豊かな自然、恵まれたワークライフバランス、少ない人口にも関わらず高い国際競争力、IKEAやSpotifyといった大企業・・海外移住を志す者の中でも、特にスウェーデンを移住先として名指しする人の数は決して少なくありません。

その一方で、スウェーデン就職に関する知識はベールに包まれており、一部の転職経験者のブログなどを頼りにするしかありません。本稿では、スウェーデン就職の魅力と求められている職種について、解説していきます。

スウェーデンの職場環境を形容する5つの特徴

ワークライフバランスの優れた国として漠然としたイメージが先行しているスウェーデンですが、仕事の効率性が高くフラットな組織であることが特徴的です。

1.フィーカ(Fika)
多くのスウェーデン企業では午前と午後にフィーカというコーヒーブレイクを設けてあります。この時間は、単なる息抜きと言う意味合いだけでなく、職場内で団欒して親睦を深める意味合いを持ちます。
2.心地よい金曜日(Fredag​​smys)
スウェーデン人にとって、金曜日は遅くまで仕事をしたり飲みに行って騒いだりするのではなく、家でゆっくりと「心地よい」時間を過ごすものとされています。多くのスウェーデン企業が午後3時の早上がりを推奨し、労働者の心身の健康維持に役立っています。
3.ラグム(Lagom)
ラグムという言葉は「ほどほど文化」とも呼ばれ、完璧主義ではなく7~8割の完成度を目指しましょう、というコンセプトになります。この文化がスウェーデンの国全体に通底しており、無理せず効率的に仕事する雰囲気が漂っています。
4.フラットな職場
社会学者のHofstedeの発表した指標によると、スウェーデンの職場ヒエラルキーの厳しさは世界でも屈指の低さで、公平でフラットな職場環境が実施されている環境と言えます。
5.ワークライフバランス
世界屈指のワークライフバランスの高さで知られるスウェーデン。有給は年間25日が保障され、残業もほとんど発生しません。育児休暇として男女ともに90日の育休が与えられるなど、仕事とプライベートを両立させやすい環境が保たれています。

ネガティブな点としては、福祉のための高い税率でも知られており、実際には額面と手取りのギャップに戸惑うことがあるかも知れません。また、世界屈指の生活費の高さ、長い冬とその暗さなど、日本とは異なる生活環境を挙げる人もいます。

ポイント: 世界最高峰の充実したワークライフバランスで知られるスウェーデン
スウェーデンの伝統、フィーカ(Fika)の様子

スウェーデンで仕事を探す

そんなスウェーデンですが、国策として理系職の採用に力を入れています。

1.IT・エンジニアリング
ヨーロッパのシリコンバレーの異名を持つストックホルムでは、IT産業が盛んです。SpotifyやKlarna、Ericssonなど、ヨーロッパを代表するIT企業はスウェーデンに起源を持ちます。こうしたIT・エンジニアリング産業においては、英語のみでの採用が盛んであり、またビザの取得ハードルも他の職種に比べて低い傾向にあります。
2.ゲーム業界
ITと並んで有名なのが、スウェーデンのゲーム産業。マインクラフトを生み出したMojang Studios(※マイクロソフトが買収)、Battlefieldシリーズで有名なDICE社などを生み出しました。ゲーム開発に関わるクリエイター、デザイナーやITデベロッパーなどの求人も非常に盛んです。
3.研究職
国全体がイノベーションやR&Dに高い意欲を示しているスウェーデンでは、国境を越えた研究職の採用をおこなっています。特にライフサイエンスや環境分野では、日本の製薬会社や大学と提携しての研究も盛んで、求人を見つけやすいとも言えます。
4.環境・サステイナビリティ関連
豊かな自然、そしてクリーンエネルギーと、技術大国でありながら自然分野への注力も忘れないのがスウェーデン。環境アセスメント関連のコンサルタントや、風力・水力発電関連のエンジニア、またはそれらを他国に展開するための営業などが求人として目立ちます。
ポイント: 国として理系人材の採用に力を入れている

スウェーデンでの就職は難しい?

ワークライフバランスと賃金水準に優れたスウェーデンの労働環境ですが、外国人(日本人)の就職敷居は極めて高いとされています。

理由として、EU域外からの移民は労働許可の取得が難しく、対してEU域内の候補者の場合この手間を省いて採用できるため、似たようなスキルの持ち主であればEU籍の候補者が優先的に採用されやすいという背景が挙げられます。

また、国内人口1000万人という小さな市場であり、個々の企業が高い国際競争力を持っているため、候補者に求められるスキルが極めて高いものになるという背景もあります。特に、スウェーデン人の英語力は世界でもトップクラスで、こうしたスウェーデン人のライバルを相手に仕事を勝ち取るのは至難の業と言えるでしょう。

極めつけは、日本人就活者の受け皿となる日系企業数が少ないという背景も挙げられます。2025年現在、スウェーデンに進出している日系企業の数は160社で、ドイツの1940社、イギリスの920社などと比較しとても少ないことが特徴です。

ポイント: EU外からの就職難易度は高く、受け皿となる現地の日系企業数も少ない

スウェーデンと似た職場環境で働くには

スウェーデンと同じゲルマン語派に属するドイツは、スウェーデンと非常に似たメンタリティを持ちつつ、日本人向けの求人チャンスが多いことで知られています。上述の通り、現地に進出している日系企業数は1940社とヨーロッパ最多で、製造拠点としてだけではなく、販売拠点としての機能が主であることから、営業や物流・経理・総務などの文系人材向けの求人も多いと言えます。

充実した医療・福祉、仕事の効率性やプライベートの充実など、どの点を取ってもドイツはスウェーデンにひけをとらない国として知られています。スウェーデンでの就職が難しい場合、少し思考を変えてバルト海を挟んだドイツでの就職に目を向けてみても良いかも知れません。