ドイツと日本で年金保険に加入:受給方法と制度解説

2020-06-12 | タグ:

すでにドイツに滞在している人も、これから渡独を計画している人も、特に若い人で年金制度について詳しく調べたことがあるという人は意外と多くありません。人づてで「ドイツで年金を納めた分も日本でもらえるらしい」など、特に30代以下の若い世代は漠然とした情報やイメージは持っていても、まだ受給年齢まで先が長いため詳細について調べるのは後回しにしがちです。

今回のコラムでは、そもそも数十年後に年金がもらえるかという問題は置いておいて、日本人がドイツで年金保険に加入した際、将来どのような受給方法の選択肢があるかを詳しく紹介していきます。

まず、ドイツで年金保険加入期間がある日本国籍の人の受給パターンを大きく2つに分けましょう。

  1. 最終的に日本で受給
  2. 最終的にドイツで受給

結論から述べると、どちらの道を選んでも両国での加入期間を合算して受給することができます。日本とドイツは日独社会保障協定を結んでおり、この協定に従い、ドイツでの加入期間は日本で加入していたものとして数えることができるからです。それでは、一つひとつケースを見ていきましょう。

日本で老齢年金を受給

日本で受給する人でも、以下の2つの異なる道筋が存在します。

  1. 駐在でドイツ滞在が5年未満となり、ドイツでの年金保険加入を免除された
  2. 日本の年金保険を一度解約→ドイツで加入→そして帰国し日本で受給

以下、それぞれのルートに関して具体的に解説していきます。

5年未満の滞在でドイツでは年金保険未加入

日独社会保障協定により、一時派遣期間(60歴月)中は日本の年金制度のみの加入で、ドイツでの加入が免除されます。つまり、ドイツへの滞在が期限付きの駐在員などは、このメリットを享受することがほとんどです。

日独協定では、当初5年を超えると見込まれる場合の派遣であっても派遣開始から60暦月までは、派遣元の国の年金制度にのみ加入し、派遣先の国の年金制度の加入が免除されます。(日本年金機構のHP参照

免除された場合は、ドイツの年金保険への掛け金は存在しませんので、最終的に受給するときはシンプルに日本年金保険機構とのやり取りとなります。また派遣が60歴月を超える場合も、特別な事情があれば36歴月までは延長できる可能性があります。ドイツの年金保険に相談するとよいでしょう。

なお、厚生年金保険および国民年金保険の被保険者がドイツ年金制度への加入免除を申請する場合、原則派遣前に申請しなければなりません。詳細と申請書は、日本年金機構が提供しています(リンク)。

ドイツの年金保険を解約し日本で受給

日本人がドイツ年金保険の加入期間を合算できることは上述済みです。しかし、具体的にしなければならないこと、掛け金を還付する方法など、道は複数存在します。

日独両国の年金加入期間を通算して日本年金を請求

まず、両国の年金申請は住んでいる国でまとめて行うことができます。日本在住の人は日本で、ドイツ在住の人はドイツで可能です。日本で申請する場合は全国の年金事務所にて申請します。

日本年金機構のHPに記載されているPDFに必要事項を記入し、ドイツでの掛け金分を通算して申請します。つまり、日本語での提出が可能です。

なお、本帰国前にドイツで処理しなければならない手続き等はありません。ただし、ドイツで支給された年金番号は保管しておきましょう。名前・生年月日・出生地の情報があれば年金情報を特定してくれる事もあるそうですが、自身でドイツ在住時の書類や年金番号を保管しておくのが理想的でしょう。

ドイツで支払った保険料を払い戻し

特定の条件下で、年金を通算で受給するのではなく、返金をしてもらうことができます。

【条件】

  • ドイツでの年金加入期間が60ヶ月に満たない
  • ドイツの年金保険から脱退済み
  • ドイツの年金保険に加入する資格を有さない
  • 脱退から最低24ヶ月が経過している
  • 過去にリハビリなどで年金保険を使ったことがない

一つ目の「年金加入期間が60ヶ月(5年)に満たない」という条件が設定されているのは、ドイツでは最低5年間加入していなければ年金を受給できないという規則があるからです。つまり、5年以上加入期間があり受給資格を有する者は、返金ではなくドイツ年金を受給、もしくは日本の加入期間と通算して年金をもらいましょうという意味です。逆に受給資格がない人は、支払った分を返金してもらうことができます。ただし、いくつか注意点がありますので以下に紹介します。

