これからフリーランスビザ(Aufenthaltserlaubnis für eine Arbeit als Selbständiger)を取得し個人で活動していきたいという方、既にビザは取得しこれから活動をスタートするという方のために、フリーランサー(Freiberufler/Selbständiger)として働く上で重要になってくる、確定申告や隠れざるアーティスト用の保険制度を詳しく紹介いたします。
確定申告
フリーランスで働く以上、毎年の確定申告は自身で行う必要があります。一方で不慣れな人にとって、こうした多くの書類手続きを必要とする確定申告作業は、ミスなども生じやすく注意しなくてはいけません。そのため、少なからずフリーランサーにとって、税理士(Steuerberater)に委託することが通例となっています。
ただでさえフリーとしての活動自体に慣れなければならない中、不慣れな税申請をドイツ語で行うには困難がつきものです。経験や知識がある場合、自分で行えば、税理士に支払う手数料を節約できますので、その点でのメリットは生じます。一方で、ゼロからのスタートということであれば、リスクを減らすという意味でも、必要経費として捉え税理士に委託するのが理想的です。数年経って自分でこなすようにしても決して遅すぎません。
税理士の選択方法ですが、可能であれば居住都市で見つけるのが便利です。実際に税理士と会って対話することは年に1-2回ですが、何かあったときにすぐに会えるというのは大きなメリットですし、繁忙期などに直接出向かなければならないという事態もないとは言い切れません。今ではスカイプやテレビ電話などあらゆるツールで顔を見ながら会話ができますが、どうしても知り合いの税理士にお願いしたいというケース以外は、『ご近所』がお勧めです。
なお参考情報として、主に確定申告では以下の3点を申告します。
- 利益申告(Gewinnermittlung)
- 収入税申告(Einkommensteuererklärung)
- 売上税申告(Umsatzsteuererklärung)
オンライン事前売上税申請(Elster)
フリーの方は毎年確定申告を行うだけでなく、毎月オンラインで税務署に該当月の収入と収入税を申告し、さらにその額を振り込まなければなりません。
その毎月の申告は比較的容易で、一般的にはエルスター(Elster)というソフトをパソコンにダウンロードし、登録するだけです。最初の登録プロセスは誰もが通る道ですが、一度済ませれば、あとは日本にいようがどこにいようが、パソコンから申告ができます。オンラインバンキングと組み合わせれば、逐一銀行や税務署を訪問する手間がなくなります。
登録方法は、以下のようにウェブサイトに分かりやすく記載されています。
(引用元:Elster)
- 登録後の毎回のログインには証明データ(Zertifikatsdatei)が必要となりますので、証明データを選択
- 登録プロセスをオンラインで済ませると、アクティベートデータが郵便及びEメールで届く
- Elsterを開きアクティベートデータを入力、証明データをダウンロード
- 証明データを入力し、ログイン完了
フリーランス活動時の保険制度
正社員として企業に勤めている時は、様々な税金や保険が給与から自動的に引かれていますが、保険料は会社と従業員の双方で負担している状態です。フリーになると、そういった保険の支払いは全額自己負担となりますので、必ず各保険組合へ連絡してください。また会社員と比較すると、おおよそ2倍の保険料を毎月支払わなければなりません。
ただし、芸術家や音楽家向けには芸術家社会保険組合(Künstler Sozialkasse)という制度が存在し、所属することで保険の支払い面でサポートしてくれます。同組合に所属することで、会社員の方々と同じように半額の保険料のみが自己負担となり、組合側が残りの半額を保険会社へ支払ってくれます。これで基本的には、フリーのアーティストも会社員と同じ条件で活動できるのです。
ここで浮上するのが、芸術家社会保険組合は一体どこからそのお金を算出しているのか、という疑問です。フリーランサーで仕事を外注する会社などは、法人税の一環としてプラスアルファで税金を納めなければなりません。その税金を同組合が芸術家支援に充てているのです。
ここでは簡単にこの組合の申請方法をご説明します。
- まずこちらのリンク(https://www.kuenstlersozialkasse.de/)へ飛び、登録(Anmeldung) をクリック。
- 登録申請用書類をダウンロードし、記入。
- その他個人データなどを入力フォームへ入力し、送信ボタン(Absenden)を押す。
実は、登録申請用書類の内容はやや難しくなっています。コンタクトから連絡を取ろうしてもなかなか繋がらなかったり、メールでの返信も遅いケースが多々あります。ですが、記入をサポートとしてくれるサポート文書なども同じアップロードされていますので、そちらを見ながら記入するのがよいでしょう。
確定申告、毎月の売上税事前申告、そして社会保険の最適化、この三つを網羅すれば、フリーランサーとしての基盤は安定します。あとはご自身のビジネスに注力し、売上拡大を目指していくのみです。数年を経て仕事にも慣れてきたら、さらなる収益増加を目指して事業を拡大していくか、PLやキャッシュフローの最適化ということで、自身での確定申告なども検討していいかもしれません。
また、フリーランサーを経験したのち、やはり企業勤めをしたいという方も実は少なくありません。もしこれから起業に再就職したいという方は、フリーランスビザから就労ビザへ更改するためのプロセスをご参照ください。更改の際の留意点を詳細に解説しています。