ドイツ就職、あるいは大学留学や語学留学を目指すに際し、会社や大学のロケーションと同時に、その都市がどのような特色を持つのかも一つの重要なファクターになることでしょう。
今回は、ドイツの都市の中でも日本領事館が存在するドイツの大都市を5つピックアップし、それぞれのおすすめポイントについて解説をおこなっていきます。
デュッセルドルフ
仕事の探しやすさ
★★★★★
家賃の安さ
★★★
交通・アクセス
★★★★★
日本関係
★★★★★
人口60万人、日本でいうと鹿児島市や埼玉の川口市くらいの中規模人口を抱える、NRW州の中核都市デュッセルドルフは、欧州随一の日本コミュニティを抱え「リトル・トーキョー」とも呼ばれています。また、都市単体の人口こそドイツの中でも7位とそこまで大きく見えませんが、いわゆる「NRW経済圏」全体はドイツの中でも一位の人口、2000万人を抱えます。
仕事の探しやすさ:
歴史的に「日系企業のお膝元」であることから、日本人にとって欧州内でも仕事の見つけやすさは群を抜いており、職探しとなると応募・面接までの流れが最もスムーズに終始します。
家賃:
家賃水準は㎡あたり13~14€前後で、いわゆるドイツの中では中レベルの家賃水準になります。ただし、デュッセルドルフも市内から郊外までエリアが広がっており、市電や地下鉄で少し郊外に出れば、安いアパートなども見つけることが可能です。
アクセス:
電車で30分~1時間圏内に、人口100万人の大都市ケルン、西ドイツの首都であったボン、工業都市エッセンやドルトムントが位置しており、その他都市へのアクセスという面ではドイツで最も恵まれた立地にあります。
デュッセルドルフ空港は、年間2000万人以上が利用するドイツでも3番目に大きい国際空港で、日本への直行便の他に(2021年10月現在、コロナ禍の影響で休航中)、ロンドン、ウィーン、ニューヨーク、シンガポールなど、欧州内外の主要大都市へのアクセスが望めます。
また、欧州小規模都市への短距離便や格安航空便も隣接都市のドルトムントやケルンから発着しており、小回りの利く仕様です。
日本関係:
上述の通り、欧州随一の日本コミュニティを抱えることから、日本関連のコミュニティ、イベント、食料品店、日本料理屋、言語パートーナー探しなどには事欠きません。市内には、日本語の通じる幼稚園や内科、美容院なども備わっており、家族連れでのドイツ滞在時にも不自由することがないでしょう。
2019年現在、デュッセルドルフに居を構える日本人の数は5,000~6,000人程度とされ、日系企業駐在員の他、ワーキングホリデー、留学生、現地採用で働く人など、多種多様な日本人グループ色を見せています。市内の各所には日本ゆかりの建築物やレストランが立ち並び、「日本式庭園」「日本式スパ」など、その他欧州の都市ではあまり見られないようなものも散見できます。
出典:[ドイツ随一の日本人街] デュッセルドルフの仕事生活ってどんなもの?
