ドイツに長期滞在する日本人の数は約50,000人と、実はEUに移住したい日本人にとって隠れた「人気移住スポット」として、英語圏外では移住人気が高い国の一つです。
今回のコラムでは、今年こそEU移住を志す日本人にとってドイツがお勧めである7つの理由について解説をおこないます。
この記事の読者層:
- EUに移住したいがどこの国が良いか分からない
- 今年こそ移住したいがどこから情報集すればいいか分からない
- ヨーロッパに漠然とした憧れがある
日本人にとっても仕事のチャンスが多い
EUの中でドイツを選ぶことの最大の魅力の一つが、日本人にとって仕事のチャンスが多いという点です。ドイツに拠点を構える日系企業の数は2024年現在で約2,000社と、現地の日系企業における現地採用の需要が高い状態が続いています。
日系企業の進出が少ない地域だと就職先は現地の企業に限定されてしまい、その場合高度な現地語能力を要求されることが少なくありません。一方、日系企業の数が潤沢なドイツの場合、就職市場には必ずと言ってよいほど日本語人材の求人があり、他国に比べ就職先を探す難易度は低めに設定されています。
また、言語レベルを含めた就職難易度に目を向けると、日本人の在独日系企業就職者のうち、全体の45%はドイツ語未使用のポジションであり、必ずしもドイツ語が必要とは言えず、英語さえ話せれば就職のチャンスが多いことも魅力です。
ドイツでの仕事の受け皿の9割以上を占めるドイツ企業の求人に関してですが、基本的な要件として「ドイツ語」が必須になる会社がほとんどである一方、少なからず「ドイツ語不問」の会社も存在します。特に、ベルリンやフランクフルトのような大都市では企業のグローバル化も顕著であり、おのずと社内の公用語もドイツ語・英語を使い分けたり、英語のみで行われているケースも存在します。
出典:ドイツ語が話せなくても就職が可能?ドイツ語不問のドイツ求人一覧
例えば、以下の表は日本人の中で在独日系企業に内定を得た者のドイツ語技能を表していますが、上述の通りほぼ半分が「ドイツ語知識ゼロ」からのスタートだったことがうかがえます。
年金、免許証等、日本と様々な制度の互換性がある
日本とドイツを行き来する駐在員や学生の数は多く、そのためドイツに住む日本人は多くの面で恩恵を受けられます。具体的には、以下の部分で他のヨーロッパ諸国との違いが見受けられ、日本人であることが最も優遇されている国として見ることができるでしょう。
- 年金制度(二国間保障協定)
- 運転免許証
- ワーキングホリデービザ
- 労働ビザの取得難易度の低さ
- 日本の学位の認められやすさ
まず、年金制度に目を向けると、日本とドイツ間ではAgreementが締結されており、両国での年金加入期間を合算して年金を受給することが可能です。このことは、日本で一定期間の職歴を持っている人でも、将来の年金の受け取りを悩まずに、ドイツに移住することを容易にします。また、逆もしかりで、仮にドイツで長年働いてある一定のタイミングで日本に帰国したとしても、やはり年金の受給資格は合算して計算することが可能です。
結論から述べると、どちらの道を選んでも両国での加入期間を合算して受給することができます。日本とドイツは日独社会保障協定を結んでおり、この協定に従い、ドイツでの加入期間は日本で加入していたものとして数えることができるからです。
出典:ドイツと日本で年金保険に加入:受給方法と制度解説
より実務的な側面に目を向けると、運転免許証の互換性が挙げられます。日本で運転免許証を持っていればドイツで書き換えが可能であり、教習所などに通わなくてもドイツで車を運転する資格を得ることが可能です。ただし、ドイツに長期滞在すること、ドイツに移住してから日本の免許証の更新をおこなっていないこと、などが条件になってきますので、個々の条件に関しては注意が必要です。
学術上、一部の国の学位はドイツでは認められませんが、日本の学位は正当なものと認められドイツでの編入が可能であるなど、駐在員の子供などにとってもこうしたメリットは魅力的です。
賃金所得が高い
ドイツの賃金所得はOECD先進国の中でも上位に数えられており、ヨーロッパでもLuxembourgやスイスといった人口の少ない国を除けばトップクラスです。統計や年次、職種にもよりますが2022年OECD調べでドイツの平均賃金は58,940USDで、日本の41,509USDを大きく上回ります。
