ドイツ語は、母語話者としての人口は中国語やアラビア語に劣るものの、経済的、政治的に強いパワーを持つことから世界的にも「最も強い言語のひとつ」とみなされています(参照:Power Language Index)。
日本でもドイツ語を第二外国語として履修する人口は少なくなく、また一部の大学は専攻としてドイツ語学科を取り入れるなど、国策上重要なパートナーであるドイツとドイツ語を重んじる動きが見られます。
さて、こうした「ドイツ語学科」はドイツ語圏ではGermanistik(ドイツ学)の下位カテゴリに分類されており、ドイツ語教師になるドイツ人だけでなく、ドイツ語を専攻した他国の学生なども魅了していることで知られています。今回の記事では、本場ドイツでGermanistikを修学するメリットや、将来の進路などについて解説をしていきます。
ドイツ学部(Germanistik)とは
単なるドイツ語の習熟が目的ではなく、文学、哲学、歴史、言語学、文化人類学といった広範な視点からドイツ文化を網羅する人文学的な学問になります。日本でいうところの「文学部」に近いようなイメージになるかも知れません。文化一般を扱うため、上記の分野に加えて、政治、心理学、社会学、芸術学なども選択科目として用意されており、「ドイツ学」という科目の響きが持つよりも幅広い履修が可能です。
ドイツ全体では8位、ドイツの女学生に関しては5位の人気を持つ学部で、母国でドイツ語を勉強した非ドイツ語ネイティブの学生などからも人気が高いことで知られています。例えば日本からの学生ですと、ドイツ語学科の学生が留学したり、ドイツ語学科を卒業した学生がドイツの大学院でドイツ学部に進学する、といったケースが多々見受けられます。
有名な学問のため、ドイツの大きな大学では大抵ドイツ学部を設けてありますが、学問の特性上、工科系の大学よりもハイデルブルグ大学のように人文系に力を入れている大学のほうが人気の高い傾向にあります(もっとも最近では、工科大学系もドイツ学科に力を入れ始め、履修できる専門分野の枠も広がっています)。

ドイツ学ってドイツ語を勉強する学問だと思っていたけど、意外と幅が広いんだね

伊達に、ドイツで人気学問の一つじゃないわね。当然言語も勉強する一方で、文化学、音声学、分析学など多様な学問を援用し、とても実用的よ
ドイツ学部で身につくこと
ドイツ学部の特性は「言語学系」や「文学部系」等に分類され、実際に何を主要科目として選ぶかによって習得できる分野は異なります。例えば言語学系に特化した学生は、コンピューターサイエンスや脳科学など、文系学部の枠組みを大きく超えた分野の習得が必要になってきます。
また、卒業後に教職として進むのか、一般就職を目指すのか(職種に関しては後述します)、博士号を目指すのかなど、将来の進路によっても選択するモジュールは異なり、全ての学生が同じ学問を習得するわけではありません。
文学、言語学、歴史、の3点は多くの大学で必修科目に加えられており、共通理解としての習得が要されています。こうしたドイツ文化を歴史的な軸で読み解くためには、膨大な量の文献を読み漁り、ゼミのメンバーとのディスカッションを通じて情報交換し、体系だった論文にまとめて発表する、というプロセスを踏んでいくこととなります。また、教職員課程に進む学生が多いため、上記の必修科目に加えて教育学という軸を設けてある大学がほとんどです。
- ドイツ文化や歴史の深い理解
- 言語学知識と分析
- 哲学や文学など人文科学一般の理解
- 社会学的なアプローチ
- 将来のキャリア育成としての教育学

コンピューターサイエンス!ガチガチの文系ってわけでもないんだね

そこは上述の通り「何を本格的に勉強したいか」によるわね。いずれにせよ分析を生業とするのであれば統計や分析学の知識は必須だし、一つの物事を多角的なアプローチで深掘りできないと、良い研究は生まれないと思うわ。
ドイツ学部に向いている人
上述の通り、Germanistikを修学する際のキーワードとなるのは「文化」と「言語」です。授業についていくためにドイツ語の理解があることは勿論のこと、単に表面的な語彙や表現を理解するだけではなく、音声学、意味論・語用論、文化学といった多面的なアプローチによって言語を分解できる分析力が求められることでしょう。
専攻の特性上、文献や文学資料とにらめっこすることが多い一方で、プレゼンテーションやセミナー、場合によってはフィールドワークといった社交的な行動も必要とされます。机上の知識と現実世界の文化を上手く結びつけられるバランス感覚が、Germanistikを履修する学生には求められると言って良いでしょう。

大学でドイツ語学科を卒業したので、ドイツの大学院でGermanistikのマスターを勉強したいんだけど・・

そういった需要は多いわね。ドイツでは基本的に大学の専攻=大学院の専攻と、同じであることが求められるから。ただドイツ語ができます、ってだけじゃなくて、ドイツという国を好きで、文化を広く深く知りたいという知的欲求が重要よ!
ドイツ学の学部を卒業後のキャリア
民間企業への就職でいえば、ドイツの言語、文化に精通する、ということを目標としていることから、言語に携わる「メディア系」の分野が卒業後の人気就職先となります。具体的には、ジャーナリストやコピーライティング、広告会社、場合によっては企業の広報部などもそれに当てはまります。
その他教職や図書館司書といった公的な仕事もドイツ学部卒業生の受け皿として人気です。また、ドイツ学を履修した外国人留学生は、母国でドイツ語教師になるといった道も多く見受けられます。
ドイツ学を身につけた日本人、といったくくりであれば、ドイツに進出する日系企業ほぼすべてが就職の射程範囲となります。日本にとってヨーロッパで最も重要な進出先の一つであるドイツには、毎年多くの日系企業が進出していますが、ドイツ語・ドイツ文化に精通した日本人の確保は売り手市場化しています。広報やマーケティングなどドイツ学の知識を要する部門は勿論、営業推進やマネジメント職など、ドイツの文化を理解した人間が得意とするポジションも人気です。

研究者になるようなイメージがあったけど、意外と企業での受け皿も豊富なんだね。

特に、ドイツで活動する日系企業はドイツを知り尽くした人材を重宝する傾向にあるわね。ドイツ学を活かしたドイツでの就職案件に関しては以下を参照してください