ワーキングホリデービザやリモートワークの拡大により、特に若い世代を中心に「旅行しながら仕事する」いわゆるノマド的なライフスタイルが浸透しつつあります。

ひと昔前までは、長期滞在には厳格なビザ要件が必要だったヨーロッパ諸国も、こうした働き方の変容に伴い新たにデジタルノマドビザという制度を導入し始めています。

本稿では、ヨーロッパの中でデジタルノマドビザを用いて旅行しながら仕事ができる国を紹介していきます。

注意: 本稿の内容は2025年5月現在のものです。支給要件などは不定期に更新されるため、申請にあたっては最新の情報をご確認ください。

デジタルノマドビザとは?

デジタルノマドビザとは、「国外の仕事を持ったまま、特定の国で暮らしたい人」をターゲットにしたビザのことです。

コロナ禍以降急速に「リモートワーク」という需要が高まり、パソコンがあれば世界中どこにいても仕事ができる可能性が広がりました。こうした新しいトレンドに合わせ、「現地雇用がなくても自分の生活費を稼げている人」にその国への滞在を許す制度が誕生したわけです。

従来、その国に長期間(例:3か月以上)滞在する場合、就労ビザや配偶者ビザのような自身の安定した収入を担保する資格が必要でした。特に就労ビザの場合、「現地企業との雇用契約書」が必要だったわけです。

一方デジタルノマドビザの場合、現地雇用を必要としないケースが多く、例えば日本の会社とリモートワークしながらポルトガルやギリシャで生活する、といったことが可能になるのです。

比較項目 デジタルノマドビザ(Digital Nomad Visa) 通常の就労ビザ(Work Visa / Employment Visa)
対象者 国外企業やクライアントのためにリモートで働く人 現地の企業に雇用されて働く人
雇用形態 自営業または海外企業との契約 現地雇用(雇用契約が必要)
雇用主 国外の企業・個人クライアント ビザを発行する国に拠点のある企業
申請要件の例 一定の月収・健康保険・住居証明(等) 雇用契約書・健康保険・住居証明(等)
滞在期間 通常は6か月〜2年 雇用契約に応じるが、基本的には1年以上の長期
利点 移動の自由、海外の仕事を続けながら長期滞在可能 スポンサーさえ見つかれば、取得難易度は若干下がる

デジタルノマドビザが支給されるヨーロッパの国一覧

「デジタルノマドビザ」という呼称を用いている国もあれば、フリーランスビザであるが蓋を開けてみればデジタルノマドの条件に近いビザを発行している国もあります(フィンランドやドイツなど)。

デジタルノマドビザの申請には、自身が最低限の生活費を稼げるかどうかが一つのポイントとなりますが、下記のルーマニアやエストニアのように、明らかに現地の賃金水準を大幅に上回る収入を求められる国も少なくありません。

国名 名称 最低月収 滞在期間 出典
フィンランド 自営業者ビザ €1,220 半年(更新可能) Forbes.com
Etias.org
ドイツ フリーランスビザ 明確な規定なし
(※目安は年間9,000€)
基本1年 Etias.org
スペイン デジタルノマドビザ スペインの
最低賃金の2倍
1年(更新可能) スペイン領事館
ポルトガル D7ビザ €705 4か月(後に1年に変更可能) Etias.org
クロアチア デジタルノマドビザ €2,300 1年 Etias.org
ハンガリー デジタルノマドビザ €2,000 1年(更新可能) Etias.org
ギリシャ デジタルノマドビザ €3,500 1年(更新可能) Etias.org
ルーマニア デジタルノマドビザ €3,700 1年(更新可能) Etias.org
エストニア デジタルノマドビザ €3,504 1年 Etias.org
ノルウェー デジタルノマドビザ €35,719 2年間 Etias.org

このテーブル以外にも、面接を課している国や、収支表の提出を求められる国などもあるので、個別の条件に関しては当該国の領事館などをご参照ください。

デジタルノマドビザの申請は簡単?

このように制度として導入が始まったデジタルノマドビザですが、申請者側からすると以下のようなデメリットがあります。

注意点 詳細
申請条件が複雑 リモートワークの契約書、銀行の口座残高、収支表等様々な書類の申請を求められます。国によっては申請からビザの受領まで数か月を要するパターンもあります。
長期滞在向けではない 多くの国ではデジタルノマドビザは「1年」程度の滞在を念頭に置いた制度であり、都度更新を行う必要があります。
税制上の問題、二重課税のリスク 日本は多くの国と租税協定を結んでいますが、実際のところ国を跨いでの納税システムは複雑な場合が多く、現地の税理士や会計士によっては二重課税防止の方法が分からず、余計な費用が発生することがあります。

申請が複雑な割には滞在許可される期間が短く、長期的に腰を据えてその国に滞在したい場合は別のビザを申請しなければならないことが多いと言えます(自営業ビザなど)。

こうした手間と労力を考えると、当該国で就職活動をして会社員として採用されて就労ビザ、ひいては永住権取得を目指したほうが長期的には選択肢の幅が広がるかもしれません。例えばドイツでは、通常5年間の就労によって永住権獲得の権利を得ることとなり、その後フリーランサーなどに転身するケースも少なくありません。

ヨーロッパへの長期的な移住を試みるのであれば、現地の文化や労働環境に慣れるためにも、難易度の高いデジタルノマドビザやフリーランスビザではなく、一般的な就労ビザの取得から始めてみるのも選択肢です!

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