日本との比較を行ってみると、以下の表に表されているように、ドイツでの大卒の給与水準は軒並み日本と比べると高水準で、全体的に約20%近く高い値となっています。
こうした高い給与水準を享受できるにもかかわらず、後述するように、ドイツの物価水準は先進国の中でもそこまで高いというわけではなく、日本より高い給与を得れば十分な生活の質が保証されます。欧州各国(フランス、イタリア等)と比較しても給与が高いため、月一でEU圏内を旅行などして満喫する、ということも十分に可能です。
ワークライフバランスが良い
OECD調べによると、ドイツのワークライフバランスの良さは世界でベスト8にランクインしており、下から数えて5番目の日本とは多くの面で異なります。
特に顕著なのは有給に関するとらえ方で、ドイツの場合年間に20~30日の有給が支給され、その消化は義務として定められています。法的な問題もありますが、それ以外に国全体の習慣として「仕事とプライベートは別であり、有給は労働者の義務」という姿勢がはっきりとみられることにあります。そのため、日本のように「有給はあるけどとりづらい」という空気ではなく、有給中は同僚や顧客も連絡を控えてくれるような形なのです。
ドイツの場合、社会全体がすでに休暇(Urlaub)という文化を受け入れており、日本のように「周りが休まないから私も休めない」といった圧力が存在しません。それゆえ、「有給はとって当たり前」という雰囲気が昔から流れていることが、原因の一つとして挙げられるでしょう。
出典:ドイツの有給休暇は年間何日?労働先進国ドイツに見るワークライフバランス
残業に目を向けると、ドイツ人は非常に効率を重視し、速やかに仕事を終えて帰宅することが良しとされています。そのため、17時に仕事を終えて家族との時間にあてるといった生活スタイルが、ドイツでは一般的ととらえられています。
生活しやすい
欧州諸国の中で比較しても、ドイツの都市の生活水準の高さは度々評価されています。
Mercer’s Quality of Living Rankingによると、Munich(世界3位)、Düsseldorf(世界6位)、などは世界でも暮らしやすい都市ベスト10にランクインしています。実際に都市を訪れてみればわかるとおり、ビルが立ち並ぶ一方で、ものの十数分も歩くと都会の喧騒を離れて緑の多い公園や湖にふれることができます。
基本的に主要な都市には地下鉄や路面電車が通っており、生活の足に不自由することはありません。
また、外食こそ高いものの、一般的なスーパーマーケットなどの物価水準は他の高所得で知られる国と比べると安く、生活次第では十分に費用を節約した暮らしが可能です。
医療水準が高い
ドイツの医療水準は世界でもトップクラスであることが知られており、特に医療面で不安を抱える発展途上国や医療保険面で問題のあるアメリカなどと比べると、ドイツの大きな強みとも言えます。
U.S. Newsの発行するBest Health Care System Rankingによれば、ドイツの医療システムは日本の7位を上回る5位につけており、そのクオリティの高さが伺えます(Best Countries project by U.S. News)。
法定保険が必須となりますが、保険加入後は基本的に医療費は免除となるため、医者にかかるときに治療費の心配をする必要がありません。
物価がそこまで高くない
The Economist紙やCNNなど、世界中で様々な指標を用いた「世界生活費ランキング」が公表されているが、シンガポール、パリ、香港、ニューヨーク、東京などがランクインする一方で、ドイツの都市はこうした「物価が高い都市」上位にランクインすることはあまりありません。
GobankingRateの調べによると、生活費と購買力を勘案した「生活費の高い国ランキング」の中ではドイツは22位にランクインしており、8位の日本、12位のフランスなどに比べてそこまで生活費の高い国としてみなされていません
実際に生活してみればわかる通り、スーパーなどの食品の値段は日本とあまり変わらず(野菜、果物などはドイツのほうが安いことが多い)、一部都市(フランクフルト、ミュンヘン等)の家賃が高いことを除けば、そこまで生活に不便するということはありません。