OECD調べによるとドイツの大学中退率は約25%で、中退率10%である日本の2倍以上の数値となっています。勿論、学部や大学の種類によってこの値は上下しますが、全体の傾向としてドイツの大学は日本よりも卒業が難しいと言えるでしょう。

さて、この卒業が難しい理由、単に学力や語学だけではなく、ビザや金銭的な理由も大きく関わってくることとなります。今回の記事では、日本人にとってドイツの大学を卒業するのが難しい理由と、その解決方法について紹介していきます。

ドイツで日本人の大学卒業が難しい理由

国籍別の中退率や、外国人の中退率などはドイツのデータとして残っていませんが、母国語や文化の壁が挟まることから、全体平均より少し高い、3割近い数字なのではないかと言われています(※ただし、学部によって中退率は異なる)。

日本人の中でもドイツの大学や大学院に正規留学しプログラムを満了する人は少なくありませんが、一方で卒業を迎えずに中退・退学する人も一定割合存在します。理由は人によって異なりますが、具体的には以下のような理由が挙げられます。

費用面の問題

留学補助金を申請していたり、大学の研究機関に所属できる場合などは別として、一般的にドイツの大学に通う日本人は自腹でその費用を捻出することとなります。学費自体は国立の場合ほぼ無料(一部施設利用料などが掛かる場合アリ)ですが、学費とは別に高額化しつつある居住費や食費は自身で支払うこととなり、一人あたり月額1500ユーロ(23万円程度)程度を見積もっておく必要があると言われています(出典:D Statis)。

日本の初任給と同じ額の支出が毎月なされる一方で、在学中はその勉強のハードさからアルバイトや副業を営める環境にいないため、在学途中であっても金銭的な問題で退学することも十分にあり得るわけです。仮に3年間のプログラムに通うとしたら、約1000万円近く必要になることとなります。

語学面の問題

当然のことながら、ドイツの大学での授業は英語またはドイツ語で行われます。大学入学前に語学要件での足切りが設けられているとはいえ、実際の授業や試験で用いられる言語の壁に悩まされ、成績が伸び悩むケースも多々見受けられます。大学の勉強内容は語学ではなく、自身の専攻のため、学生は慣れない語学を用いつつ専門分野の勉強をおこなう、という二重の勉強作業を強いられることとなります。

大学の中には、専攻科目と並行して語学のカリキュラムを設けてくれているところもありますが、卒業のための単位と認められることは少なく(一般的に、語学カリキュラムが単位認定されるのは大学まで)、単に時間的な負担が増えることになります。

試験の問題

大学の大学・大学院の特徴として、レポートや出席での意欲点ではなく、どちらかというと試験での一発勝負でセメスターの成績が定められてしまう点が挙げられます。このやり方は、日本の大学式の「過程重視」のやり方に慣れてしまうと覆すことが難しく、成績に伸び悩む原因となります。成績が悪くても卒業自体はできますが、その後の就職の過程で今後はGPAが大きく影響を与えてくるため、あまりに成績自体が悪いと自らドロップアウトしてしまう学生も存在します。

また、ドイツの大学では専門科目の試験を受けられる回数は定められており、数回連続で落第するとその科目は選択できなくなり、必然的にその学部を中退することとなります。

大学入学以外の選択肢

このような上記の理由から、一般的に日本人がドイツの大学を卒業するのは簡単ではないと言われています。勿論、難易度は学部や大学によって異なりますし、実際にドイツの大学を卒業した日本人の数も一定数は存在しますが、人によっては帰国子女でドイツ語が堪能であったり、国から留学補助を受けていたりと、条件が異なるため必ずしも自分に置き換えて「簡単」「難しい」の判断を下すのは早計でしょう。

ドイツの大学に行くことの目的によりますが、仮に将来ドイツで生活することや、ドイツに移住することが目的の場合、例えばドイツの大学進学以外にも以下のような方法が推奨されます。

日本の大学からドイツに交換留学する

日本の大学や大学院であればドイツの大学との半年~1年程度の交換留学プログラムを準備していることが多いと言えます。複雑なビザの手続きや試験の難しさに煩わされることなく、手っ取り早くドイツの大学の雰囲気を味わう方法と言えるでしょう。

また、日本の大学を卒業しておけば、同じ専攻であればドイツの大学院に応募できる資格を得ることができます。日本の大学を一度卒業し、社会人として2~3年働いて十分な貯金を貯めたうえでドイツ留学に臨むケースも多々見受けられます。

ドイツで直接就職する

もう一つの方法は、ドイツに直接就職してしまうやり方です。順序としては逆のようにも見えますが、ドイツ社会は社会人を挟んで大学や大学院に進学する割合が少なくなく、ドイツに就職し、金銭的な余裕や語学の自信がついてから大学に通い直す、などのやり方も十分に可能です。

多くの人が「ドイツで就職したい場合、ドイツの大学を出ていたほうが有利」と思い込んでいますが、実際にドイツの労働市場で重視されるのはスキルと経験であり、その意味では大学を介さずに直接就職してしまうやり方が効率的と言えるでしょう。専攻によっては、そもそも学位よりも就労経験のほうが重宝されるため、わざわざドイツで時間と費用を投じて大学や大学院に行くこと自体の選択肢が長期的にはマイナス、ということも大いにあり得ます。

日本にいながらドイツに就職する手法は数多くありますが、手っ取り早いのは当社のような人材紹介会社を介する方法です。デジタルインフラの整った昨今、日本にいながらオンライン等でドイツの企業と面接をおこなうことは難しくありません。