フランクフルト
仕事の探しやすさ
★★★★
家賃の安さ
★★
交通・アクセス
★★★★★
日本関係
★★★
人口約80万人を抱え、ドイツではベスト5の大きさに入る大規模都市の一つです。ドイツで一番大きな都市というわけではないにも関わらず、ドイツ金融の中心地であると同時に、立地的にドイツ最大の空港を備える随一の国際都市で、ドイツの数ある都市の中でも独特の存在感を放っています。
仕事の探しやすさ:
フランクフルトにも多くの日系企業が進出しており、デュッセルドルフほどではありませんが、日本人にとっての仕事の探しやすさは「探しやすい」類に属すでしょう。
家賃:
残念ながら、フランクフルトの家賃相場は㎡辺り15~16€と、ミュンヘンに次いでドイツ2位、東京都の平均家賃相場並みの水準です。そのため他都市に比べ、家賃に支払う出費は10~20%程度高くなることを覚悟しなくてはいけません。
アクセス:
フランクフルト空港はドイツ最大の空港で、デュッセルドルフ空港の約3倍、7,000万人が年間に利用します。コロナ禍の影響でデュッセルドルフ-日本の直行便が休航した際も、フランクフルト-日本便は休まず運営を続けました。
デュッセルドルフのように、近隣にまとまった中規模~大規模都市圏が隣接しているわけではありませんが、デュッセルドルフとミュンヘンの中間地点、西ドイツのへそと言えるような絶妙な立地にあり、その他ニュルンベルクやシュトゥットガルトといった大都市への電車でのアクセスも容易です。
日本関係:
デュッセルドルフほどではありませんが、フランクフルトも日本関係者の居住が多く、コミュニティ、言語パートナー探し、日本食レストランなどには不自由することがありません。また国際都市であることから、日本文化に興味を持つドイツ人も少なくなく、他都市と比較して友好的な特徴を持っています。
ただ、ドイツの大都市の中では犯罪発生率1位という不名誉な数値を持っており、特に空き巣や詐欺などの軽犯罪に対する注意が必要です。
ハンブルグ
仕事の探しやすさ
★★★
家賃の安さ
★★★
交通・アクセス
★★★
日本関係
★★★
人口180万人、ドイツで第2位の人口を誇る大型都市圏です。人口の6人に1人は外国人というドイツでも有数の国際都市で、それゆえに国際色豊かな企業やレストランを期待することができます。
仕事の探しやすさ:
日本人の仕事の探しやすさという面でいうと、デュッセルドルフやフランクフルトほど日系企業の進出がなく、やや難しい部類に属します。ただ上述のとおり様々なバックグラウンドを持つ多国籍企業が進出しているため、英語とドイツ語に自信がある場合、アメリカ企業、ドイツ企業などへの就職も期待できます。
家賃:
大都市にしては、比較的リーズナブルな家賃水準を保っています。㎡辺りの相場は13~14€程度で、デュッセルドルフとほぼ同等水準、東京でいうと国分寺や調布市といった、23区外の家賃水準となります。
アクセス:
ハンブルグ自体が一つの独立した経済圏として成り立っているため、その他大都市へのアクセスはそこまで便利ではありません。ちょうど西ドイツと東ドイツの間に位置するロケーションのため、ベルリンに行くにもデュッセルドルフに行くにも電車で2時間~3時間程度を要します。
ハンブルグ空港は年間利用者1700万人を数える、ドイツで5番目に大きい空港です。デュッセルドルフやフランクフルトと違って日本への直行便がないため、日本に行く際はデュッセルドルフやフランクフルトへ移動しなければいけないのがネックでしょう。
日本関係:
上述の通り、人口の6分の1が外国人、3分の1が「移民的背景を持つ住民(つまり、親や祖父母が移民)」という特色を持つ国際都市のため、日本人であっても負い目なく生活することが可能です。
デュッセルドルフなどと比べると、目立った日本コミュニティやイベントは乏しいですが、それでも日本映画祭など、日本人が参加できるような場所・コミュニティは定期的に開催されます。
港町として発展し、2015年にユネスコ世界遺産に登録されたレンガ造りの倉庫街が運河を彩るハンブルク。ドイツのなかでは独特の、海からつながる大きな河に向かって開けた水辺の街です。日本人にとってはありがたい魚市「フィッシュマルクト(魚を中心に生鮮品店が並ぶマーケット)」が開かれたり、ブラームスやメンデルスゾーンといった著名な音楽家を輩出しており、音楽文化が栄えているという特徴もあります。