【注意点】

  • 日本以外のドイツと社会保障協定を結んでいる国、及びEU諸国で同じように年金保険加入義務により支払いが発生していた場合、その期間も60ヶ月にカウントされる
  • 一度返金した場合、もう期間の合算はできず、ドイツの年金も受給できない
  • 企業が負担した分の保険料は戻らない
  • 任意保険料(Freiwilliges Mitglied)の返却は半額のみ

ドイツで支払った保険料の払い戻しを検討する際は、上記の4つの注意点も一緒に考慮しましょう。特に大事なのは、3つ目の企業負担分が戻らない点です。例えば、給料から毎月500€の年金保険が引かれている場合、企業側が250€、自分で250€の支払いを積み立てていることになります。しかし、払い戻しの場合は自分で支払った分しか戻りません。

法定年金に上乗せして任意保険料を支払っていた人、自営業で任意で法定年金保険に加入していた人も、支払総額の半額しか払い戻しされません。

なお返金の申請は、在日のドイツ系保険会社、ドイツ大使館、ドイツ領事館で行えます。母国語での申請も可能ですので、代理人や通訳を雇う必要もありません。

日本にいながらドイツに口座を残しユーロで受給

前提として認識しておくべきことが、『協定国で支払った保険金は、各協定国の保険に貯蓄される』ということです。つまり、通算せず、受給の条件を満たした国からそれぞれ年金を受給することも可能ということです。

ですので、5年以上ドイツで加入期間がある人は、ドイツにインターネットバンクで口座を保持しておき、ユーロで毎月受給し、為替レートを見計らい日本円に換金するという手もあります。一括払い戻しでは50%しか保険料が戻りませんが、こちらの選択肢では掛け金全額がカウントされます。

ドイツで法定年金を受給

ドイツの年金にもリュールップ年金、リースター年金、企業年金など複数種類がありますが、今回は一番のベースとなる義務の法定年金(Gesetzliche Rentenversicherung)に絞って紹介します。まず、ドイツで年金を受給する資格を持つための条件を確認しましょう。

  • 67歳以上
  • ドイツでの年金保険加入期間が5年以上

正確には、受給開始可能な年齢は生年月日によって異なりますが、1964年以降の人は67歳からとなり、それ以前の人は60歳から67歳の間で段階的に引き上げられます。また保険加入期間の長さにより受け取れる年金の種類も変化します。

5年以上:標準老齢年金(Regelaltersrente)
35年以上:長期間の被保険者の老齢年金(Altersrente für langjährig Versicherte)
35年以上:重度障害者の老齢年金(Altersrente für schwerbehinderte Menschen)
45年以上:特に長期間の被保険者の老齢年金(Altersrente für besonders langjährig Versicherte)
※「重度障害者」と「特に長期間」の老齢年金に該当する人の受給開始年齢は、上記の記載とは異なります。参考資料:Deutsche Rentenversicherung PDF(日・独、pp. 3-6)

自身のケースを見たい場合は、ドイツ年金保険庁のHPでも受給開始年齢を計算できます(ページへ)。

日独両国の年金加入期間を通算してドイツ年金を請求

ドイツの年金の仕組みを理解したところで、実際に請求する手順を確認しておきましょう。

まず、両国の年金は住んでいる国でまとめて行うことができます。つまり、ドイツで受給する人はドイツの年金相談窓口を通じて行います。

ドイツ年金保険庁(Deutsche Rentenversicherung Bund
Eメール:meinefrage@drv-bund.de
TEL:0800 1000 480 70

日本で支払った保険料を払い戻し

こちらの申請には厳しい条件項目があり、申請条件を満たせる日本人は少ないでしょう。以下が申請可能な人の条件項目です:

  • 日本国籍でない人
  • 日本に住民登録していない人
  • 最低保険加入期間の6年間掛け金を支払った人
  • 年金受給の資格がない人

つまり、払い戻しは日本人向けではなくドイツ人向けの制度で、国籍を変えない限り日本人の選択肢には含まれません。

ドイツにいながら日本に口座を残し円で受給

こちらも日本の受給資格を有している限りシステム的に可能です。通貨を分散しておくのはリスク回避の観点で言えば非常に重要です。ただしメリットとデメリットを把握して置く必要があります。為替相場を見ながら被保険者に有利なタイミングで換金できることをメリットだとすると、加入期間を合算しないことで各保険の加入期間自体が短くなり、完全受給の条件を満たせなくなることがデメリットです。

以上が、ドイツと日本の両国で年金制度に加入した人の大まかな選択肢です。ただし、失業期間の有無や配偶者の有無、病気・育児期間など、個々の環境によって加入期間の数え方が変わってきます。詳しく知りたい人は保険庁へ直接問い合わせるのが得策でしょう。

Related Posts