ドイツに進出した日系企業にとって、現地社員の採用は大きな課題の一つです。特に営業やマーケティング、R&Dなど、ビジネス拡大の次のステップにとって「新しいドイツ人人材」はクリティカルであることが多いと言えるでしょう。

さて、どこの国でも採用の悩みは一緒で、ドイツでも「人材難」と「就職難」という一見相反する問題が労働市場を襲っており、現地の日系企業を含め対応に追われ続けています。

もっとも、あまり悲観的になる必要はありません。数字とやり方さえ押さえておけば、優秀なドイツ人採用は可能です。

本稿では、優秀なドイツ人の採用が難しい理由、にもかかわらず成功している例を、ドイツで1999年から人材紹介事業を営む弊社の見識を元に解説していきます。

優秀なドイツ人と日系企業のミスマッチは何故起きている?

日本の労働市場と同様、優秀かつ即戦力として成果を出せるドイツ人人材は市場でも貴重なため、各社による争奪戦が発生しています。「優秀」の定義によりますが、仮に数字を上げられる営業を「優秀」だと言うのであれば、彼ら/彼女らの年収は一般的な市場相場よりも高いことが予想されます。

というわけで、優秀なドイツ人人材は少なくないものの常に不足しており、ドイツ人のキャリア志向に見合った大手のドイツ系企業、その他の欧米系企業などが潤沢な資金を背景に採用してしまう傾向にあります。

特に昨今、ドイツ経済を覆う不景気の影響で、優秀な社員はわざわざ危険を冒して転職することはせず、多少の不満があっても今の職場にとどまります。そのため、今まで以上に市場に優秀なドイツ人候補者が溢れづらい構図となっているわけです。

一方で、自動車産業などが「人員削減」の傾向にあるため、次世代に取り残されたとされる人材が転職市場に溢れ、結果として「企業から見たら採用難」と「失業者からみたら就職難」という矛盾する現象がドイツの労働市場に起きているわけです。

変わりゆく給与主義の採用

では結局のところ、大金を払える会社だけが優秀な人材を勝ち取ることができるのでしょうか?一時期まではそういったマネーゲームのようなトレンドもありましたが、昨今では流れが変化し、企業側も徐々に戦略的な採用をおこなうようになってきています。

特にドイツの中小企業が取る戦略は、長期的な人材育成です。地元の大学や専門学校を卒業した学生を、在学中からWerkstudent(学生アルバイト)などの名目で囲い込み、スローながらに安定したキャリアを提供していくというもので、大企業がダイナミックでスピーディな結果を求めるのに対し、自分のペースで仕事をしたいというドイツ人人材を長く育成することを目的としています。

Googleが「Googler(Googleらしい人材)」の採用を自社の採用戦略の軸に据えているのと同様、各社も自社の社風に似合った人材をこのように囲い込み、「長く居心地の良い」雇用環境を作り上げていくことを心がけています。

今すぐできる優秀な人材の囲い方

給料だけが昨今の優秀な人材を囲い込む戦術ではない状況で、長期的なキャリアパスや社風による労働環境の安定は、金銭面以外で優秀なドイツ人雇用の軸の一つとなります。

もっとも、こうした社風やキャリアパスの発展は内部のノウハウが育たないと実践が難しいものです。対して、以下のような施策は比較的「すぐに」着手することができるため、優秀な人材とのミスマッチが起きている場合、このような手法を試してみても良いかもしれません。

1)明確なメリットを与える

日系企業の求人広告や採用の説明で多くなりがちなのが、自社のPRです。

「当社は創業50年の日本企業です」「世界30か国で事業を展開しています」「高品質な製品を提供しています」

といった文言は確かに聞こえが良いですが、優秀なドイツ人求職者が関心を持つのは会社のネームバリューよりも「その会社で働くと、具体的にどのようなメリットがあるのか」という点です。

金銭というのは分かりやすいですが、それ以外にも「日本本社での研修」「チームリーダーとしてのポジション」「新製品開発の舵取り」といった、直接キャリアに関わることはドイツ人にとっては魅力的です。

特に30代の優秀なドイツ人人材の悩みとして「自分の会社で昇進したくても、上司のポジションに空きが無い」ということが挙げられるため、ポジションを求めての転職は大いに考えられるからです。

2)同業他社の制度を研究

優秀な候補者は他社からのリクルーティングも多いため、内定を複数貰ったうちから比較して最終判断を下すことになります。上記のような明確な「メリット」も重要ですが、他社と比較した際のデメリットを少なくする、というのも重要です。

具体的には、給与水準のような相場の分かりやすいものは勿論、営業車の私的利用、ホームオフィス等々、同業他社がアピールしている福利厚生部分を分析して、「他社はあるのにこの会社には無い」という状況を防ぐことが求められます。

3)プラスアルファの福利厚生を活用

昨今のドイツ企業のトレンドに見られるのは、金銭的なインセンティブではなく、企業側にとっても税制部分のメリットの大きい福利厚生サービスです。「交通費補助」「ランチ補助」などは今までもあったものですが、加えて「フィットネス(健康促進)」「語学研修補助」「電動バイク貸与」などの社員向けサービスの向上を提供する企業も増えてきました。

ドイツの伝統的な企業の中にも、こうしたプラスアルファの福利厚生を導入している会社と導入に悩んでいる会社が混在しているのが現状ですが、求職者に魅力を伝える目的でも、現在の従業員のモチベーションを向上させる目的でも、有効な手段として徐々に受け入れられている印象です。

もっとも、現時点ではプラスアルファの福利厚生として活用されているこういった制度も、今後は「あって当たり前」の制度として浸透していく可能性もありますね。

このように、優秀なドイツ人人材を確保する戦略は日々進化し続けているため、企業内でも給与相場や社風にみあった独自の採用戦略を組み立てることが求められます。弊社Career Managementは、1999年設立の強みを活かし、このようなドイツ人材採用戦略の要である人材採用のお手伝いを続けております。

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