出典:【ドイツ最大の港】ハンブルクの日本人の仕事と私生活について
ミュンヘン
仕事の探しやすさ
★★★
家賃の安さ
★
交通・アクセス
★★★
日本関係
★★★
人口140万人と、ベルリン、ハンブルグに次いでドイツで第三位の人口を抱える都市圏です。ドイツの中でも「Bayern」という「最もドイツらしい」文化圏を言われており、我々が思い浮かべるようなオクトーバーフェストやドイツの民族衣装などはミュンヘン発祥であることが少なくありません。
仕事の探しやすさ:
デュッセルドルフ、フランクフルトに次いでミュンヘンにも日系企業が多く進出しています。また、ドイツ第三位の人口を抱える大型都市であることから、仕事の選択肢は少なくなく、ドイツの数ある都市の中でも比較的「見つけやすい」ほうに分類されます。ただし、ミュンヘンは「Bayern訛」のドイツ語を話すドイツ人が多く、ドイツ語を必要とするコミュニケーションには難儀することがあるかもしれません。
家賃:
ミュンヘンの家賃相場はドイツで最も高く、㎡辺り18~19€、東京でいうと世田谷区や杉並区レベルの家賃水準です。大都市ゆえに受け皿自体はたくさんありますが、月に700~1000€程度の家賃を覚悟しなくてはいけません。
アクセス:
ドイツで最南端に近いロケーションであることから、他の大都市圏とはやや隔絶した形になります。距離的には、ベルリンやデュッセルドルフへ行くよりもチューリッヒやウィーン、プラハへのアクセスが近く、どちらかというとドイツ外方面へのアクセスが容易です。
ミュンヘン空港は年間5000万人近い乗客が利用するドイツで2番目に大きい空港で、日本への直行便も運航されています(2021年現在、コロナ禍の影響で休航中)。その他、欧州内外の主要都市への便も運航されており、ドイツの中でも利便性の高い都市の一つでしょう。
日本関係:
ミュンヘン大学は日本学の学部を設けており、それなりに「親日的」なドイツ人も居住する都市の一つです。デュッセルドルフほどではないにしろ、日本レストランや食材店も軒を連ねており、他の小規模都市と比べると日本関連のコミュニティを見つけやすい環境にあります。
ベルリン
仕事の探しやすさ
★★
家賃の安さ
★★★
交通・アクセス
★★
日本関係
★★★
人口350万人を抱える、ドイツの首都です。冷戦時代にはこのベルリンが西と東に分かれており、ベルリンの壁による悲劇でも有名です。各国の大使館が軒を連ねる政治の中枢であると同時に、人口の5分の1が外国人であるという最大規模の国際都市です。
昨今では人口の10人に1人が無職で、格差問題、移民問題などに緒を発する差別や犯罪の増加が社会問題となっています。
仕事の探しやすさ:
首都であるにも関わらず、実はベルリンに進出している日系企業はそこまで多くはありません。日本やアジアと関係のある企業、産業は西ドイツに集中していることから、ベルリンで日本人が仕事を見つけるのは他の主要都市に比べるとやや難しいと言えるでしょう。
家賃:
ベルリンの家賃相場は、首都であるにも関わらず上述のミュンヘンやフランクフルトよりも安く、14~15€程度です。ただしベルリンは広く、中心部であれば当然値段は高く、やや郊外のアパートを選択する住民が少なくありません。
アクセス:
ドイツの首都であるベルリンですが、アクセスはそこまで良いものとは言えません。まず街自体が大きく、市内から中央駅、バスターミナル、空港など主要交通機関へのアクセスが容易ではありません。
首都にも関わらず、ベルリン空港の規模はドイツ4位で、日本への直行便もありません。そのため日本へ行く際には、フランクフルト等へ移動してからの空港利用となります。
日本関係:
ベルリンの2大学が日本学の学部を設けている関係もあり、日本に関する興味は少なくありません。国際都市という背景もあり、日本関連のコミュニティやイベントも少なくありませんが、やはりデュッセルドルフと比較すると見劣りする形です。
また犯罪発生率はドイツ大都市の中でフランクフルトに次ぐ2位と、治安は良いほうではなく、特にネオナチ問題なども散発することから、日本人は注意が必要です。
参考文献: