国立であれば学費がほぼ無料で、かつ世界の大学ラインキングでも高い評価を持つドイツの大学は、ドイツ国内外から多くの学生の興味・関心を集めています。もっとも、300万人という大学・大学院生人口を抱えるドイツの中でも、学部に応じてその人気はまちまちといえ、人気ゆえに入りずらい学部もあれば、逆に人気だからこそ学部数が多く入りやすいような学部など、多くのパリエーションがあると言えるでしょう。
今回の記事では、そんなドイツの大学の人気学部ランキングをリストアップしていきます。
1位:経営学部(BWL)・・23万6000人
男女ともにドイツで最も人気のある学部としてランク付けされているのが経営学部で、実にドイツ人の学生の8%前後が経営学部を専攻しているという高い割合となっています。卒業後に仕事に直接関連付けやすい、広範な分野を勉強するため様々な産業に応用しやすい、大学の受け皿が多い、理系寄りの専門知識を身に着けられる、将来経営者になりたいなどキャリアアップに有利、といった理由などから、長年にわたってドイツの学部で人気一位の座を保持しています。
日本人でドイツの経営知識をつけた人材は少ないことから、特にドイツの大手日系企業などからも評価の高い学部の一つと言えるでしょう。就活では勿論、その後のキャリアアップや転職の際にも役立つ実践に即したオススメ学部です。
人気学部だけあって門戸も広く、名門大学では入学要件が厳しいものの、私立や専門大学などでは要件が緩いところもあり、場所さえ選ばなければ他学部に比べると比較的入学は容易におこなえるでしょう。
ドイツの学部人気第一位はBWL学部!日本でいう商学部や経営学部のような位置づけだね
やはり、ビジネスに密接に影響しているため進路の選択肢が多く、広範な分野を学べる環境にあるというのは大きな強みね!BWL学部の詳細に関しては「ドイツの大学でBWLを専攻するメリットと卒業後の進路について」の記事を参照してね。
2位:情報学部(Informatik)・・12万7000人
一昔前まではドイツでも少し「オタク」なイメージの強かった情報学部ですが、昨今のIT周りの進化に伴い、有名企業からも一目置かれる人気学部に様変わりを遂げました。システムエンジニアやコーディング、セキュリティといった既存の専攻に加え、学部によっては経営工学、医療工学、バイオ工学、数学や統計、といった他学部と掛け合わさった実用的な専攻内容が続々と登場しています。
経営学部同様、多くの大学がコースを構えていて門戸が広いため、場所さえ選ばなければ入学自体の難易度は高くないと言えるでしょう。ただし、計算を生業にすることが多いことから、数学やプログラミングに対する素養がある人間のほうが成功しやすいといえ、そのために適性検査を設けている大学も存在します。
最近の目覚ましいIT業界の発展から、大手企業は情報学部の生徒を高く評価する傾向にあるみたいだね。
国境を越えてもIT知識は活かしやすので、まさにグローバル時代にぴったしな学部ともいえるわね。
3位:法学部(Rechtswissenschaft)・・11万7000人
ドイツ語ではJuraとも呼ばれます。ドイツのビジネスに身を置く場合、商法や民法、労働法など、ドイツの法律を避けて通ることはできません。そう言った意味では、たとえ弁護士になることが無くても、一般企業などでもかなりつぶしの効く学部の一つとして親しまれています。
もっとも、人気学部の一つというだけあって入学要件は簡単ではなく、ドイツのAbiturの成績では1.5~2.0程度(GPAで3.0~3.5程度)、さらに高度なドイツ語能力が要されます。
法学部の生徒ってかなり優秀な印象だね
それだけに、入学・卒業も簡単ではないわね。特に計算系が多い上述の2学部に比べてドイツ語の文献を読み漁る量が圧倒的に増えるので、日本人には手ごわい学部かもしれないわ。
4位:機械工学部(Maschinenbau/-wesen)・・10万4000人
機械分野で日本と並び世界的にも高い競争力を誇るドイツならでは、その根幹をなす機械工学の育成には国を挙げて力を入れています。そういった背景から、年々機械工学部は安定した人気を誇り、また卒業後も安定した職業が得やすい学部の一つとして知られています。
専攻柄、座学だけでなく実務や職業訓練を伴うカリキュラムが多く用意されており、即戦力を好むドイツ社会に適した学部と言えるかもしれません。
5位:医学部(Medizin)・・9万8000人
ドイツの学部の中で最難関と言われることの多い医学部は、入学者数こそ厳選されるため他学部を下回りますが、ドイツ人の憧れる学部としては一位と言えるかもしれません。もっとも、その道のりは簡単ではなく、Abiturの成績はオール1に近くないと入学できないという話も聞かれます。
卒業後は高い給料と安定した職業が約束されていますが、激務でも知られており、また在学中には過酷な試験や実習を何度もパスしなくてはいけません。
6位:心理学部(Psychologie)・・9万人
女学生の人気学部ベスト2位と、女性人気が高いことが心理学部の特徴です(ちなみに、男性の人気学部のトップ10に心理学部は含まれない)。医学部ほどではないにせよ困難な入学要件を持ち、かつ適性検査や入学後の試験など、心理学部として学位を修めるのは簡単ではありません。
かつては卒業して博士号に進んだり、心理学療法士になったりという道が一般的でしたが、最近では企業のお抱え療法士として、あるいはマーケットリサーチなど、民間企業での道も多く用意されています。
7位:経済学部(Volkswirtschaftslehre)・・8万6000人
経営学部が頭文字をとってBWLと呼ばれるのに対し、経済学部はVWLと呼ばれます。選考内容は経営学部と近い要素が強く、マクロ経済、ミクロ経済、統計、法律、貿易周りがメインテーマとなります。経営学部と同じくビジネス世界に密接な学部であることから、つぶしの効く専攻として学生の人気を集めています。
8位:ドイツ学部(Germanistik/Deutsch)・・7万2000人
心理学部同様、女性の人気が高いのがドイツ学部の特徴です。ドイツ語、ドイツの歴史などを扱うドイツ学部は、日本でいう文学部のような位置づけに近いかも知れません。ドイツ人の文化や考え方を専門的に扱うことから、ドイツ市場を相手取る大手日系企業の中でも、ドイツ学を履修した日本人学生の人気は高いと言えます。
日本の大学でもドイツ語学科は用意されているよね
ドイツ国外からドイツ学を学ぶにくるような人たちの中には、その後帰国してドイツ語教師になるような層も多いわね。詳しくは「ドイツ学(Germanistik)って何?勉強するメリットと卒業後の進路とは」の記事を参照してね!
9位:経営工学(Wirtschaftsingenieurwesen)・・6万9000人
経営学部と非常に似通っており、また専攻内容にも被る範囲が多いのですが、経営学部が実践的な経営を通じたアプローチであるのに対し、経営工学は統計や最適化など、理系の知識を用いたアプローチが多いのが特徴です。経営学部同様、ビジネス分野に精通することから卒業後のつぶしが効きやすいと言えるでしょう。
10位:電子工学部(Elektrotechnik/Elektronik)・・6万7000人
自動車産業を基幹ビジネスとするドイツでは常に一定数の雇用需要が保たれる、数ある学部の中でも安定性の高い専門分野と言えることから、学生から高い人気を誇ります。自動車だけでなく、オートメーション、エネルギー分野といったドイツ政府が力をいれている産業との親和性も高く、今後も高い需要が見込まれることでしょう。
参考: Statistisches Bundesamt(Studierende an Hochschulen)