと、医療、治安などの面でもヨーロッパの中でトップクラスのドイツは、仕事・プライベートの両面から日本人にとって海外転職しやすい国と言えるでしょう。
▶ 日系企業数がヨーロッパ最多
▶ スキル獲得に力を入れており、長期的なキャリアアップが可能
▶ ワークライフバランス、環境、治安、医療などQOLも充実
