ドイツが日本のGDPを上回ったことは昨今でも大きな話題となりました。人口8000万人弱のドイツが人口1億2000万人弱の日本人よりも大きなGDPを上げていることは、ドイツ人の生産性の高さを物語っています。実際、ドイツの一時間当たりの生産性は世界でもトップクラスで、アメリカを上回る効率の良さを見せています。

ドイツ企業のこの効率の良さ、果たしてどのような企業特性から来ているのでしょうか?ドイツ社会の高い生産性の秘訣ともいえる、日本人が驚くドイツ企業の特徴を12つ紹介します。

即戦力主義

日本の新卒(ポテンシャル採用)と異なり、ドイツ企業の採用戦略は「即戦力採用」です。勿論、新卒であれば仕事経験が少ないのは人事側も織り込み済みなので、ポテンシャルを全く考慮しないわけではありませんが、それでも「大学の研究内容」や「インターンシップの実績」など、実際の仕事でどれほど早く使い物になるのか、といった点を考慮しやすいと言えるでしょう。

新卒採用時に評価されるポイント

日本ドイツ
ポテンシャル即戦力
部活やアルバイトなど含め、その人となりが分かる実績仕事に直結する学問上の実績や、インターンシップ

結果主義

ドイツ社会全般に当てはまることですが、プロセス(どう頑張ったか)よりも結果(何を残したか)が評価される傾向にあります。そのため、日本のように残業や同僚との飲み会といったソフト面で評価される部分は少なく、良くも悪くも「結果さえ残してくれたら」その手段は問わない、といった性向を持ちます。

厳格なヒエラルキー

ドイツ組織には厳格なヒエラルキーが存在します。日本企業の場合、社内の全体会議などで今後の方針などを打ち合わせる機会などが多いですが、ドイツでは度々上意下達形式で上層部の決定が下に降りてきて、社員はそれに従うだけ、といった場面が多々見受けられます。

意思決定のスピードが速く方針がぶれないという面では効率的ですが、組織の下部に属する人間の意向をたびたび無視することになるため、離職やストライキに繋がることがあります。

契約書主義

社外、社内問わずドイツの企業文化は徹底した「契約書主義」です。口約束は法的効力を持たず、文書化された内容のみが証拠として見なされます。代表的なところでは、採用時の「雇用契約」でしょう。「雇用形態」「給与」「有給」「昇給」などの条件が事細かに定められており、後から文句を言おうとしても「契約書に書かれてあることが全て」と見なされて取りつく島もありません。

こうした採用時・入社時のトラブルを未然に防ぐには、契約書の読み方などのサポートができる人材紹介会社の利用、などが有効な手段として挙げられます。

時間効率主義

ドイツ企業は原価や売上以上に、その活動(プロジェクト)に投じられた時間や人的リソースを気にします。この徹底した「時間効率主義」的な考えは、ドイツ経済の異常なまでの生産性の高さに通じているでしょう。

時間効率を最適化するために、ドイツ企業は度々細かい点に目をつぶります。例えば、ドイツ企業とビジネスをしていて、細かい仕様変更やパッケージのレイアウトを依頼しても聞いてもらえないような経験がある方は少なくないかもしれません。大抵そういった場合、ドイツ企業にとって「時間をかけるほどのことでもない」と見なされている可能性が高く、その時間を投じた際のリターンの大きさなどで説得する必要があります。

エコ主義

世界の中でもトップクラスに環境やエコ意識の高い国として知られるドイツでは、企業の方針だけでなく、人々の行動様式もそのエコ意識に支えられていることが多いと言えます。企業の中には、自家用車ではなく公共交通機関や自転車での通勤を推奨しているところもあるほど。

新製品開発の会議などでも、特に市場にとって「エコ」と見なされるかどうかが法的・マーケティング的な観点から熱心に論じられることが多く、結果としてエコを中心とした製品開発に強い土壌が備わっています。

節約にとてもシビア

大雑把な部分が目立つドイツ企業ですが、「お金」に関しては細かい目線を向けがちです。備品、カタログの発注、コピー用紙、出張費からトイレや会議室の照明まで、上記の「エコ主義」と相まって「そんなに無駄遣いするな」という態度を露骨に示します。

私生活優先

クリスマス、イースター、夏休み・・ドイツで働いたり、ドイツ人と仕事をしていると、突然プロジェクトのキーパーソンが数週間単位で休暇に出てしまったりして困惑した経験があるかもしれません。日本の常識とは異なり、ドイツ人にとって「私生活」は仕事とは完全に切り離された別世界であり、重要なプロジェクトであろうと緊急のトラブル対応でも、知らぬ顔を通されることがあります。

(C) Flicker Berthild Kurz

周りの目線を気にしない

目的達成のためにはあまり周りの目を気にしないのがドイツ企業の特徴と言えます。例えば日本人であれば躊躇してしまいそうなセンシティブな内容も、ドイツ企業は情報収集の一環として強気にパートナー企業へ質問をします(実際に答えてもらえるかどうかは別として、聞くだけは無料なので)。

この周りの目を気にしないスタンスは営業でも通じるものがあり、ダメだと分かっていても物おじせずに連絡をする、とりあえず交渉してみる、という姿勢を崩しません。

謝らない

ドイツで仕事をする日本人の多くが口にするドイツ人との仕事の難しさですが、基本的にドイツ人は「謝らない」という行動様式を持ちます。性格的なモノとも、「一度謝ってしまうと自分の非を認めたことになるから」という側面からとも言われています。

褒めない

上職につく人間は、あまり部下を褒めることをしません。上職からすると「仕事をすること」「成果を出すこと」は当たり前のことであり、褒めるに値しない、という考え方を多く持っています。

もっとも、褒めない=評価していない、というわけではなく、わざわざ褒める必要は無いが実力としては評価している、というパターンは多々見受けられます。あまりに上司の自分に対する風当たりが悪いので退職を申し出たところ、いなくなったら困ると必死に引き留められた、といった話はよく聞かれます。

メールを返さない

最後に、几帳面な日本人には理解ができない文化ですが、ドイツ人は都合の悪い内容に対してメールを返信しません。上述の通り契約書主義のドイツにあってはメールなどで「証拠」が残ってしまうとマズいので、基本的に証拠の残らない通話などを好む傾向にあります。そのため、ドイツ人との仕事で全くメールが返ってこないと思ったら、電話などを用いるとあっさりと返事が来たりすることがあります。