ドイツで法人を立ち上げ、誰もが頭を抱える内容、それが「人材採用」。駐在員を連れてくるべきか、現地の日本人を雇うべきか、はたまたドイツ人か、雇うとしたらいくらくらいかかるのか・・。こうした悩みは海外人材採用に携わる方なら誰でも経験があることでしょう。昨今ではドイツ国内にも多様な国籍の人材が就業しており、一概に「ドイツ人」と言ってもさまざまで、またドイツ現地法人が欧州のHQとして機能する場合も多いことから、状況は複雑化していると言えます。
本稿では、企業の規模や形態、職種に応じてどういったタイプの採用が望ましいのかについて、ドイツ5拠点で人材紹介業を営む当社の見解を基に解説いたします。
日本人vsドイツ人 職種別適正シート
結論からいうと、どの国籍の社員を雇うべきかという判断は企業の規模や目的、そして職種によって大きく異なります。

一般的に、駐在員は本社や日本の文化との距離が近く、現地マーケットへの理解が遠い立ち位置です。逆に、現地採用のドイツ人は現地マーケットへの理解が高く、日本本社の文化や商習慣を理解しづらい傾向にあります。そして、現地採用日本人はその中間に位置します。
| 職種 | 駐在員 | 現地採用日本人 | 現地採用ドイツ人 |
|---|---|---|---|
| 現地法人社長 | ●●● 立ち上げ期 |
●●● | ●●● 成熟期に移行 |
| 法人営業 | ●●● | ●●● 日系顧客向け |
●●● ドイツ企業向け |
| 営業アシスタント | ●●● | ●●● 小規模オフィス |
●●● 分業後 |
| 総務 | ●●● | ●●● 小規模オフィス |
●●● 分業後 |
| 経理 | ●●● | ●●● | ●●● |
●●● 中心的に採用 ●●● 一定の採用あり ●●● 限定的
多くの研究が示す通り、立ち上げ当初の現地法人の文化は社長の性格が色濃く反映されます。そのためM&AやJoint Ventureなどの例を除いて、一から現地法人を立ち上げる場合、マネージャーや管理職には本社の人間がつくことが一般的です。
もっとも、これが常習化してしまうと現地採用の日本人、ドイツ人の中で「いつまでたっても自分は現地のトップになれない」という空気感が醸成されてしまうため、将来的な拡大を望む場合、現地法人が成熟化してきたら現地採用をトップや管理職に据えていく戦略が推奨されます。
ドイツ企業への新規開拓が中心であれば、第一候補は現地採用のドイツ人です。自然なドイツ語で交渉できるだけでなく、業界内の人脈や相場観を理解している可能性が高いです。単にドイツ人営業というだけでなく、同業種からの採用が望ましくあります。
一方、在独日系企業が主要顧客である場合は話が異なります。この場合は、現地に居住する日本人の採用が有力です。本社や日系顧客の温度感を理解しつつ、ドイツのマーケットや担当者レベルでの対応ができます。
また現地法人立ち上げ当初の場合、営業担当者が見積書の作成、受発注、本社への確認、納期調整まで兼務することが少なくありません。こうした場合では、本社とのコミュニケーションを重視し、同じく現地採用日本人の需要が高くなる傾向にあります。
立ち上げ当初の現地法人では、見積書の作成や受発注だけでなく、本社との折衝、人事・総務の一部業務などを兼任的に担うことがあります。このような環境では、日本語とドイツ語を使いながら複数の関係者をつなげる現地採用日本人が有力です。
一方、従業員が増えて受発注、物流、経理などが分業されている会社では、営業アシスタントの仕事は現地営業チームとドイツ人顧客への支援が中心になります。この場合は、上記のような現地採用日本人か、顧客対応の比重が多い場合には現地の受発注プロセスに慣れた現地採用ドイツ人かが適しています。
総務も上記の職種同様、小規模法人と中規模以上の法人で適任が変わりやすい職種です。
小規模なオフィスでは、総務担当者がオフィス管理、出張手配、駐在員支援、簡単な人事・経理、まで横断的に兼任することがあります。そのため、日独双方の事情を理解し、柔軟に幅広い業務を担うことのできる現地採用日本人か、日本語に堪能なドイツ人のアサインが推奨されます。特に、日本人社長や複数の駐在員を支援する必要がある会社では、社長秘書のようなな役割を果たすので、日本文化の理解は重要です。
ただし、ドイツの行政機関、保険会社、ビル管理会社といった現地のお役所・業者とのやり取りが予想される場合、日本文化よりもドイツ語・ドイツ人との折衝能力の優先度合いが高まります。
経理は、国籍よりもドイツの会計・税務実務経験を優先する必要のある職種です。
ドイツ法人の日常経理では、ドイツ商法に基づく会計処理や付加価値税、給与関連の仕訳、そして税理士との連携が必要になります。そのため、ドイツで経理経験を持つ人材が最有力候補となるでしょう。
もっとも現地法人の場合、ドイツ国内での税務処理に加えて日本本社の経理との折衝なども必要になるため、単にドイツの経理に詳しいというだけでなく、日本側との意思疎通能力も求められることとなります。
日本人とドイツ人、結局どちらを雇うのが良いのか?
もっとも、上記のような職種の分類だけでは、日本人とドイツ人、どちらを採用したらよいのかといった単純化はできません。理想はあれども現実として、給与水準、ロケーション、企業の知名度や役割なども現地採用ドイツ人、現地採用日本人にとっては重要なファクターになってくるため、必ずしも狙いどおりの候補者を採用できるとは限りません。
昨今の長引く不景気を受けて、2026年のドイツの失業率は6~7%前後で高止まりを続けていますが、同時に企業側の採用難も続いている状況です(全体の3割強の企業が欠員を補充できていない)。その背景には、不景気によってドイツ人の転職意欲が低下し、リスクを取らず今の職場にとどまりたい意向が増えていることが挙げられます。
こうした「就業難」と「人材不足」の奇妙なパラドックスは今後もドイツの産業界を苦しめると予想されており、こうした中で企業は、給料面だけではなく働き甲斐やキャリアアップ、福利厚生(社有車の私的利用など)、といった自社の強みを活かした採用戦略が求められるようになっています。
当社Career Managementはドイツで25年以上の人材紹介業を営んでおり、5拠点の強みを活かして各地域・業界に通じた採用パイプラインを確保しています。

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