ドイツの企業では、従業員が社有車(Dienstwagen)を業務だけでなくプライベートでも使用することを許可していることをご存知でしょうか?
これは福利厚生の一環として導入されているヨーロッパ特有の文化であり、この制度を用いると自腹で車を購入せずに社有車を私的利用することが可能なばかりか、燃費や保険料金も会社が負担してくれます。
もっともこの社有車の私的利用制度、全ての会社が認めているわけではないですし、使用するにあたっても税金や運用面で規則があることに注意が必要で、最悪の場合は解雇や罰金に繋がります。
本稿では 会社勤めの従業員目線で、社有車に関して最低限知っておくべきポイントを解説していきます。
社有車利用の種類
ドイツの会社で支給される社有車の運転可能な範囲は、大きく以下の3つに分けられます。下記のうち、私用で乗っていいのは「完全な私的利用OK」と見なされた会社のみで、それ以外の場合に私的に社有車を用いると、最悪の場合解雇などの処分対象となります。
自身の会社や部署がどのパターンに属するのかをチェックするには、就業規則を読んだり、人事部に聞いて確認する必要があります。
この社有車の私的利用がOKな場合の魅力的なポイントとして、基本的には会社側が「自動車保険代」「燃費」「メンテナンス代」「車検代」などを担保してくれる点です。
もっとも燃費に関しては無限に負担してくれるわけではないので、後述の章を参考にしてください。
私的利用OKの場合の課税ルール
社有車の私的利用がOKな場合、社有車は「現物給与」としてカウントされ、その分の税金が課税されることとなります。
課税方法は「1-%-Regel」と呼ばれる定額方式と、「Fahrtenbuch」と呼ばれる走行記録簿による変動方式があります。
1)1-%‐Regel(定額方式)
社有車の私的利用を認めている会社の中で一般的な課税方式です。「車両の新車時リスト価格の1%を課税+通勤距離の0.03%/月」が所得として見なされ、これに対する税金を支払う必要があります。
例として、新車価格50,000€の「AUDI A4」を私的利用OKの社有車として用いており、自宅から会社までの距離を15㎞と仮定します。
その場合、毎月以下の数値が課税所得と見なされることとなります:
(1% × 50,000€ )+(0.0003 × 50,000€ × 15km)=725€ / 月
これは月々の給与に加えて課税所得とみなされるという意味で、毎月725 €を手出しする必要があるというわけではありません。実際に負担になるのは、725€に税率をかけた300€ / 月前後となります(※税率は個人によって異なりますので注意)。
なお、電気自動車の場合は新車価格の0.25%、特定の基準を満たしたプラグインハイブリッド車の場合は0.5%が適用されます(2026年1月時点)。これはドイツ国内のルールで近い将来変更される可能性もありますので、適宜確認が必要です。
2)Fahrtenbuch(走行記録簿)
中には、社有車を私的利用OKの条件で借りていても、私的利用が極端に少ないなどのケースも考えられます。その場合、定額課税ではなく「走行記録簿形式」といって、社有車を運転した中の私的利用の割合に応じて課税する、という方法もあります。
要するに「年間リース料」「メンテナンス料」「保険料」「燃費」の中から私的利用した部分のみを課税対象にする、という考え方なので、例えば私的利用が全体の10%程度であれば、月額の課税が100~200€くらいになることも考えられます。
ただしこの走行記録簿方式、計算と記帳が非常に手間なことから、実務上はあまり利用されていないのが実情です(トラブルを避けるため、認めていない会社もあり)。
燃費の取り決め
上述の通り、ドイツの社有車は用いる場合「自動車保険代」「燃費・電費」「メンテナンス代」「車検代」などを会社負担としてくれます(※一部例外あり。ご自身の就業規則を参照してください)。
こう聞くと好きなだけ旅行に使おうと思うかも知れませんが、実際には「無制限に燃費・電費を使う」ことを禁じる制約が設けられているので注意が必要です。
一般的には社有車の使用には「常識的な範囲」での使用が求められることが多く、例えば毎週末ドイツからフランスに旅行して帰ってくる、みたいな使い方をしていると総務部などから声をかけられる可能性があります。
また、より定量的に使い過ぎを封じる方法もあります。社有車は「リース契約」であることが多く、そのリースの年間走行距離限度がそのまま上限となるパターンです。
ほかにも「国境を超える利用の禁止」や「長距離移動の際の申請義務化」などで利用上限を縛ることもあり、実際には無制限にガソリンを使い放題となるわけではないことに注意しましょう。
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