日本では垣根の曖昧なジェネラリストとしての職能がよく重宝されますが、ドイツの仕事文化はスペシャリスト型で、それぞれの職務に応じた資格やスキルが必要になります。そのため、すべての職種に共通して有効な素養というものは少なく、基本的には「それぞれの職場」で必要となる資格が求められるようになるわけです。
特に文系と理系の区別をつけるのであれば、極論として、以下のような文系職種には資格がなくても就労することは可能です。ドイツでは一般的に、このような文系職は大学や大学院の専攻の延長線と見なされ、何を勉強したか、あるいはどのような実務経験を積んできたかが重視され、弁護士や税理士、建築士のように国家資格を要する職種とは一線を画し、資格がマストと見なされることは少ないと言えます。
ドイツの文系職の代表例
- 営業
- 購買
- マーケティング
- 人事
- 総務
- 法学
- 会計・経理(資格推奨)
もっとも、日本人がドイツの会社に就職する場合、やはり何らかの証明(ドイツにおける職歴や、専攻科目の卒業資格、推薦レター等)があったほうが説得力がでることに変わりはなく、その中の一つの手段として以下に挙げる資格、あるいは何らかのコースの修了書が有効に働く場面が多いと言えます。
ドイツ語の語学認定資格
日本人がドイツで就職を志す際、その方法や職種は多くありますが、多国籍企業への応募の場合必ずしもドイツ語が必要になるとは限りません。例えば、在独日系企業は英語での採用を積極的に実施している一面もあります。
一方で、英語のみで受けられる応募先となると、その門戸が狭まることはまた事実。やはりドイツ企業の多くが「ドイツ語」(および「英語」)を応募条件として付け加えていることが多く、ドイツ語の資格を持っていることは自身の就職の幅を広げることに大きく寄与します。
では具体的にどの程度の資格条件が求められるのかというと、一般的には最低限のビジネスレベルと見なされる「C1」(CEFR基準)がベンチマークと見なされるでしょう。Goethe-Zertifikat C1のような認定試験に加え、大学試験認定ではTestDaf 4 x 4, DSH2などがこれらに該当します(参考記事:ドイツ就職に必要なドイツ語レベルとCEFRガイドライン)。
これらの資格を持たずとも、例えばドイツ企業で数年の実務経験などがあればそれに代わると見なされることもあり、要するに説得力を持たせることが重要と言えます。
有利になる職種
- 文系、理系問わず全ての職種
第二外国語(英語、中国語等)の難関(C1)資格
特にドイツ国籍以外の応募者(日本人)の場合、外国人であることを活かした職務を割り当てられることが少なくありません。海外営業や購買、特定の市場マーケティングやコンテンツ制作などがこれに該当します。そうした際に重要になってくるのはやはり語学力で、ドイツ語と母語以外の外国語の素養は有利に働くと言えるでしょう。
第一に、ドイツにおいても高レベル(C1、C2レベル)な英語スキルの需要は非常に高く、営業の場面以外でも、英語によるWEBサイト・コンテンツのコピーライトや社外向け文章の起草などさまざまに重宝されます。また、特定の語学+資格や専門知識も必要となる場面が多く、商法知識+英語、会計知識+英語、など契約書や合意書の作成で活躍できます。
有利になる職種
- 文系、理系問わず全ての職種
マーケティング系の資格
ドイツ社会において、一般的には大学、または大学院の卒業をもってその道の最低限のスキルを習得していると見なされることが少なくありません。その点で、営業やマーケティング部に採用される人材は、多くはBWL(経済商業学)出身者であることが多いと言えるでしょう。あるいは、既に3年程度の実務経験を積んだ人間が採用されやすいと言えます。
このようなバックグラウンドがなく資格を身に着ける場合の手段として、有料の資格認定コースが挙げられます。Weiterbuildung(社会人向け教育)として3ヶ月程度のコース受講を前提としているものもあれば、FacebookやGoogle Analiticsの講座のように、個人で自分のペースで受講できるものも少なくありません。また、マーケティングもカテゴリが豊富で、デジタルマーケティングなのか、マーケティング全般なのか、マーケティングの中の分析部分を指しているのか、自分が求めている職種に近い資格を選ぶ必要は出てくるでしょう。
有利になる職種
- マーケティング
- 営業・購買
- 人事
- 会計・経理、等
経理・会計資格
マーケティング同様、経理・会計ポジションに必要なスキル・資格も、基本的には大学・大学院の専攻や3年以上の実務経験・職歴によって勘案されることが多いのがドイツの就職市場の特徴です。加えて、DATEV(ドイツの会計ソフト)やSAP関連のソフトが使用できることも条件に加えられると言えるでしょう。
注意点として、あくまで「ドイツにおける会計」の話なので、日本における簿記の資格や職歴などが考慮づらい面があります。こうした資格や職歴を活かしたい場合、ドイツの日系企業など、日本での職歴に重きを置いて採用してくれる企業がおススメと言えます。
有利になる資格に関して言えば、Wirtschaftsprüfer(監査役)やSteuerberater(税理士)などが該当しますが、いずれも難関資格であり、取得にはかなりの労力を要するでしょう。
有利になる職種
- 営業・購買
- 経理・会計、等
ツール系の資格
Excel、PowerPointに加え、SAPやSalesforceといったビジネス系アプリケーションの資格取得も、就職の際に一定のアドバンテージを与えることがあります。こうしたアプリが必要かどうかは会社や業界によって大きく異なりますが、ビジネス支援系の実務経験を応募要件に挙げている企業は意外に多く、これらを充足できない場合資格やコースなどを用いてギャップを埋めることも一つの手段として考えられます。
他にも、マーケティング系であればPythonのようなデータ分析ツール、会計であればDATEVやSAP、営業支援であればSalesforceといった、個々の業務内容や役職において異なるスキルが求められるため、自身のキャリア設計と見比べて最適な資格やコースを受講するようにしましょう。
有利になる職種
- 文系、理系問わず全ての職種